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自炊日記一年ふり返り

私はずっと料理が好きではなかった。
スーパーに行くのも、皿洗いも、台所が汚れるのも、大きらい。
食べ物も、お腹が弱いため「コンビニのものは食べない」くらいのこだわりはあったものの、作るレシピはいっぺん通り、もやし、カレー、蒸し野菜、塩で味付け、こればかり。
インスタグラムに料理の写真をアップするなんてとんでもない。誰もそんなこと言わないのに「そんなことも知らないの?」と、非常識を指摘されそうなのが半ば恐ろしかった。

そんな私が癌になり、何がなんでも自分の体のためにやらねばならぬことになった、自炊。とにかく栄養をとらねばならない。節約とか、言っている場合ではない。私はひとり暮らしだし、自分で自分のためにやるしかない。

自炊マイルールは、
野菜をたくさん食べる。
朝にフルーツをとる。
一日一回きのこ類、海藻をとる。
砂糖、小麦粉、乳製品はできるだけ食べない。
油や調味料には気を使うこと。

そして作った料理は、毎日写真に撮ってインスタのストーリーズにアップし、モチベーションにした。「今日ちゃんと食べました」「ニンジンジュース飲みました」「よくできました」というしるしに。
(マイルールに、「食べる前に撮る写真は何枚も撮らないこと」を付け加えたいところだが、私はついついやってしまうよ)

はじめはイヤイヤ、重い腰をあげてやっと、な状況だったけれど、
自炊に向き合った約一年、さてさてどうなったでしょうか。

2022年11月

白菜やかぶなど、野菜を塩もみしてジップロック入れておく。玉ねぎはスライサーで切ってタッパーに入れ酢で浸す。これさえあれば、副菜は何とかなる。
今回ふり返ってから知ったこと。玉ねぎの酢のものを、私はずっと「玉ねぎ酢」と呼んでいたけれど、正しくは「酢玉ねぎ」なのね。もずく酢は「もずく酢」で合っている。にんにくはにんにく酢、生姜は酢生姜。(どっちでもいいよ!)

一汁一菜という概念は、私にとってわりと都合が良いものだったけれど、色んな種類の野菜を食べんとする全体の流れが鈍くなり、これだと栄養不足になるのでは? と思うようになった。ひとり暮らしだと特にね。

12月

この頃から作りはじめたのは、5種類以上の野菜を切って煮るだけの野菜スープ。冷蔵庫の根菜をすべて取り出し、包丁で適当にザクザク切っていく。お湯を沸かす。野菜もきのこも、もう、なんでもいいから入れて、少量の塩だけで味付ける。出汁なんて別に取らなくてもいいのだ。味に飽きたら豆乳を加えて、ハンドブレンダーで混ぜてポタージュにしちゃえばいいのだ。

しかし写真を見ると、スープなのに汁が見えなかったり、ポタージュも豆乳の量が足りていなかったりで、見た目がボテボテ、お粥もシャバシャバ。味も安定していません。基礎ができていないのに、柿とカブの甘酒スープだとか、柿と豆腐のポタージュだとか、変わったことをやり始めました。

2023年1月

まだまだボテボテポタージュが続きます。
おそらく色々混ぜすぎなのでしょう。
ちなみに癌の人がとったほうが野菜は、
キャベツ、にんじん、ブロッコリー、トマト、カリフラワー、大根、小松菜、レモン、にんにくです。他にも、はちみつ、りんご、ヨーグルト、きのこ、海藻、たんぱく質も摂らないといけません。
これまで高くて買うことのなかったカリフラワーを、よく買うようになりました。ビタミンも、カリウムも満点。もやし10回買うよりずっといい。

糖質を避けたいところで、お米は田舎から送ってもらった玄米のみを食べる。毎日炊くのがめんどうくさいので、朝のお粥は休日に鍋でいっぺんに炊いて作りおき、酵素玄米は炊飯ジャーに入れっぱなし。ちなみに糖質の多い順番は、
パスタ>白米>うどん>オートミール>玄米>押麦>もち麦。
押麦もたまに玄米に混ぜてみてる。

2月

幸田文さんの本によると、昔節分の日には焼嗅し(ヤッカガシ)という風習があり「蛇も蛙も、菜っぱの虫も何の虫も何の虫も、 来んな来るな」と唱えながら豆を炒ったとあり、見よう見まねでやってみる。玄米で恵方巻きを作ってみるも、一口目からぼろぼろこぼれてしまった。

菊芋と紫キャベツのポタージュの色がやばい。実験的なことをやろうと思っているからではなく、「冷蔵庫のもの何でも混ぜてしまえ」の精神がいけない。ぶどうやラディッシュ、ほうれん草、干しぶどうを食べて、体内環境をアルカリ性にしようと心がける。

3月

色んなレシピ本を読むようになる。玉ねぎ炒めや、なめたけさえ作っておけば、そのままでも、スープ用にきのこ出汁にも使えることを学ぶ。
世の中は、湯水にようにレシピ本で溢れているけれど、私は時短とかじゃなく、レンジを使わない、チーズ、小麦粉、砂糖を使わないレシピがホントありがたい。
レシピ本をKindleで買った場合はスマホにスクショをして溜めていく。ファッション雑誌でいうコーデのコツより、街角スナップショットを見るのがたのしい感覚に近いかもしれない。だから一冊の本で満足できないんだな。

4月

魚を買っても、鰯の生姜煮のいっぺん通りになっている。まぁ、安いから……。のちに鰯のカレーを作ったけれど、鰯とカレーが合うなんてこの頃はまだ知らなかった。

スープ以外のスープ、ポタージュじゃなくても、豆乳味噌、甘酒味噌、甘酒豆乳、酒粕、ほんとうはもっとできるんだよなぁ。

5・6月

初めて梅を漬けた6月。この頃、名古屋へ引っ越しをしました。
もちろん行くスーパーも変わることで「買いがち」な食材も変わる。
ガスパチョばかり作っている。これまで一度も作ったこともなかったのにひとつ覚えで、トマト、きゅうり、パプリカ、レモン、梅酢をミキサーで混ぜて冷蔵庫で冷やす。

毎日、健康的な食事をしている筈なのに、この頃から大腸の調子がわるくなりはじめる。もしかすると食べ過ぎなのかもしれないし、体に合っていないものを食べている可能性もある。体を冷やす食べものは、トマト、きゅうり、なす、バナナやスイカなど、南国の果物だという。

昼食に、おにぎりをふたつとスープを会社へ持って行くようになる。おにぎりの具材は梅ささみが一番好き。梅干し半分に割り、一口大のささみをぼんと中央に入れる。スープジャーにポタージュが入っていると、心のうるおいが増す。

7月

夏の暑さで食欲が落ち始める。とにかく私は美味しく食べた方がいいという一心で、減塩をあまり気にしないようになってきた。

蒸す、蒸す、とにかく蒸す。
豆腐も、鶏ささみも、野菜も、お弁当みたいに、せいろに何でもかんでも詰めていく。豆腐を蒸す場合、普通ふきんを下にひくらしいが、面倒なのでそのまま入れている。
地粉でつくるカレールウ、甘酒でつくるドレッシングなど、白崎裕子さんのレシピを色々作ろうとしているのが垣間見える。地粉は、玄米粉を使う。一年ぶりに食べたパンは中力粉、自宅でフライパンでできてしまう。プリンも砂糖抜きでできてしまう。私はレンジ・オーブンを持っていないし、デザートなんて当分食べられないと諦めていたけれど「なんだ、簡単にできるんじゃん!」と感動。

8月

もずくを毎日食べるようにしているけれど、きゅうりの組み合わせでしか、作ってないことに気づく。そこで「体にいい」と聞いたモロヘイヤ、オクラ、とろろ、納豆、なめこ、じゃこなど、色々ぶっかけて混ぜてみる。気づいたのは、トロネバ系は入れすぎてもあまり美味しくならないということ。組み合わせの妙を知るには、適当に作らずレシピ本通りにやるのがいちばんの近道、賢明なのだろう(でもやらない)。

9月

なんと私は、人生で鶏の手羽元を買う習慣がなかった。「食べにくいし骨だらけじゃん」と思っていたが、ある日、参鶏湯が食べたくなり、買って食べたらジューシーなこの美味しさ。損してた。
ただ、脂質は避けたいところ。
脂質が多いのは、手羽肉>もも肉>むね肉>ささみ
タンパク質をとりたければ、ささみ>むね肉>手羽肉>もも肉の順。
ささみを選ぶべきなんだろうなぁ、そんなことはわかってる、とは思いつつ。

日曜日に、時間をかけて平日のための作りおきを作る。
とりあえず、何をつくるのか決めていなくても、玉ねぎを大量にすっておく。きゅうりは塩でまぶして放っておく。レンコンをピーラーで薄切りにして水につける。これらは何にでも使える子たち。前日のうちに、大豆を浸したりできればなおよし。それから冷蔵庫にある野菜を切っていく。蒸したいものはこちら、焼きたいものはこちら。
にんにくと生姜のすりおろしも、多めにする。余力があれば、ごまを焼いてする。自炊のコツのようなものを、知らず知らずつかんでいるような気がする。

10月

榎本美沙さんのYouTubeを見漁る。写真を見ると、ほとんどそのレシピじゃないかっていうくらい。ゆでたまご、榎本さんは7分、私は8分。黒酢にんにくの味玉、鰹節醤油の味玉を習う。
見ているうちに、塩麹つくるぞ熱が高まる。塩麹、玉ねぎ麹、甘酒、3つ同時に作りたかったので、それぞれジップロックに入れて、炊飯器へ。(同時に入れていいとは、榎本美沙さんは言っていないが、コレ賢くないか?)本当は1時間おきにモミモミしないといけないし「これでいいのかしらん」と思いながらも、寝てる間の8時間放ったらかし。でも出来た。鯖寿司を作った時は、「私、がんばりすぎ。こんなにがんばらんでいい」とは思った。

10月は料理熱に火がついた。思いたって、レバノン料理に挑戦してみたり、栗ご飯を作った。自炊を「プロジェクト化」する、これはこれで別のたのしさ。

11月

山芋とセロリが合うこと、魚のスープは煮込みすぎたらホロホロになり過ぎていかんということを学ぶ。この冬はお魚料理を増やしたい。
ちなみに癌の人が食べてもいい魚は、白身系。
あじ、いわし、さば、さんま、はまち、ぶり。
私、これが覚えられず、スーパーの鮮魚コーナーで毎回検索している。

まとめて買った柿が熟していたので、柿のグリル焼き、柿プリン、柿のポタージュ、柿とバジリコのサラダを作ってみる。私は今まで、柿のポテンシャルを全然活かせていなかったね。

さて、一年経ちました。

私は今でも、出汁を取ることが面倒でたまらない。前日から、前もって準備する、というのができない。要領がわるく、時間もかかる。
でも「私は料理ができない」と思い込んでいたのは、私の中に「出汁はとらなければ味噌汁ではない」とか、「普通の人ならもっと要領よくやっている筈だ」という、思いこみがあったからではないだろうか。

「なんだ、スープって出汁を取らなくても、塩味でいいじゃん」とか、手の抜き加減を覚えていくことで、段々と料理ができるようになっていったのかもしれない。料理が上手になる方法って、逆な工程のような気がするけれど。

家事の面でも、朝食後の皿洗いは「水を流すくらいでいっか」ってことにしたり、焦げついた鍋を湯で沸かす時「一緒に卵茹でちゃえ」とか、私の中で手を抜いてもいいポイント(低いですが、これも知恵)が分かってきた。

こうやって書くと、20年もひとり暮らしをしていながら、ちゃんとした生活をしてこなかったような気がしてくるけれど、そんなこともない。その時はその時で、料理もままならないくらい疲れていたし、切羽詰まってもいた。今思うと、ただ、手の抜き加減を分かっていなかっただけのように思う。

自炊ご飯、約一年。
自分でもびっくりしたのは、以前は「明日、どこ行こう〜」だった休日の前日、最近じゃ「明日、何つくろう〜」って気持ちでいっぱいになっている。今日なんて、料理の最中、無意識で鼻唄なんて歌っているし。これはもう「自分は料理好きになった」と、言っていいのではないか? まぁ、でも料理って好きとか嫌いとかじゃねえのかもなぁ、とも。

私の自炊生活はまだまだ続きます。
がんばりすぎずにがんばろう。


フォトギャラリーにあります。どうぞご飯日記サムネにお使いください。

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