今昔バス物語(2)

昨日の記事では、ベビーカーは畳んでバスに乗っていたことに触れた。

今の時代は、ベビーカーの持ち込みをめぐって、何かと話題になる。

それはなぜか?

ベビーカーの規格が、昔より大きなものになり、スペースに幅をとるようになったからである。

ノンステップバスが普及して、乗降口の段差がなくなったのはよいが、昔のバスは前も後ろも通路は段差がなかった。

ノンステップバスは、後方の座席に座るためには、通路を一段上がらなければならない。そして、その通路は昔より狭くなり、ベビーカーの入る余地はない。

そして、ベビーカーは、一人乗りのものを見ても、昔の車輪よりサイズの大きいタイヤになった。

昔のベビーカーはシンプルな造りで、折り畳み傘をたたむのと同じような要領で、すぐにぺちゃんこに畳めた。4つの車輪も、めちゃくちゃ軽かった。

それに加えて、赤ちゃんは必ず抱いて乗っていたし、自分の足で立てる幼児は、親の手を握ったり、車内の座席の手すりにつかまったりしていたものだ。

バスの車内で、ベビーカーを再び開いて、子どもをそこに座らせることなど、あり得なかったのである。

そもそもバスという公共交通機関は、同じ目的を持って乗車する人のために運行されているわけであり、収容(超満員でも何人が乗れるかという)人数も計算されているから、ノンステップバスは別として、ベビーカーが占めるスペースまで計算されていないのが普通である。

ベビーカーは乗せるなということではなく、そうすることによって、思いがけず満員状態になり、次の停留所以降の乗客が乗れずに見送ることになってしまえば、(さらに言えば、ベビーカーを乗せるのに若干のタイムロスが生じて遅れることになれば)、後に乗る乗客がいやな思いをしてしまう。

ベビーカーを畳んで乗っていた時代は、当時のベビーカーが畳みやすいものであったこともあり、赤ちゃんさえグズらなければ、スムーズに他の客と同様に乗れていたのである。

ベビーカーは消費者のニーズに応じて、機能が充実するようになり、買い物袋や重い荷物を取っ手にぶら下げても、昔のように転倒しないものになった。そして、赤ちゃんの乗り心地も良くなって、雨よけのビニルカバーも日よけのカバーも当たり前のように付いている。

そういう商品の進化に、世の中の規則が追いつかなくなってきているのだ。誰が悪いという問題ではないのである。



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