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プロジェクトマネージャーの必須スキル【コンフリクトマネジメント】

意見の対立はプロジェクトにつきものです。
PM経験が浅いうちは、納期通りにプロジェクトを進めるために対立を最小限に抑えようとしがちです。

しかしプロジェクトを効果的に進めるには、避けることができない衝突を事前に予測し、プロジェクトとビジネス全体にとって最適な方法で解決できる環境を醸成する必要があります。

一人前のPMになるために必要なコンフリクトマネジメントスキルを紹介します。


⒈要求とトレードオフを明確にする

PMの役割は、限られたリソースの範囲内で、リスク許容度を考慮しながら最善策へ導くための建設的な議論の場を提供することです。

プロジェクトには異なる視点や優先順位、専門性をもつステークホルダーが集まります。
たとえば営業は新機能を盛り込んだプロダクトを要求する一方で、エンジニアはプラットフォームの安全性を重視し、オペレーションチームは合理的なプロセスの展開に固執するシーンはよくあります。

トレードオフについて話し合う場がなければ、ステークホルダーは各々の意見に固執し、プロジェクトが膠着状態に陥ります。
特定のグループに決定権が偏っていれば、意見を押し通すかもしれません。その場合他のチームからは猛烈な反対にあうはずです。

プロジェクトの進行中に意見を対立させるのはリスキーに感じるかもしれません。
しかし、それを避けてプロジェクトを頓挫させてしまうより遥かに安全で生産的です。


⒉生産的な対立を確立する

プロジェクトでは、チームメンバー間に正しいコンフリクトマインドを醸成させるのが得策です。

生産的な対立のためには、各ステークホルダーの要求と、必要なトレードオフを理解しておく必要があります。
各ステークホルダーの緊張関係をマッピングすることでプロジェクトをスムーズに進めることができます。
手順は以下の通り。

①各メンバーがどんな専門性があり、どんな問題に気をつけているのか明らかにする
②各メンバーが擁護するステークホルダーが誰なのかを明らかにする
③各メンバーが議論に持ち込む要求を明確にする

たとえば①営業部門は競合を注視し、②潜在顧客を重視し、③差別化されたソリューションを要求する、かもしれません。

あらかじめ対照的な立場の意見を知っておくことで、議論の心構えができ、建設的な対話が可能になります。


⒊反対意見を募り、対立を促進する

PMの役割は、メンバー全員が適切な選択、リスク、トレードオフの全てを検討できる心理的安全性を醸成することです。

黙っていたり、意見を言えないままのメンバーがいることはよくあります。
前章で作成したテンションマップをもとに、意見を募り続ける必要があります。
そして参加者には、お互い積極的に意見をぶつけ合うだけでなく、マイナーな意見や反対、事実に反する意見にも公平に耳を傾けてもらう必要があります。
おすすめの質問は以下の通りです。

「まだ対処していないリスクは何ですか?」
「誰が、どのような理由で、このプロジェクトに反対する可能性がありますか?」
「このプロジェクトはどのように失敗する可能性があり、そのリスクを減らすためには何をすべきですか?」
「プロジェクトの何がうまくいかない可能性がありますか?」


⒋対立をマネジメントする

全ての対立が健全ではありません。
生産的な緊張から非生産的な争いに変わった場合は、PMが正しい方向に導く必要があります。
なぜならある一人の行動がチーム全体を混乱させたり、個人攻撃が始まるなどすると、チームを管理するのが困難になるからです。

問題行動があったら、会議前に時間をかけてその人の要求とチームがプロジェクトを推進する上での目的を話し合い、チームから離脱させなければならない可能性を率直に伝えてください。
また、その人の問題行動がプロジェクトに対してどのような悪影響を及ぼしているかについてもフィードバックする必要があります。
それでも解決しない場合は、その人のダイレクトリーダーに相談しましょう。
注意点として、不平不満や悪口ではなく、起きている事実を共有し、取るべき最善策についてアドバイスを求めるようにアプローチしてください。


⒌決定権をもつ人に影響を与える

PMは大きな責任を負っているものの、多くの場合は重要な決定を下す権限を持っていません。
代わりに、正式な意思決定者やスポンサーに掛け合う必要があります。

PMよりも権力のある人物との対立が必要な場合は、次の4つのガイドラインに従うのがおすすめです。

①あなたの懸念を、プロジェクトの目標、できればその人が明示した目標と結びつけます。
たとえば納期厳守をうたうリーダーが無理な要求をしてきた場合、「〇〇さんにとって最も重要なことは、プロジェクトを期限内に完了させることだと承知しています。私は、〇〇さんの提案するスコープがスケジュールを危うくするのではないかと懸念しています。」と伝えます。
これによってあなたの反対意見がプロジェクトの納期を守ろうとしている姿勢を表明することができます。

②あなたの懸念を、相手の行動に対する客観的な説明に変換します。
たとえばエグゼクティブスポンサーが会議でプレッシャーを与え、参加者が発言しにくくなっている場合、「他の参加者が意見を述べる前に〇〇さんが見解を話してしまうと、議論が止まってしまうことがあります。皆から意見を聞いて、今問題点を明らかにするにはどうすれば良いでしょうか?」と伝えてみると良いでしょう。

③決定権をもつ人に対して問題提起する必要がある場合は、先のその目的を確実に伝えます。
もし企業ミッションで透明性を大切にしているのであれば、「私は透明性というミッションに基づいてお話しするのですが、〜」と枕詞を付けましょう。
プロジェクトの成功を最優先にしているのであれば、「〇〇さんにこのことを切り出すのは大変心苦しいのですが、マーケティングチームの賛同を得るにはこれを採用するのは重要だと思います」というような言い回しが良いでしょう。

④提案を断定ではなく質問形式でアプローチし、相手に選択の余地を残します。
たとえば「その提案は次のフェーズで採用すべきです。」ではなく「それは次のフェーズで採用するのが良いと思いますが、いかがでしょうか?」と提案することで、権力者の強引な意見を柔軟に対処する余地を残すことができます。


プロジェクトマネージャーは、チームをまとめる重要な役割を担っています。
プロジェクトで避けることのできないコンフリクトを上手に利用し、最良の意思決定を行えるようにしましょう。

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