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【横尾さんの写実】ワーイ!★Y字路 横尾忠則現代美術館

横尾忠則氏の暗夜光路、Y字路シリーズが大好きである。

2001年頃、リアルタイムで横尾さん新作として「原美術館・暗夜光路 展」で見て以来、この絵画にグッと惹きこまれた。


原美術館での貴重な展示作業風景がweb上に残っている↓


ちょうどその頃通っていた学校にも特別客員教授として講演しに来てくれたり(後述)、バリバリ現役画家として筆を走らせていた頃だろう。
そこから20年以上経っても、やっぱりバリバリ現役画家で、2023年秋、東博の表慶館で新作のみの展覧会が行われた横尾忠則さん。

創作へのエネルギーが凄い。

暗夜光路 20周年

今回はY字路シリーズ20周年ということで特集展示を神戸・横尾忠則現代美術館で開催するという。
先に姫路へ行っていたので帰りがけに神戸に寄れるでは無いか!と途中下車。以下、概要。

2000年、故郷の西脇で、横尾忠則は夜の三叉路をストロボ撮影しました。すると見慣れたはずの景色が、全く異なる風景となって立ち現れたのです。この写真からインスピレーションを得た横尾は「Y字路」シリーズに着手、それらはやがて彼にとって重要なライフワークとなっていきます。内省的な光と闇の世界は、祝祭的な色彩の爆発を経て、さらに変幻自在なバリエーションを生み出しつつ今日に至っています。

2015年、当館では2006〜2015年の作品による「横尾忠則 続・Y字路」を開催しました。本展はいわばそれを補完するもので、シリーズの原点である初期作品(2000〜2005年)、および新近作(2016年〜)により、多彩な「Y字路」シリーズの魅力に迫ります。

※本展は、本来はシリーズ誕生20周年を記念し、2020年度に開催される予定でしたが、コロナ禍により延期されていたものです

横尾忠則現代美術館

灘駅から山方面へけっこうきつい坂を登ったところにある横尾忠則現代美術館。
途中、同じ場所へ向かうおばあちゃんに道を訪ねられた。「この先真っ直ぐですぐ右みたいですけども、私も同じ場所へ行くので」と伝えたら「ほな、あんたの後ろ姿見て曲がり角確認するわー、おじいちゃんついてこんからー」と。ふと見ると数メートル後ろに「こっちであっとんのか?」と悪態をついてるおじいちゃんがいた。
ちょっと笑ってしまったが、後ろから見られてたんだろうか。ちょっと緊張しながらその先の道を歩いた。

到着
こちらは4階


館内は4階から降りながら見学する。メインの企画展の他に横尾さんの所持するコレクション作品も作家が豪華で驚いた。
そしてメインのY字路展へ。
20年ほど前の原美術館での話もちゃんと記してあり、感無量。

23年前か…
横尾さんはよく、模写をする。
ルソーの模写も見た事があったな。



なぜ、自分がこのシリーズにここまで惹かれるのかというと、やはり「路上」の絵だからだと思う。
シリーズ初期は本当になんでもない路上の風景の絵画であり写実絵画なのだ。(後に発展していって横尾さんらしさが増えていくが)

「写実表現」と言われてハッとした。横尾さんと写実って遠い関係だと思っていたから。


路上観察の一端、考現学的な要素に惹かれるのだ、とこの展覧会を観ていて気がついた。

ある人にとってはどうでもよい風景が
ある人にとっては特別な風景になる

なんでもない、風景。

この写真的な表現に惹かれた。

雨の夜道の良さ


水を含む風景に惹かれる、というのはあるのかも知れない。
横尾さんの絵も濡れた地面の表現が素晴らしい。実際の雨の夜はお呼びでないけれど、風景としては好きだ。

ぬれた路面の美しさ
静かな絵

数年前、話題になったレッサー・ユリィという画家の作品にも夜の濡れた路面が非常に印象的な絵画があり、絵葉書も売り切れていたな、とそんな事を思いだした雨のY字路。

写実表現から始まったのは、偶然写真に収めたところから着想が始まったからなのかもしれない。フラッシュを焚いて撮影したことにより明暗がパッキリと別れた画像になったそうだ。こういう偶然を見ると、たまにフラッシュ撮影をしても面白そうだな、と思う。昨今、フラッシュ撮影はあまりしないけれど。

いつも岐路に立たされている

「明日はスカート?デニム?どっちを着ようか」
「お昼ご飯は和食か洋食か?」
思えば日常の中でいつもY字路に立たされて、振り回されつつ私の日々は続く。そんな部分も、この絵画に惹かれる要素なのかもしれない。


余談・23年ほど前の夏の話

女子美油絵科?の特別客員教授として横尾忠則さんが講義に来てくれた日の事。特別授業で横尾さんが杉並校舎来る!という話が朝からもちきりで
いーなーー!!聞きたい!見たい!
と騒いでいた。ダメ元でK先生とかO先生に「聴講したい!忍び込んでもいいか?」と交渉したら「うーん課題終わってるならいっか。ただし目立たないようにね」と念を推されて今は無き階段講堂で油絵科の生徒に紛れ込んだ。
そして最前列を陣取った。
それまでメディアで見た眼光鋭い、過激な雰囲気とは違って「ここに居るの全員女子になるのか〜壮観だね〜」とご機嫌で柔かに話すおじちゃんだった。
一通り横尾さんの話が終わって
「何か質問がある人〜」の問いかけに誰も手を上げない…(えーなんで!)と思うか早いか私は「ハイッ!」と手を上げてしまった。(一瞬、先生の「目立たないようにね」の言葉が脳内を過ったがもう止められない)

質問した内容は「60年代の美術界の体験について」やはりその辺の話が聞きたかったのだ。「すごい混沌としたでもエネルギッシュな時代だったよ、皆積極的でね…」と楽しそうに答えてくれた。
その後口火を切ったようにいくつか質問が続きなんだか和やかな雰囲気で横尾さんの講義が終わった。

と、同時に私は講堂から一目散に逃げ出したのである。

他の科の学生だったとは多分バレなかった様子。
あの時、コッソリだけど好奇心の強い学生に聴講許可を出してくれた先生に感謝。そんな優しい先生も今や学長であるから、面白いものだ。

この話を思い出して、はて?最近似たような体験をしたな、と思い返した。
豊嶋康子さんと白井美穂さんに質問した時も、こんな感じだったな。
逃げ出してはいないけれど。
なんか…あまり変わってないのだな、自分は。
まぁいい。
今も昔もその時はやったことに後悔はない。
すすめすすめ。

画面左上の部分
原美術館の床だそうだ。懐かしい。


今はなき品川の原美術館の床、参考写真

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