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思うこと269

 E・Lカニグズバーグ(1930年-2013年)というアメリカの女性作家を知ったのは、例によって母の教えだ。『クローディアの秘密』(1967年)、『ティーパーティの謎』(1996年)で児童文学賞であるニューベリー賞を二度受賞している。

 私が初めてカニグズバーグを読んだのはまさに『ティーパーティの謎』だった。小学校の頃、母に教えられるよりも前になんとなくタイトルが気になって借りた。ところでこの本はどうも内容がよく分からないまま読み終わってしまい、後に母に話してみると、翻訳が良くないと意味の分からない話になる、とのこと。それから改めて母にカニグズバーグは面白い、と薦められ、『クローディアの秘密』はもちろん、『魔女ジェニファとわたし』『ぼくと<ジョージ>』『スカイラー通り19番地』等、かなり積極的に読みあさってきた。無論、それでもまだ読み尽くしていないので、最近は再び図書館で一冊ずつ借りるようにしている。

 それにしても、とにかくカニグズバーグは面白い。ふと考えてみると、
彼女の物語には「子供らしく」とか「大人らしく」というような、生き方を
押し付ける観念がまるでなく、また、子供(あるいは大人)でありながら不完全に不器用に生きて行く人たちを「愛情」を持って描いている優しい心地よさがある。児童文学とはいえ、大人のファンが多いのもこういう部分があるからだろう。

 それからこれは個人的なことだが、彼女の書く主人公(10代半ばの少女や少年)は、両親との距離感を感じていることが多い。すでに離婚した家庭であったり、すでに新しいパートナーがいたりすることもある。そのせいか、主人公の子供たちは少し素直さに欠け、なんとなく世の中を斜めに見がちな
悪く言えばそれこそ「子供らしくない」感じがある。しかしそんな子が家庭や学校に縛られない別の世界を体験し、違った人たちと出会い、今生きる自分や、立ち返って両親のことも理解していけるようになる……要するに、母子家庭で育った私はそんな主人公たちにいつも共感しているようである。 

 今回借りてみた『800番への旅』も、母が新しいパートナーと新婚旅行をする間、ラクダを連れて仕事をする父親の元へ送られる主人公…、という設定。なかなか父親に対して心を開示しきれない子供の態度や、父親の恋人(っぽい)女性を目にしてモヤッとする気持ち。ああ、分かる分かる〜とほくそ笑みながら、あとほんの1時間もあれば読み終えてしまいそうな寂しさと、次は何を借りようか、という楽しさに満ちつつ。

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