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【読書ノート】「舞姫」

『舞姫』
森鴎外著

高校生の時、読んで、主人公の無責任さに苛立ったことを思い出した。
今回、少し別の読み方をした。

森鴎外自身はクリスチャンではなかったらしいが、娘はキリスト教の洗礼を受けているとのことで、森鴎外も、キリスト教に対して深い理解があったらしい。

そういう目線で『舞姫』を読むと別の見方ができると思った。

主人公の豊太郎は煮えきらない、ろくでもない人間、真面目ではあるけれど、実は怠け者でもあるし、自由を愛するのだけれど、「人」を恐れる人間。あまりにもキリスト教的だと思った。

人間は生まれながらにして罪人だ。神を恐れずに人を恐れるということは、キリスト教的には、最も罪深い存在。自分の犯した罪に、気づき悶絶している。

小説はここで終わるから後味が悪いのだけど、もし、続編があって、主人公が受洗することになれば、まさにキリスト教の物語になってしまうのだが。

ドイツは結構、敬虔なキリスト教国だから留学をして、キリスト教的な影響は受けていたのではないか?と思った。

ちなみに森鴎外の作品に『雁』と言うものがあるのだけれど、そこに出てくる登場人物が高利貸だったり、蛇の存在があったりと、聖書の要素が多く取り込まれている。

そして、人間としての努力みたいなものは無駄だ、と言うことが突きつけられている。

こちらも救われるには、信仰が必要であることをなんとなくほのめかされているような気がしてしまったのだけどどうだろうか?

話を舞姫に戻すと作品の発表が1890年。ドイツに留学して、ドイツの女性と恋愛をするということは、当時としては、かなりぶっ飛んでいた設定だったんだろうと思うと面白くも思う。

名作と言われているものは、なかなか面白い。

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