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【トランザクティブ・メモリー研究会】第二回「組織内でコラボレーションを生み出すのに必要なことは?」

社内コラボレーションが求められてる背景

近年、企業内でのコラボレーションやオープンイノベーションが頻繁に議論されています。これは、業務の複雑化や多様化ハイブリッドワークの普及、そして働き方の意識変化が影響しています。

効果的なコラボレーションを実現するためには、社員の業務、経験、スキル、そして個性が明確に可視化されることが不可欠です。従来、社員はデジタルツールやサービスを通じて、これらの情報を共有し、コラボレーションの基盤を築いてきました。しかし、リスキリングの必要性の高まりや越境型人材への注目など、時代の変化に伴い、個々の業務内容がより複雑化し、自らを可視化することが困難になっています。

加えて、人と人とのコミュニケーションと相互理解がコラボレーションを生み出す重要な要素です。コロナ以前は、対面でのコミュニケーションが主流でしたが、パンデミックの影響でハイブリッドワークが普及し、働き方が変化しました。これにより、従来のコミュニケーション方法、例えば飲み会やオフィスでの会話などが選択肢として限られるようになり、社員同士の繋がりが希薄化しています。
このような状況を踏まえ、既存の方法ではコラボレーションが生まれにくいという現実があります。したがって、次世代の働き方に合わせた新しいコラボレーション方法の構築が求められています。

そこで、コラボレーションとは何かを整理してみましょう!

コラボレーションとは何か?

コラボレーションは、異なる立場の人々が共同で作業を行うことです。このプロセスでは、異なるスキルセット、経験、視点が組み合わさり、新たな価値が生まれます。

コラボレーションの分類

引き算コラボレーション(工数削減)

「もう一度やらなくていい」:このアプローチでは効率性を重視し、無駄を省き、既存のリソースや知識を活用します。例えば、他部署のマーケティング戦略を学び、それを自部署で応用することなどが含まれます。

足し算コラボレーション(成果の上積み)

「一緒にするともっと良くなる」:メンバーのスキルやアイデアを結集し、単独では達成できない成果を目指します。例えば、ワーケーション事業において家具会社との協力や地域の特性を活かしたプログラムの開発などがこれに該当します。

掛け算コラボレーション(意外性による付加価値)

「予想外の出会いが新しい価値を生む」:異なる専門分野や視点の組み合わせから、新しいアイデアや革新的な解決策が生まれます。例えば、異業種間での新商品開発などがこのタイプに当たります。

コラボレーションを促進するために必要なこと

  • 社員が持つ情報の可視化

  • コミュニケーションの機会の創出

  • 個人の目標と組織の目標の調和

  • 組織内のネットワーキングの促進

コラボレーションは、ただの共同作業以上の意味を持ちます。それは、個々の強みを生かし、集団としての能力を最大限に引き出すプロセスです。


このコラボレーションを紐解くのに、マクロな視点で見てみましょう!

日本における知的活動の集積とその特徴

日本における知的活動の集積

日本の経済活動における一つの顕著な傾向は、知的活動の集積が特定の地域に限定されている点です。一般的な経済活動は人口比率に沿って広がっているように見えるものの、イノベーションに関する活動は、人口の集中している都市部に集中している傾向があります。

この現象から明らかなのは、イノベーション活動において物理的な距離が重要な役割を果たしていることです。すなわち、都市部に住む多くの人々が物理的に近接していることが、アイデアの交換や知識の共有、そして新しい発想の創出に貢献しています。このように、人口密集地域では、イノベーションの機会が増加し、知的活動の集積が生じているのです。

この傾向は、都市部における知的活動の集積が、イノベーションを推進し、経済の成長に大きく寄与していることを示しています。また、地理的な側面を考慮することで、今後のイノベーション戦略の策定において重要な洞察が得られることが期待されます。

長野新幹線開業がもたらしたイノベーション活動の変化

長野新幹線開業前後における長野新幹線沿線事業所の共同研究(コラボレーション)関係

長野新幹線の開業は、沿線地域におけるビジネスの構造に重要な変化をもたらしました。特に注目すべき変化の一つが、事業所間のコラボレーション関係の増加です。新幹線の開通により、物理的な距離が短縮されたことが、この現象の背後にある主要な要因として見られています。

開通前後のデータを比較すると、新幹線沿線の事業所における共同研究やコラボレーションの数が顕著に増加していることが明らかです。これは、新幹線が提供する高速な移動手段が、異なる事業所間の交流を促進し、より密接なコラボレーションを可能にしたためです。

この事例は、物理的な距離がイノベーション活動に与える影響の大きさを示しています。交通インフラの発展が地域間の連携を強化し、新しいビジネス機会の創出に寄与することを示唆しています。長野新幹線のケースは、交通アクセスが地域経済に与える影響を理解する上で貴重な事例と言えるでしょう。

組織内でのコミュニケーション減少、部署間の障壁

部署が違うとコミュニケーションは極端に減少する

組織内部でのコミュニケーションとコラボレーションの機会は、部署間の違いによって大きく影響を受けることが分かります。上記の組織内のネットワーク図を可視化すると、部署間のコミュニケーションが極端に減少していることが明確に示されてます。

この現象は、異なる部署間でのコミュニケーションが不足していることを意味し、結果としてコラボレーションの機会も減少しています。このことから、コラボレーションを生み出す上で物理的な距離だけでなく、専門知識の距離も重要な役割を果たしていることが理解されます。

異なる部署間での専門知識の差異は、互いの理解を妨げ、コミュニケーションの障壁となっています。このような障壁を乗り越えるためには、組織内での積極的な情報共有や相互理解の促進が不可欠です。部署間の壁を越えたコミュニケーションを促進することで、より豊かなコラボレーションの機会が生まれるでしょう。

組織内コラボレーションの障壁としての「距離」

組織内のコラボレーションを成功させるためには、多くの障壁を乗り越える必要があります。その中でも特に重要なのが、「距離」の概念です。ここで言う「距離」とは、単に地理的な距離に限らず、組織間、専門知識、心理的な距離も含まれます。

地理的距離

例えば、東京と大阪のオフィス間でのコミュニケーションは、物理的距離によって困難になりがちです。しかし、現代のテクノロジーにより、この障壁はある程度克服可能です。

組織間の距離

異なる企業や部署間でのコラボレーションは、異なる組織文化やプロセスが障壁となることがあります。これらの違いを理解し、架け橋を築くことが重要です。

専門知識の距離

異なる分野や業務を持つ人々の間でのコラボレーションは、専門知識の差によって難しいことがあります。相互理解と尊重が必要とされます。

心理的距離

信頼や理解の欠如によって生じる距離です。オープンなコミュニケーションと相互の信頼構築が、この距離を縮める鍵となります。

組織内でのコラボレーションは、これらの「距離」をどう管理し、乗り越えるかによって大きく左右されます。各種の「距離」を認識し、それぞれに適した対策を講じることで、より効果的なコラボレーションを実現することが可能です。

組織内の「距離」問題を解決する

社員情報の可視化とコミュニケーションの促進

組織内でのコラボレーションを妨げる「距離」という障壁は、社員情報の可視化と効果的なコミュニケーションの促進によって克服することができます。

社員情報の可視化

社員のスキル、経験、担当業務などの情報を透明にすることで、地理的距離や専門知識の差を超えたコラボレーションが可能になります。たとえば、異なる地域や部署のメンバーが、オンラインプラットフォーム上で互いの専門知識を理解し、プロジェクトに合わせて最適なチームを組むことができます。

コミュニケーションの促進

テクノロジーを活用したコミュニケーションツールは、心理的距離を縮めるのに効果的です。例えば、ビデオ会議やチャットツールを使用することで、異なる地域や部署のメンバー間で気軽に意見交換が行え、アイデアの共有や課題解決に役立ちます。

相互理解の促進

透明な情報共有とオープンなコミュニケーションは、社員間の相互理解を深め、信頼関係を築く上で重要です。これにより、組織内の隠れた才能やリソースを発掘し、より効果的なコラボレーションを生み出すことが可能になります。

まとめ

組織内コラボレーションの成功は、時代の変化に適応し、社員間の「距離」を克服する能力にかかっています。効果的なコラボレーションを生み出すためには、業務の複雑化、ハイブリッドワークの普及、働き方の変化に対応し、社員のスキルや経験を可視化することが重要です。コラボレーションの形態は多様であり、それぞれの形態は異なる価値を生み出します。この過程では、地理的、組織間、専門知識、心理的な「距離」が障壁となることがありますが、これらを克服する鍵は、社員情報の透明化とコミュニケーションの促進にあります。最終的には、これらの戦略が組織を一つにし、共通の目標達成に向けて進む力となります。

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