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【読書ノート】「タイランド」(『神の子どもたちはみな踊る』より)

「タイランド」
村上春樹著


一言で言うと、

47歳の病理医さつき(主人公)が、タイでの国際会議に参加して、合わせてリゾート休暇を取得した時の出来事。
さっきは、過去に神戸の男性と関係を持ち子供を堕す経験していたり、アルコール依存の夫に、浮気され、離婚するなど辛い経験を持っていた。バカンスでは何も考えずに休むことを望み、ガイドのニミットが、紹介する占い師のもとを訪ねてあるお告げを受ける、という話。

キーワードだらけの物語なのだけど、いくつか挙げてみる。

①「ニミット」(運転手兼ガイドの名前)とは?
1. ヒンディー語で「名前」「題名」「タイトル」という意味がある。

2. サンスクリット語で「目的」「目標」「意図」という意味がある。

②「更年期」(さっきの状況)
1. 転換期: 更年期は、人生の転換期と見なすことができる。

2. 智慧の増加: 更年期には、女性の体験や知識から得られる智慧が増加する。

3. 経験の再評価: 更年期は、これまでの経験や人生の意味についての再評価をする機会でもある。

③「泳ぐ」
1. 身体的な自己超越:泳ぐことは、身体的な制約や重力と戦いながら、自分自身を超えることを意味する。

2. 心身の統一:泳ぐことは、心と体を調和させる機会を提供する。

さっきは、占い師から、こぶし大の言葉の石が、見えると言われるのだけど、聖書に出てくる「石の心」という言葉を思い出した。

聖書では、特に旧約聖書のエゼキエル書において「石の心」は霊的に硬く、神の教えや命令に反抗的な心を表している。それは愛や憐れみ、理解や受け入れの能力を欠く心象を指す。

エゼキエル書の一節(36:26)で神は次のように語っています。「わたしはあなたがたの胸を切り開き、石の心を取り除き、肉の心をあなたがたに与えます。」これは、神が人々の反抗的な心(石の心)を取り除き、新しい霊的に敏感で柔軟な心(肉の心)を与えることを約束するもの。

この新しい心は、神の意志を理解し、それに応じて行動できるため、神の恵みと救いを受け入れる能力を象徴する。

人生には困難が避けられないのだけど、心の持ち方が状況を変えることが可能で、「石の心」ではなく「肉の心」を持つことで、日々の喜びやつながり、明日への期待を見つけられ、新たな出会いや発見が得られる、という話。

本書の主題は何か?
憎しみ、恨みなどの感情は、なかなか、消えない。人に話すと増幅されてしまう。祈り、瞑想によって神が、必ず癒してくれる。という理解をした。

その上で、

”生きることと死ぬることは、ある意味では等価なのです。”

これを解釈するためには、何が等価であるかという視点から考える必要があります。

1. 存在と無: 生と死は存在(生きている)と無(死)の二つの状態を表している。生まれることと死ぬことは、生物の生命サイクルの一部であり、その一部が欠けてはならない。

2. 生と死の循環: 特に東洋哲学では、生と死は再生の一部として見られ、一つのサイクルの異なる部分として認識される。

3. 人生の価値観: また、生と死は等価で、人生の経験と価値観を形成する。生は私たちの自己成長と充実感の源で、対照的に死は時間の価値と人生の意味を強調する。これらは一見対立するように見えるが、実際には相互に関連し、互いの存在によって人生の価値が形成される。

生と死の理解は、より深い人生理解と意味ある生活の追求を可能にする。

古代ローマの哲学者セネカの言葉を思い出した。
「一生をかけて生きることを学ばなければならない。そして一生をかけて死ぬことを学ばなくてはならない。」

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