見出し画像

京都エッセイ(14)エッセイを始めた理由

 京都エッセイも15回目になりました。毎日更新しているので(閑話休題もあるけども)実際はまだ半月分なのですが、今回は僕がこうしてエッセイを書くようになった理由についてお話しようと思います。

 理由は簡単。多くの方が影響を受けたであろうさくらももこさんのエッセイを読んでハマったから、です。

 これだけでエッセイを書いた理由を説明できてしまうくらい、さくらももこさんのエッセイは素晴らしかった。

 もともとエッセイを読むのは好きだった。けれど、自分は小説の人だから書かないといった気持ちも少しばかりあった。

 なんとなく小説で使えるエピソードを小出しにしてしまうような気がしていたのもあるし、卒業制作をエッセイでいこうとしたときに、よっぽど面白い人生でないとダメだと言われてしまったのをずっと覚えていたからでもある。

 後者に至っては言われたのは少しばかり交流のあった別学科の同級生なのだが、妙にしっくりきてしまった。

 確かに僕の人生ってなんも面白くないな、と思ったのだ。

 記憶はないが、幼少の頃は母親が不倫をし、その不倫相手によって頭が割れて死の淵を彷徨うというハードな感じから始まった。

 それによって少しばかりゆがんでしまった兄(あくまで当時自分から見て、現在は大丈夫)とはそりが合わず、喧嘩ばかりだったし、いわゆる悪ガキで腐れ縁でつるんで遊び、父親にキレられまくった小学生時代。

 自分とは何か漠然とした不安に襲われるようになり、時々癇癪を起こすようになった中学時代。

 バイト先で出会った大人な男性と田舎の悪口を言いながらドライブしまくっていた高校時代。

 そして失敗続きだった大学時代。社会人として成長途中のナウ。

 まとめてみると始まりこそハードだったが、あとは概ね普通。平成初期生まれとしてちょっと昭和感がする子ども時代を過ごし、平成後期、令和生まれほどではないがネットが生活の中にあることに違和感は少なく使いこなせている。終わったはずのゆとりの波も受けていたと思う。

 要約するとまぁまぁ普通に部類に入る人生なわけだ。

 さてそんな僕が卒業制作こそ諦めたものの今こうしてエッセイを書くようになったのは、先述した通りさくらももこさんのエッセイを読んでハマったからである。エッセイを始める理由としてもとても普通で恥ずかしい。

 僕の大学時代のエッセイを読んでくださった方からすれば意外かもしれないが、僕は陽だまりや木漏れ日、思い出、といった類の光さす中に埃舞うような空気感がとても好きである。

 いろんな人に噛みついていた様子からも想像はできないかもしれないが、夏休み、子どもの頃、青空、入道雲、秋の帰り道、雪の野山を駆け回った記憶、小学校などなど、本当にそういったことを連想させられるものに弱いところがある。

 また人の心についても深く関心があり、幼少の頃のちょっとした体験が今を形作るピースの一つになっているなーと、自分でも本でも垣間見えたとき、見つけられたとき、じんわりとした喜びを得ることができる。

 つまるところ幼い頃の幼さ故の失敗や勘違い、喜びや失望といった類+それを想起させる情景に心が踊るのである。

 さくらももこさんのエッセイにはそれが多く書かれていた。アニメでは描かれないちびまる子ちゃんのキャラクターの素になったであろう人物のちょっとしたエピソードの一つ一つが、息づいていて、しっかりと胸に届く。

 こよりのように縮んでしまったかと思うほどの強烈な切なさや、水にふやけて消えてしまいそうなほどの淡い記憶。記憶と呼ぶにはいささか柔らかすぎる匂いや風景、光の温度や肌触り。

 それらが胸の中で人知れず開封され、じんわりと滲んでいく。

 簡単な表現をすればなつかしいなのだが、それにまとめてしまうとこぼれ落ちてしまうものが多すぎる。まとめようとしてこぼれていくそれを、坂道でフルーツを紙袋から落としてしまう買い物帰りの人のように、必死で追いかけてかき集めてしまう。そうするとまた付随して他の記憶の引き出しもあく。連鎖して開いた記憶はたとえ綺麗なものでなくても、どこかラメがかった、トワイライトみのある思い出で、また感情のフルーツをこぼす。

 その繰り返しは例えるなら遊園地で乗ったアトラクションが面白くてハイテンションの状態で友人と次になんのアトラクションに乗るかを話し合っているときのような多幸感にあふれていた。

 笑いあり、涙あり、ちょっとブラックでビターで、どこかニヒルでアンニュイで、行間から香るユーモラスさが鼻腔をくすぐり、また笑う。

 そんなさくらももこさんのエッセイに影響を受け、自分も書きたいと思うようになったのである。

 少しでもその片鱗をお見せできたら、読んでくれた人の頭の中にパッと花開くものがあったら、少しでも面白いと思ってもらえたら幸いです。

 最後まで普通の閉め方で恥ずかしい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?