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老戒在得...「老年には血気が衰えてくるので、戒めるべきは欲得である」

其(そ)の老ゆるに及んでは血氣既に衰う、之を戒むること得るに在り。
(季氏第十六、仮名論語二五三・二五四頁)
「老年には血気が衰えてくるので、戒めるべきは欲得である」

孔子は「道に志して努力する人に、三つの戒めがある」(季氏篇)と言われる。

血気が不安定な青年時代は男女の付き合い、
血気が盛んな壮年時代は争いや闘い、
そして血気が衰える老年時代は欲得をつつしまなければならない、と。

確かに、年を取るにつれて貪欲になるきらいがある。

仏教で謂うところの、人間がもつ五つの欲、
財欲・色欲・飲食(おんじき)欲・名誉欲・睡眠欲「五欲」から免れることはできない。

生きるために持たねばならない五欲ではあるが、
あくまでも少欲知足を説いている。

曹洞宗の経典に、『修証義』というお経がある。
道元禅師の『正法眼蔵』九十五巻の中から、修行と悟りに深く関わる言葉を抜粋して編んだ経典である。

その一節に
「無常(死のこと)たちまちに到るときは、国王大臣親暱(しんじつ)従僕妻子珍宝たすくる無し、ただ独り黄泉(死のこと)に趣くのみなり、己に随い行くはただこれ善悪業等のみなり」
とある。

子ども心に何となく、死は独りで行くものと理解した。

どれほど慈悲深い国王や大臣、
どのように親しい身内や朋友がいても、
いかに愛しい伴侶や子供がいても、
珍しい宝物があろうとも、
死は如何ともしがたい。

代わることも、変えることもできない。
助けることもできない。

死に随い行くのは善悪の業報(ごっぽう)、因果のみである。

先師と言われる碩学も、著名な経営者でも、
晩年にあって錦上さらに薫香の花をそえることは難い。

「老いて戒(いまし)むること得るに在り」
ー老年には血気が衰えてくるので、戒めるべきは欲得であるー


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