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思うこと373

 先日、「昔観たけどよく分からんままに終わった映画に再チャレンジ」的な目的で、キューブリックの『2001年宇宙の旅』(1968年)を観たが、思えばコーエン兄弟の『ノーカントリー』(2007年)もその類に該当すると気付き、さっそくレンタルした。
 ちなみに『ノーカントリー』は、母のお気に入りの映画の一つであり、高校生だか二十歳だか、それくらいの時に母たちと一緒に観たのだが、さっぱり内容を覚えていなかった。(唯一、おっさんしか出てこないような記憶だけあり、これはあながち間違っていなかったと視聴後に分かる。)

 レンタル前にあらすじを読んでもまだ何も思い出せないくらい記憶からすっぽ抜けてしまった映画だが、はてさて約十年ぶりに観てみると、やはり面白かった!

 簡単に言えば、1980年代のテキサスが舞台で、麻薬取引が台無しになった現場で偶然大金をゲットした男が、追手の殺し屋(ハビエル・バルデムの顔が怖い!!)に追われる話。そこに保安官のトミー・リー・ジョーンズが殺し屋から男を守るために奔走はしてみるものの、三人の男たちはそれぞれにあんまり目的を果たせないまま映画は終わる。
 途中までは結構この追って、追われて的なところでハラハラ観れたりもするのだが、やたら自分の怪我を丁寧に治療するシーンとか、全体を漂う「こんなことしてどうすんだろ」的な虚しい空気が特に印象的。とにかくメインの男たちが「あんまり目的を果たせないまま」終わる話なので、やっぱり虚しい作品なのだと納得の終わり方。
 映像としてどうなのか、とかは門外漢なので何とも分からないが、テレビに反射する人物の絵面とかは、なんか綺麗だな〜〜!と漠然と思った。あと、酸素ボンベみたいなやつむっちゃ便利だな、と思ってたら、例の家畜の牛を殺める用のやつなんですね。怖。

 ところで先日アマプラで『ジョーカー』(2019年)を観たのだが、まあそれに関しては正直なところ、作品としてはなるほど『タクシードライバー』(1976年)とか『キング・オブ・コメディ』(1982年)とかのオマージュなのね、くらいしか思えなかったので細かいことは割愛するが、ともかくアメリカの1980年代前後、ベトナム戦争を経験したアメリカ映画の殺伐としたなんともいえない煮詰まったような空気って、やっぱり良いな、ということ。(良い、とか言っていいもんでもないのだろうけど)
 『ノーカントリー』の主人公格である男(金持って逃げる)も、作中でベトナム帰りだと分かるし、アメリカにとっての「ベトナム帰り」という概念をつくづく考えさせられる。でも時代はどんどん過ぎていくので、こういう感覚もいつまで自分の中で大事にしていけるか不安になってしまう。そもそもがベトナム戦争自体自分が生まれる前の出来事であり、何かが分かった気でいても、実際の空気や経験者には遠く及ばないところで、呑気楽に「良いなあ」とか思っているのだから。

 というわけで、まあ何だかごちゃごちゃしてしまったが、ともかく良い映画でした。淡々としていると思いきや、結構グッとくる場面も多いので、もう一回観ても良いかもとすら思ってしまう。それにしても母娘でこんな虚しい映画を好んでいる私たちって一体…!

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