法の下に生きる人間〈第61日〉

先週は、バイオマスマークの話をした。

レジ袋にバイオマスマークがあるということは、そのレジ袋の素材には生物(植物も含む)由来の資源が使われているということである。

レジ袋の素材というと、袋のフィルムにしか目がいかないと思うが、実は、レジ袋に表示されている文字やデザインには、インキが使われている。

インキとインクの違いが分かりにくい人もいるが、インキは一般的には印刷等の用途に使われるもの、インクは万年筆等の筆記の用途に使われるものと理解しておくとよいだろう。どちらも似たようなものであり、厳密な区別はされていないようである。

そのインクの歴史は非常に長いものであり、古代から煤(すす)やイカスミなど自然由来のものが使われてきたが、私たちが学校で必ず通る道といっていいほど、習字の授業では墨液を使う。その墨もインクの一種である。

子どもが初めて毛筆で習字を行うのは、習い事は別として、だいたい小学校3年生くらいからである。(1・2年生は硬筆の練習がほとんどである。)

習字の授業の後に必ずといって直面するのは、余った墨液の扱い方である。

子どもに何も教えなかったら、そのまま流し場に墨液を捨ててしまう。

家庭で天ぷら油が余ったら、キッチンペーパーなどで吸わせて捨てるように、墨液をそのまま捨ててはいけないのは、下水処理に支障をきたすし、処理しきれなかった場合、水質汚染につながってしまう。

その自覚が、大人になった今でもきちんと続いているかどうかは、人それぞれだろう。

ただ、天ぷら油や墨液だけでなく、実は、私たちはインク(もしくはインキ)に頼った生活を意外にも無自覚に送っているのかもしれない。

例えば、小学校の低学年では、生活科や図工で「押し花」の体験をする。栞づくりや、暑中見舞いのハガキの裏面のデザインとしての活用など、いろいろと遊んだことが一度はあるはずだ。

ところが、大人になると、手作りの栞や手作りの年賀状というのは、よほど趣味で作ることがない限り、人工インクに頼る。

パソコンで作成したものをインクジェットプリンターで印刷する人もいるし、ユニークなデザインに惹かれてお店で売られている栞を買う人もいる。

そのインクが水溶性だったとして、果たして水質汚染の心配はないのかなど、墨液や天ぷら油のように考えることはほとんどないだろう。

しかし、日本中の人がそういったことを自覚せずに廃棄されたゴミの中に含まれているインクが、知らず知らずのうちに土壌や川の水に混じって微量ながらも毎日のように蓄積されていくとどうなるだろうか。

今週は、年賀状のデザインを考える前に、ちょっと立ち止まってみることにしよう。





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