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【子も歩けば美術に当る】「歩く、赴く、移動する 1923→2020」 MOTコレクション & 小学生と見る豊嶋康子展 東京都現代美術館


東京都現代美術館のコレクション展示室の入れ替えがあったので早速訪問。

そして先日鑑賞し、すごく満足度の高かった豊嶋康子展を息子二人と見てみたく、誘ったら快諾されたので見に行った。
現代美術は難解なのもあるが身近なもの、考現学に近い作品は楽しめる様子だ。

まずはコレクション展から

今回の概要はこちら。

1階では、「歩く、赴く、移動する 1923→2020」と題し、1923年の関東大震災直後に上京した鹿子木孟郎が被災地を歩き描いたスケッチから、2020年、移動の自由が制限されていたコロナ禍における当館での個展の際に制作されたオラファー・エリアソン作品まで、「歩く/赴く/移動する」をキーワードに多彩な作品で構成します。

東京都現代美術館公式webサイトより

そしてこのコレクション展示室用のパンフレットが毎回大変凝っている。
コレクションしたくなるほどである。いや、既にしている。
しかし紙の出品リストが無いのが若干不満。webにpdfとして載っているそうだが、まぁあちらを取れば、こちらが、になるのでもうそれは仕方ない。
「歩く、赴く、移動する」の3つの観点で気に入ったものをピックアップ。

【歩く】


昨年12月からの展示だったわけだがいきなり鹿子木孟郎のスケッチとは、、なんか元旦に起きた災害のあとに見ると胸がズンと重くなる。
藤牧義夫の隅田川両岸画巻も初めてみた。

見た瞬間、ウワッと声がでた。
長い!

これがびっくりするほど現代的な、イラスト的、建築的、と言おうか山口晃の画のような。墨で描いているが線のシャープさがあり驚いた。

中野 淳 「滅びゆく風景(木場)」
この取り組みも初めてなんじゃないか、と思うのだが、東京都現代美術館の所在地、江東区木場の昔の姿を描いた作品の特集。

中野 淳 「滅びゆく風景(木場)
この、手書きの地図にグッとくるのはなぜか。たまに商店街にある古いお手製のブリキ看板にペンキで描かれた地図もわざわざそっちを見てしまう。


各都市の公立美術館は地元の作家や風景を残した作品を積極的に収集し公開している。しかし冠が「東京都」となっているおかげで所在地の江東区木場の風味がいままで薄かったコレクション郡。
作品番号から推測するとここ10年での収蔵品だろう。
東京都現代美術館は親玉である東京都美術館の収蔵コレクションも引き継いでいるのでその影響もあるかもしれない。
江東区に区立美術館はないので(深川資料館はある)このあたりの収蔵はぜひ進めてほしい。特に木場周辺は東京の東側は西側よりも様々な影響で時代により風景が激変している。絵画で風景を残すのも大事な役割があるのではなかろうか。

光島 貴之  「手ざわりの冒険」
触って確かめることができる作品。では何を確かめるのか?

光島貴之(1954-)は、10歳で失明して全盲となり、触覚と音、匂い、対物知覚などで認識した風景を造形として表現しています。

パンフレット解説より引用

目を閉じて作品に触れてみた。

指で触れると打たれた釘が足跡のような感覚になってきた。同じリズムが刻まれていると安心して指を進めることができるがふとした瞬間にそのリズムが変わる。ちょっと驚いて目を開けると段差になっていたり。

こちらは触ることができる作品
凹凸の魅力


私は今、目で先に情報を得て、予見しながら歩いているが、そうでない人はどう歩くのかどこでリズムが変わることを察知するのか、そんなことを考えながら接触して鑑賞する作品だった。

ワタリドリ計画

細々したものって惹かれる。幼い頃遊んだ小さなままごと道具の様に。

旅は楽しい。純粋にそう思わせてくれる。
別に知らない土地じゃなくてもよい。
普段生活している隣の駅にちょっと降り立つだけでも旅は成立するんじゃないか。そんな気持ちになる。

【移動する】

きた!リチャード・ロング
ついつい惹かれてしまうのは何故だろうか。
なんかこう、ドンと床に直置きなのもちょっとしたおかしみがあるというか。今回はいつもの石ではなく、木の枝だった。

規則的なのか、ランダムなのかわからないけれど決められた範囲に「並べられている」木の枝たち。(撮影禁止作品のため画像はないが、ぜひ足を運んでみて頂きたい)

次男はリチャード・ロング氏の作品が好きで、たまに河原などで遊ぶと石を並べて「リチャード・ロングごっこ」をしていた。
しかし今回の素材は木の枝でとても驚いたそうだ。

そして堪えきれずそばにいた看視員の方に「これはどうやって並べるのか?」と聞きに行っていた。面白い回答を得たのでここに共有する。

・リチャード・ロング作品に詳しい人が日本の美術館のどこかにいてその人の指示を仰ぐ
・並べる実際の作業はクロネコヤマトの人がやっている
・木の枝の位置は全て決まっている
・1mmもズレてはいけない


とのこと。
へーー!面白い!次男サンキュー!私も知りたかった。
(9歳男児の話をもとに記しているので解釈の誤差があることをご承知おき願いたい。)
実を言うと私も以前リチャード・ロング作品はどうやって展示しているのか、看視員の方に尋ねたことがあったがその時は「職が違うのでわからない」という回答だった。そりゃそうよね、と思ったのだが、本日居合わせた方はとても丁寧に説明してくださりありがたかった。感謝である。

唸ってしまう

今回はまた違った顔を見せてくれたMOTコレクション展。2階の横尾さん関連展示も少し様子を変えていたので必見。
柴田敏雄氏の作品のようなウォーホルの写真に会えた。
何度巡ってもコレクション展示室の広さと充実さにホッとする。
会期中、もう一度行きたいものだ。

【子どもと鑑賞する豊嶋康子展2回め】

「豊嶋康子 発生法_天地左右の裏表」展。
会期が始まってすぐ、一度訪問していた。

とにかく面白かったので、今回は子ども(小6、小3)も一緒に行ってきた。
さて、彼女の作品はあまり親が解説しなくても子どもたちが面白がれるかなーと、思って様子を見ていた。

案の定、本人たちはすごく面白かったそうだ。

というか「おもしろアイデア色々大集合」的な視点で見ていた。
まぁそうなるわな。
ジグソーパズルの作品に関しては「こういう遊び方も楽しそう!」とか、
賞状に他者の文字で書かれた自分の名前の不思議さとか。
お煎餅の復元とかはゲラゲラ笑っていた。

クラスのお楽しみ会で何故かくす玉係になった長男は作品にシンパシーを感じたらしい。
(しかし、くす玉係って何だったのか)
自分でも作れる、と豪語していた。
真似するなよ?と牽制しながら見る展示とは。


「視点の転換」を楽しめた様子である。
もちろん社会経験の少なさから理解できない作品もあったが(保険や金融、株取引)見て素直に受け取れる作品はそのまま受け取れた様子だった。

今回も満足度の高い東京都現代美術館

現在の企画展は誰もが知ってる、超メジャーな、というアーティストではないかもしれないけれど、でも豊嶋康子氏を特集してくれて、作品をまとめて見ることができて嬉しかった。

解説片手に、あーなるほど、とクスッとするのも良い時間なのでおすすめだ。

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