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モノを売るのではなくコトを売る

[要旨]

松江市にある島根電工の社長を務める荒木恭司さんは、スカンジナビア航空が、運輸業からサービス業にドメインチェンジを行なった事例を参考に、自社もドメインチェンジを行う必要があると考えたそうです。これにより、設備工事の需要がなくなっても、快適な環境を提供するサービス業として生き残りができると考えているそうです。

[本文]

島根県松江市にある電気設備工事業の島根電工の社長を務める、荒木恭司さんのご著書、「『不思議な会社』に不思議なんてない」を拝読しました。荒木さんは、かつて、出雲営業所長をお務めのとき、営業所の立て直しに取り組んでいたそうです。その頃、荒木さんは、スカンジナビア航空の社長だったヤン・カールソンの著書、「真実の瞬間」を読み、顧客に対して感動的なサービスを提供することで、倒産寸前だった同社が業績を回復させたということを学んだそうです。「スカンジナビア航空では、こんなエピソードがあるそうです。あるお客さまが、空港のカウンターで、航空券をホテルに置き忘れたことに気づきました。

慌てるお客さまに、スカンジナビア航空のカウンターの社員は、にっこり微笑んで、『大丈夫です、私どもで手配します』と答えると、仮の航空券をその場で発行。すぐさまホテルに電話して、部屋に置き忘れた航空券があることを確認すると、社員をホテルに向かわせました。そして、乗客が飛び立つ前に、航空券は、無事、本人の手元に届いたというのです。その乗客が、以降、飛行機に乗る時は、迷うことなくスカンジナビア航空を指定するようになったのは言うまでもありません。スカンジナビア航空は、運輸業からサービス業に大きく転換したことで、他社との差別化に成功。

顧客の圧倒的な支持を得て、業績をV字回復させたのでした。翻って、私は自分たちの事業について考えてみました。お客さまが設備工事を頼むのは、快適な環境を求めているからです。私たちが存在する意味は、快適な環境をつくること。つまり、私たちが何のための会社なのかというと、顧客に快適な環境を提供するサービス業なのです。ですから、ただ、図面通り配管すればいい、建築屋さんに言われた通り電気を通せばいい、のではありません。

そこで働いたり、生活する人が、『ここにコンセントがあって便利になった』、『この部屋にエアコンを入れて、能率があがるようになった』と喜んでくれるような快適な環境を提供するのが私たちの仕事です。(中略)これはもう、モノを売るのではなく、コトを売る。快適な環境を提供するサービス業しかありません。たとえ、設備工事がなくなっても、快適な環境を提供するサービス業は残ります。私たちはサービス業をめざすのです。そこに島根電工グループのような、われわれ設備業者が生き残る道が見えてきます」(18ページ)

スカンジナビア航空は、運輸業ではなく、サービス業というドメインチェンジ(事業領域の変更)をした結果、業績を回復しました。そして、荒木さんが、「たとえ、設備工事がなくなっても、快適な環境を提供するサービス業は残る」と述べておられるように、ドメインチェンジによって、事業は継続できるようになります。

しかし、逆に、航空会社が運輸業のままであったり、設備工事業のままであったりすれば、需要がなくなるか、過当競争に晒されて、業績が悪化するでしょう。もちろん、ドメインチェンジを行うには、体制変更や、従業員の教育訓練も必要になりますが、それがきれば競争力を高めることができます。したがって、現在、自社の業績を改善したいと考えいる経営者の方は、自社の経営環境を分析し、ドメインチェンジを行うことをお薦めします。

2024/2/27 No.2631

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