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【短編小説集】Ambient

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Ambient:環境、取り囲む 唐突に始まり、唐突に終わるショートストーリー集です。 私たちの生活に閉塞感をもたらす、得体のしれない包囲網を突破するために。
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記事一覧

Ambient あとがき(私的な小説の方法)

アンビエントという言葉は濫用されています。かくいう私も、濫用者の一人。 だから、べつに、…

ピルスト
10か月前
6

【短編小説】Ambient:ブラウン管をなぐる老婆

まるで悪い子を叱るように繰り返しブラウン管テレビを叩くので、ぼくはそれが壊されてしまう気…

ピルスト
1年前
3

【短編小説】Ambient:喪服は傘を求めて行列をなす地下街

地下鉄のA4出口から外に出た。やはり雨は本降りに変わってしまっていた。 こういう日にはふさ…

ピルスト
1年前
1

【短編小説】Ambient:地球の送風機能が壊れてしまったかのようだったあの静かな夜に…

今日はなんとなくあの夜に似てると思うんだ__寒い?暖房が効くまでに時間がかかるのはね、こ…

ピルスト
1年前
5

【短編小説】Ambient:あの頃の私は、生きているだけでは十分ではないような、焦りと…

聞いたことのない、とくに良いとは思えない、ジャンルのはっきりしない、めそめそした音楽が店…

ピルスト
1年前
2

【短編小説】Ambient:見覚えのある後ろ姿に胸が踊った

見覚えのある後ろ姿に胸が踊った。 ぼくは早歩きで追いつき、驚かせないように体には触れず後…

ピルスト
1年前
5

【短編小説】Ambient:もともとは妻の地元で、これからは息子の地元になる。でも、ぼくの地元ではない。

かといってシルエットに知り合いの姿を見いだせるわけはなく、もちろん全員が他人で、つまりそれは帰り道の暇な15分をやりすごすための意味のない風景でしかなかった。 浮いた交通費で缶ビールを買ってマンションに着くと、妻はまだ帰っていなかった。義母がリビングいて、息子はソファでゲームをしている。 暖房がついているらしく汗が吹き出た。 「お父さん帰ってきたよ」 と義母が言うと、息子は「むー」という音を出して反応した。 20時を回っていたため、義母と息子に先に食事を摂らせ__と言っ

【短編小説】Ambient:院内は夜よりも暗かった

ベッドの上に、スマホを忘れてきていた。 財布の革の柔らかい感触しかポケットにつっこんだ手…

ピルスト
1年前
3

【短編小説】Ambient:ぼくはドア前のインターホンを2度押してから、ようやくメッセー…

ぼくはドア前のインターホンを2度押してから、ようやくメッセージを思い出した。 『部屋にい…

ピルスト
1年前
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