見出し画像

書評 日本経済の見えない真実 低成長・低金利の「出口」はあるか 門間一夫&私事2024年のあいさつ

2024年を迎えたが、元旦から能登半島の地震が発生し、翌日には羽田空港の事故が起きた。亡くなられた方々には心からお悔やみを、被害に遭われた方々には心よりお見舞いをそれぞれ申し上げます。

新年を迎えて、海外では引き続きウクライナ、中東では紛争が続き、きょうは台湾の総統選の投票があり、中国をめぐる動向も目が離せない。そのようななかで、東京市場は今週バブル後最高値を更新する3万5000円台を付けた。ただ、物価は高騰し、経済もさほど成長している実感があるわけでもない。ライドシェアの問題1つとっても、新たなビジネスを生み出すのにも、政治的な障壁が大きいのが実情だ。


そんななか、小生が昨年後半にやや時間をかけつつ読んだのが、同書である。著者は、白川、黒田総裁の下で理事を務めた日銀OB。現在はエコノミストとして活動している。著者は、あとかぎで伝えたかった内容を下記の通り、五点にまとめている。

・経済成長面で日本経済が特にダメだったわけでなく、人口の減少・高齢化という要因を除けば、経済成長面においては日本は普通の先進国という点

・それでも構造改革や成長戦略には、粘り強く取り組む必要があり、そうでなければ、日本の潜在成長率はさらに低下。セーフティネットや人材投資の増強が不可欠。

・成長戦略に成功の保証はないことを、冷静な覚悟が必要なこと。医療・年金制度の課題を、経済成長で解決しようと考えず、低成長でも機能するセーフティネットが必要で、おそらく再分配の要素の強化が必要。

・「異次元緩和政策」の重要な功績は、「金融緩和の不足が日本経済の問題ではない」と認識できる状態を作り出したことで、2%物価目標が現実的でないこともわかり、イールドカーブ・コントロールなど副作用が無視できない政策は撤廃すべき。

・成長戦略や社会課題解決との関連で、財政にしか果たせない役割もあり、プライマリーバランスの黒字化を絶対視せず、持続的にその潜在力を生かせる財政運営の最適解を、模索することが望ましい。

同書では、アベノミクス景気の日本経済、正しい成長戦略の難しさ、2%物価目標と異次元緩和、強まる金融政策の限界、重要性を増す財政の役割、の五章立てで、多角的な視点から分析を行っているが、わからない点がわからないと率直に書いている点が、誠実さを感じる。経済政策において、常に100%の正解はなく、最適解をいかに導出していくかが、問われているのだと強く認識した。

#書評 #経済学 #金融政策 #経済政策 #日銀