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【コレクションの心象風景】「MOMATコレクション」「女性と抽象」東京国立近代美術館 所蔵作品展

所蔵作品展「MOMATコレクション」「女性と抽象」
フルコース以上の東京国立近代美術館のコレクション展、展示替えが行われた。
今回は企画展・棟方志功が始まる前にコレクション展が始まったので、それだけを見に。
企画展開始前だし、空いているだろうと思った金曜の夜間開館。結構、人がいた印象である。

ぐっときたもの、3つ、ロバート・スミッソン、「女性と抽象」、東山魁夷特集。

いつも4Fから2Fへ降りてくるように見る順路な訳ですが、勝手知ったる国立近代、本日は2階から行ってみましょう。

2F 比較的現代作品のコーナー

ロバート・スミッソンのランドアートの記録映像が流れていた。
おぉ!これ見たかったやつ!
SPIRAL JETTY。 

スミッソンは次作のロケハン中に事故で亡くなってしまうという事もこの空撮映像を見ると思い起こされる


巨大なランドアートをソルトレークで行ったのは知ってたし、出来上がった状態の航空写真も見たことあったが、その作成途中のカラー映像が音声ありで残っているのは知らなかった。1970年。
ブルトーザーの音、すごい。
やっぱり今の重機って少しは静音になっているのだろうか、などと爆音の中考えていた。

【女性と抽象】

この小特集区画はいつも面白い展示をしている。
数年前は男性彫刻という特集をしていたが今回は女性と抽象。

女性と美術の話になると、女子美の名前が出てくる。
日本で最も古い私立美術大学なので女性と美術史には欠かせないわけだが、卒業生はわりかしアヴァンギャルドというか専攻と別の方向へ行く方も多く。
写真家の山沢栄子も日本画出身だし、三岸節子は日本画の勧めを蹴って洋画へ。
とらわれなさ、を美術教育を通して獲得したのか。

小特集だけどしっかりパンフあります!
資料の読み込みが深い


今回の小特集の冊子もとても良かった。
ぜひ手に取って読んでほしい。

3F 東山魁夷特集

「残照」が素晴らしく、ずーっと眺めてしまった。

水平線みたいな山脈の絵画


山々の風景なのだが飛び抜けて高い山はない風景で淡々とした、良い意味で抑揚のない、メリハリのない静けさを感じる画面。
名もなき山(描かれただけではぱっとわからない山。富士山や浅間山とは逆の存在)の魅力に既視感、というか懐かしさというか。
こういう風景に惹かれるのはなぜなんだろう。
見た時は静かに感動し、しばらくその場を離れられなかった。

今、この文章を描くために改めて「残照」について調べたところこの風景は千葉県の鹿野山から見た九十九谷の絵だという。

冬の九十九谷を見渡す山の上に在って、天地のすべての存在は、無常の中を生きる宿命において強く結ばれていることを、その時、しみじみと感じた。
『風景との対話/新潮社』

東山魁夷記念一般財団法人ホームページより

あーーーー、どうりで。なるほど。そりゃそうよ。
自分が惹かれるわけだ。合点がいってしまった。

というのも、この鹿野山、現在はマザー牧場付近に辺りであり、もう幼少期から私はこの地域には馴染み深いのだ。


わかりみ。この風景が好きなのだ(マザー牧場より)

幼稚園の遠足で訪れたり、家族とのドライブだったり。
大人になってからはほぼ毎年1回は菜の花の時期に訪れている。
千葉特有の風景が好きで、自分の中に染み付いている原風景の一つだ。

関東平野の地図の等高線が黄緑の地域、全国で一番標高の低い県、千葉県。標高400mちょいの山が一番高い山である千葉県。(高尾山は標高599m)

夫が長野県出身者なので、この山の風景の違いの話はとても面白い。
振り向けば八ヶ岳、目の前には浅間山に囲まれた盆地で育った夫は象徴的な山の風景を見て育った人だ。千葉の低い山の連なりの風景を「違うなぁ」と言いながら楽しんでいた姿が印象的だったのだ。

人の心を震わす絵。好きなものを思い起こさせる絵。

いいな、好きだなと思ったものの理由を後から知るというなんともな体験だった。
ちなみに展示のキャプションにはモデルの地域名は出ておらず。「国破れて山河あり」の漢文の一文を引用したキャプションだった。

金曜の夜に

今回も盛りだくさんな東京国立近代美術館の常設展。
改めてコレクションが主役の美術館だなぁ、とヘロヘロな足になってパレスサイドビルで一杯飲んで帰るという金曜日夜間開館だった。

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