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通報者の注意深さは称賛に値する

[要旨]

かつて、英国で、犬の散歩をしていた人が人骨を発見し、警察に通報したそうです。それに応じて、警察は、専門家や探知犬を派遣して捜索をしたそうですが、結果は、その人骨と思われたものは、実際はじゃがいもだったそうです。これに対して、警察官は、「通報者の注意深さは称賛に値し、遺体と見られるものを発見した人は通報して欲しい」と述べ、通報者への気遣いを見せました。このように、不正確であっても報告することを最大に評価するという姿勢は、事業活動に大切です。

[本文]

日本航空の元客室乗務員で、人材育成コンサルタントの七條千恵美さんのご著書、「気がきく人が大事にしている、ちょっとしたこと」を拝読しました。同書で、七條さんは、ほうれん草の大切さについて、海外の警察犬のエピソードを引き合いに出して説明しておられます。

「海外での話です。犬の散歩をしていた人が、ぬかるんだ土地で、人骨のようなものを見つけて通報したそうです。すると、専門家や探知犬が派遣されて、大捜索に。ところが、人の足の骨に見えたものは、なんと、じゃがいもだったのです……。さて、あなたは、自分がこのような事態を招いてしまったとき、どのような気持ちになりますか?(中略)あわてんぼうの自分を恥ずかしく思ったり、お騒がせしたことに対して、申し訳ない気持ちで逃げ出したくなったりするのではないでしょうか?私が、このエピソードを、ぜひ、紹介したいと思ったのは、警察の報道官のコメントに心を打たれたからでした。

『通報者の注意深さは称賛に値する。遺体と見られるものを発見した人は通報して欲しい。それが野菜だと判明した場合には、うちの警察犬たちが、ご褒美をもらえたと感謝するでしょう』通報した人の居たたまれない気持ちに寄り添い、そして、これから通報を迷う人が出ないようにと考えられた、警察官として、愛情とユーモアのあるすばらしいコメントだと思いませんか?もし、あなたの職場で報連相がスムーズに行われていないのであれば、報告者側の行動を見直すとともに、報告を受ける側の姿勢やコミュニケーションのとり方を工夫すると、改善のスピードが上がるかもしれません」(163ページ)

中小企業経営者の方の多くは、部下からの報告がないと感じていると思います。その原因は、従業員の方にあることもあると思いますが、経営者の方からの働きかけでも、大きく改善すると、私は考えています。そのひとつは、上司からも積極的な報告をすることです。すなわち、率先垂範なのですが、報告は部下が上司に行うものなので、上司が部下に行うものではないと考えている方も少なくないようです。このような考え方が100%間違っているとは言えませんが、中小企業の場合、部下たちを育成する役割を上司は担っていると考えれば、上司が率先垂範することが妥当と思います。

そして、ふたつめは、七條さんのご指摘するように、「報告をすること」そのものを最大限に評価することです。これについては、頭で考えているよりも、実践は難しいようです。報告を受けた経営者も、感情を持つ人間なので、報告が不正確だったり、内容が会社や経営者にとってネガティブなものであったりすると、その報告を受けた経営者は、不満を口に出さなくても、不機嫌な表情を出したりしてしまうこともあるでしょう。そのようなことがあると、部下たちは、次からは、報告することを躊躇するようになってしまいかねません。

すなわち、不確かな情報であれば、正確な情報がつかめるまで報告しなかったり、内容がネガティブな情報であれば、報告を行わなかったりということが起きてしまうかもしれません。そして、そのような状態が続けば、経営者は裸の王様になってしまい、経営者自身が不幸な状態に陥ってしまいます。とはいえ、この点については、多くの経営者の方は、私が指摘するまでもなく、ご理解しておられると思います。したがって、経営者の方たちには、前述の警察官の事例を常に念頭に置いて頂き、「報告すること」を最大限に評価するということを実践していっていただきたいと、私は考えています。

2023/6/22 No.2381

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