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勝手に反省会!6か月目となったWEB連載を本音で振り返ってみる

こんにちは、ロンロ・ボナペティです。

本業では書籍の編集者として働く傍ら、WEBメディア「建設の匠」で月イチ連載を担当させていただくようになって早半年が過ぎました。
趣味で書いていたnoteに興味をもっていただき執筆の依頼があった本連載。
普段の仕事では自ら執筆することはなく、この連載でいえば依頼をしてくださった編集の方側で企画制作にかかわっています。
必然的に、メディアとしてどのようなものを目指しているのか、なぜ僕に依頼していただいたのか、といったところを確認するところから連載のテーマ検討をはじめました。
今回は、企画の方針決定から半年間で5本の記事を公開するまでを、個々の記事の振り返りとともにご紹介していきたいと思います。

執筆依頼と企画会議

「建設の匠」は「すべての建設パーソンを応援するメディア」と銘打ち、建設にかかわるアレコレをコンテンツ化しているメディアです。
さまざまな専門分野をもつライターの方々が、自らが強く惹かれるものの魅力を、広く知ってほしいと熱く語るコラムがラインナップされていました。
日本初のダムライターによる全国のおすすめダムの紹介、「高速道路道」なる、これまで考えたこともないような視点で土木の魅力を伝えるコラムなど、どれも良い意味でアクの強い記事ばかり。
そうしたなかで、建築についての連載は僕がはじめてということでした。

単純に面白い建築を紹介するだけではダメだなぁと思いつつ、まずは編集長と面談。
2018年の12月のことです。
そこで連載の方向性について、具体的な相談ができるかなぁと思いきや、編集長から言われたのは、
「ロンロさんが書きたいように書いてください」
ということでした。

マジかぁ……全部自分で考えなきゃいけないヤツやん、と思いつつ、自分の興味に沿ったものを書いてお金をもらえるのは大変ありがたいなと、ライターの仕事の面白さを感じはじめていました。
この時点で僕からはひとつだけ要望をお伝えしておきました。
それは、個人のブログではできないことをしたい、ということ。
その段階ではまだ具体的に企画のイメージはなかったものの、すでに僕自身がもっている知識のなかから、知識の切り売りをするような記事を書くことは、自分のnoteでやればいい。
そうではなく、メディアの冠があるからこそ可能になるもの、具体的には建築の運営管理者を通しての取材・インタビューや、建築関係の有識者へのインタビューなどができれば良いなぁと考えていました。

驚きだったのが、編集長はもともと建築も建設も専門外だったということ。
どうりで僕のような素人ライターにお話があったのだと腑に落ちました。
僕自身のモットーは、建築の楽しみ方を広めたい、ということ。
元々建築を勉強していたり、仕事にしているような方にとっては僕の書く記事は専門性が低く物足りないだろうなぁと思う一方、建築に詳しくない方に向けて建築について何か書く、という需要のない仕事はプロのライターの主戦場ではありません。
なぜプロのライターではなく僕なのか、といった点に納得がいきました。

さてまずは企画案を考えて提案することとなったわけですが、過去に僕の書いたnoteの中で、特にどのnoteを面白いと思っていただいたのか、聞いてみました。
回答はさらに僕を追い込むものでした笑
それは「すみだ北斎美術館について書かれた記事」だったため。
僕にとってこのnoteは、7年ほど前にヨーロッパを旅して感じた、日本の都市との構造的な違いを、ようやくほんの小さなアウトプットではありますが、昇華することができたものでした。
とても月イチ連載で書いていけるほど、同等のテーマを自分のなかにストックできていないぞ、という危機感とともに、この日はお開きとなりました。

連載テーマの検討

テーマを考えるにあたり、個人的に前提条件としていたものが以下の3つ。

①僕自身が楽しんで取り組めること
②建築に詳しくない人に建築の魅力を伝えるものでありながらも、元々建築を好きな人も楽しめる内容であること
③「建設の匠」だからこその、建築に携わる名もなき人びとにスポットを当てるものであること

これらのことから設定したテーマが、「竣工当時建築の専門メディアを賑わせた名建築が、いまどのように使われているかを紹介する」というもの。
①に対しては、いろいろな建築を見て回ること自体が趣味の僕にとっては問題なくクリア。
また竣工から時間の経った建築は、書籍や雑誌等では取り上げられることはあるものの、無料のWEBコンテンツでは最近の話題作がメインとなることから、「こんな面白い建築があるんだよ」と紹介することは、建築の面白さを広める意味で、幅をもたせることができること、「名建築のその後」を追う企画は業界的にも少ないことから、元々の建築好きにも興味を持ってもらえるのではないかと思い、②に対する回答としました。
そして③に対して。
ある建築がいまどのように使われているか、それを取材することは、その建築の運営・管理者や利用者に話を聞くことになります。
モノとしての建築が、人びとの活動の場としてどのように機能しているのか。
建築専門メディアでは、設計者(つくる)側の視点で建築を取り上げることが多い分、使う側の視点を取り上げることは、建設の匠らしい記事になると思いました。

編集長に企画案を送り、大筋合意。初回の取材先を武蔵野市の市立図書館と市民交流施設等を備えた「武蔵野プレイス」とすることで、連載をスタートすることとなりました。
企画会議から1か月後のことです。

取材と執筆、そして反省点

これまで5本の記事を書いてきて、そのうち建築を取材した記事は4本。
正直なところ、記事のクオリティにバラつきを感じており、一度今後の方針を相談しよう、ということで、半年ぶりに編集長とお会いしてきました。
その結果をざっとまとめていきたいと思います。


Article 01 武蔵野プレイス
⇨まずまず。正直なところ、「たまたま取材がうまくいった」結果、書くべき内容がまとめられた。
Article 02 横浜港大さん橋ターミナル
⇨取材としては本来聞きたかったことが十分に引き出せなかった。周辺事情も含め、追加取材によるなんとか記事としてまとめたかたちに。
Article 03 ゆかり文化幼稚園
⇨これが抜群によかった。編集部としても読者としても、以降も同じクオリティを求めてしまう。ただしこれがうまくいったのは、取材対象者が園舎の設計に直接関わった2代目園長のお孫さんであり、ご自身もこの幼稚園に通い、なおかつ現在も園の重要なポストで働かれている、というこれ以上ないほど建築に当事者意識をもって関わっている方だった。毎度同じような条件を望むことはできないなかで、いかに記事のクオリティを担保していくかが課題。
Article 05 笠間の家
⇨この記事に対する認識が、僕と編集長との間で少し齟齬があり、認識のすり合わせが必要と感じたことから、僕の方から打ち合わせをお願いしました。

笠間の家は、伊東豊雄さんという世界的にも有名な建築家の、初期代表作品のひとつで、当初個人住宅として設計されたものが、現在は笠間市の管理によって、ギャラリーやイベントスペース、カフェとして、市民に開かれた場所になっています。
僕自身としては、
・普通一般の人が体験することのできない住宅作品を、自由に見て回ることができる
・破格の値段で借りることができ、空間にあったイベントを開催することができる
・どのような使い方をするのも自由で、使い手に委ねられている
といったところが素直に驚きで、そうした事例を紹介することに十分意義があるだろうと思い原稿を提出しました。
しかしながら、記事公開後の反響は芳しくないものでした。

「感想をツイートしてくれたらamazonギフト券プレゼントするよ!」とツイートしてみたものの、あまりリアクションもいただけず、普段から僕の記事をよく読んで感想をくれる方からも、「今回の記事はどうコメントしていいものか難しい」との反応が。
ありがたいことです。

さて、今後どうしようかなー、と思っていたところに編集長からDMが。
「もっとだれにでもわかりやすい、有名な建築や、明らかにかたちが面白い建築を取り上げるようにしますか?」
直感的に、「それは違うゾ」と感じた僕は、ひとまず少し考えさせてください、メールしますと回答。
2日間ほどあれこれ考えて、自分なりの答えは出たもののメールするより打ち合わせの方が適切だろう、ということで、お話ししてきました。

協議の結果とこれからの方針について

この連載において、「この建築の利用実態を取材してみたい」というのは、執筆者である僕にとって、重要なモチベーションです。
ある建築の利用の実態を取材することが、「コンテンツになり得るかどうか」という感覚は、特に言語化はしないまでも自分の中には明確にあり、これまでの記事は想定通りに事が運んだかどうかによって記事のクオリティが上下していたように思います。
作品の選定基準を、読者に対してキャッチーなものに限定してしまうと、作品に興味をもった読者が記事を見に来てはくれるものの、面白いかどうかは別問題、という状況に陥ってしまうだろうなと。
これまでは、取材がうまくいけば面白い記事が書けるだろう、という想定のもと作品を選んでいたのを、取材がうまくいったとしても、記事が面白くなるかはわからない、という状態で取材に臨まなければなりません。
取材先の選定については僕の希望を優先させてほしいということはお伝えした上で、笠間の家の記事の反省点はどこにあったのか、というところを話し合いました。

そして編集長から言われたことは、あまりにも当たり前かつ、僕を含め建築のコンテンツ制作に関わる多くの人ができていないことではないかと感じました。
ひと言、「あの記事を読んで、笠間の家がなぜ名建築なのかがわかりませんでした」と。

知らず知らずのうちに、「あの伊東豊雄の代表作なのだから、この記事を読む人たちは知っていて当然だろう」という、初心とはかけ離れたスタンスで記事を書いてしまっていました。
本来、建築に詳しくない人に、その魅力を伝えるのが僕の役割だろうと。
建築好きにとっても面白いものを提供したい、というのは求められた役割に僕自身が勝手に加えたエゴの部分です。
この記事においては、後者の方に勝手に重きを置いてしまっていました。

笠間の家の歴史的重要性や建築的特徴、あるいは伊東豊雄という建築家にとって、どのような位置付けの作品なのか、といった点はいくらでもあげることができます。
ただそれが本当に、ある建築が名建築たる由縁を伝えることになるのか。
だれが読んでも建築の魅力を感じることのできるものになるのか。

僕自身が本業と離れてこうした活動をしていること自体、建築の魅力が世の中に十分に伝わっていないのではないか、ごく限られた人たちによってのみ共有された、閉じたものになってしまっているのではないか、という問題意識が活動のスタート地点としてありました。
記事としてのまとまりや構成のわかりやすさを意識するあまり、その根幹が抜け落ちてしまっていたのです。

これまで建築に関わる当事者にお話を聞き、僕自身が代弁者となって記事にまとめてきましたが、これからは僕自身が、取材として建築に関わりその魅力を実体験した当事者として、建築の魅力をきちんと伝えていかなくてはいけないと、大いに反省することとなりました。
その前提があってはじめて、運営者や利用者として建築に携わっている方々のお話が輝くのだと思います。

企画の性質上、ある建築に関わるどのような人にお話を聞けるのか、は記事の面白さを左右する大きな要因であることは間違いありません。
それに対しても、「これなら問題ないね」と納得できる解決策を、ご提案いただくこともできました。
「ロンロさんが飽きるまで連載は続けてほしい」と言っていただいている本連載、今後の更新を暖かく見守っていただけますと幸いです!


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