見出し画像

シンプルに人の性格は3タイプ。 『GIVE & TAKE 「与える人」こそ成功する時代』の感想

本書は、世の中の人の性格をギバー、テイカー、マッチャ―という実にシンプルな3種類に分けて論を進めていっています。その3つが以下。
ギバー……人に惜しみなく与える人
マッチャ―…..損得のバランスをとる人
テイカー…….自分の利益を優先させる人

道徳的に考えれば、与える人、ギバーがいいだろうと思うのですが、そこがものすごく奥が深いのです。この3種類を論じるだけで分量ある一冊になっています。

この著書は、膨大な研究成果をもとに論理を展開しています。著者、アダム・グラント氏は略歴をみると、ペンシルベニア大学ウォートン校教授、組織心理学者とのことです。研究者といえど、よくもここまでデータを揃えたなと驚きの連続でした。
数々の研究者が、たとえば数十人、数百人、数千人をときには何年も追跡して、人生がどうなったか、仕事で昇進したか、などを調査しています。
数が多いだけに説得力あるなと思いました。

そして、文章の構成、魅せ方が惹きつけられるものがあります。序盤からギバーのほうがいいだろう、と予想はつくのですが、意外な実験結果が最初に提示されるなど、ほんとはどうなの?と興味をひきつけられるので、結論が気になってしまいます。
例えば、アメリカで有名な企業のCEOの顔写真を二枚並べて、どちらがギバーでどちらがテイカーか、という問いかけがありました。写真に見分けるサインがあるというのですが、どうも決定的な違いがないように思います。それもそのはず、写真の掲載のしかた(載せる大きさなど)に明らかな違いがあったのでした。
その有名な企業の2つのうちひとつが、歴史に残る事件で倒産した会社です。アメリカにかつて存在した、急成長して巨大企業となったエンロンのCEOは、テイカーであったことはたいへん興味深かったです。テイカーでもあそこまでの巨大企業に成長させ、いわゆる成功者となることができたのです。むしろ、テイカーだからこそ、強烈な欲望があったからこそかもしれません。
しかし結果は、自分本位では結局はうまくいかなかったのです。

なお、本書は2014年発売であり、最近のSNS時代の時勢も反映されているのがプラスアルファでよいところです。SNSが普及し、人の噂が一瞬で広まる世の中になったことで、ギバーはますます成功しやすくなっているといいます。同時に悪い噂も瞬く間にひろがり、自分本位で他人から搾取するような人間(=テイカー)には不利になっているそうです。
有名なロングセラーの著書のなかには、古い場合もあり、100年ほど前などで主要通信手段が手紙といったケースもあります。もちろんそれほど長く語り継がれる良書であるから、学べることが大いにあるとは思いますが、本書のようにSNS時代の情勢も考慮されているとなると、プラスして説得力があってよいと思います。

自分に目を向けると、私は損得をすぐに考えてしまうから、マッチャ―だろうなと思いました。でも、お人好しになるところは、ギバーで、そのなかでも自己犠牲タイプのギバーのようなところがあるように思いました。残念ながら、実は自己犠牲ギバーが、いちばん成功しないタイプなのです。ギバーには二種類あって、自己犠牲タイプと他社志向タイプがあるというのです。自己犠牲タイプのギバーが他のマッチャ―、テイカーより成功せず、逆に他者志向タイプがいちばん成功します。
ではギバーならどうしたら他者志向になれるか、についても書かれていました。読み進むほどに他者志向のギバーになって、人に愛され、人生うまくいくようになりたい、と自然に思うようになりました。
どうしたら他者志向のギバーになれるか、その一つが自分自身だけではなく、家族など大切な人のためにもがんばっていると思うことでした。自分だけなら、多少不利でもいいかと思ってしまうけど、誰かのためなら自分をしっかりもって交渉などでも強く出れるというのです。

本書は、私の主観ではありますが10本の指に入るくらいの良書だと思います。知り合いからおすすめされて知ったのですが、もっと多く取り上げられてもおかしくないと思うほどです。
人間関係、仕事やビジネスすべてがうまくいくヒントが、シンプルながらぎっしり詰まっていると思います。


この記事が参加している募集

熟成下書き

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?