【短編小説】Ambient:もともとは妻の地元で、これからは息子の地元になる。でも、ぼくの地元ではない。
かといってシルエットに知り合いの姿を見いだせるわけはなく、もちろん全員が他人で、つまりそれは帰り道の暇な15分をやりすごすための意味のない風景でしかなかった。
浮いた交通費で缶ビールを買ってマンションに着くと、妻はまだ帰っていなかった。義母がリビングいて、息子はソファでゲームをしている。
暖房がついているらしく汗が吹き出た。
「お父さん帰ってきたよ」
と義母が言うと、息子は「むー」という音を出して反応した。
20時を回っていたため、義母と息子に先に食事を摂らせ__と言っ