美術館での親子

私は、美術館に行くのが好きで興味のある展覧会を見つけては、休みの日に一人でもフラフラと気ままに見に行ったりしている。人といるのは苦手な訳ではないけれど、気を使うから一人の方が気ままで好きなように動けるから。

少し前に子ども向けのある有名な絵本の展覧会を見に行った。
実はあまりきちんと読んだことのない絵本だったけれど、展覧会自体もとても可愛くて、本当にその絵本の中に入ったかのようで、素敵だった。

帰りにいつものようにミュージアムショップにてクッキー、文房具、Tシャツなどグッズを一通り見回った。Tシャツを買うか迷ったけれど、普段の自分には合わないかも、と思い留まって、ひとまずは絵葉書を買うことにした。イラストが可愛いこともあって、周りのみんな何枚も持っていて、色々手にとっては自分の好みかどうかを真剣に見極めている。
私は買うのは大体いつも2〜3枚。特に決めている訳ではないけれど、本当に気に入った物を自分で厳選していくとそれぐらいに落ち着く。みんなと同じく、私も”これ可愛い!あ、でもこっちも可愛い!”なんて心の中で思いながら選んでいると隣の親子の会話が聞こえて来た。

「これ可愛い。でも、こっちも可愛いな。」と高校生か大学生くらいの女の子が絵葉書を見ながら言うとお母さんが「そうね、どれも可愛いね。」と女の子の側で優しい口調で頷いていた。「あのヘアゴムも可愛いじゃない?」ってお母さんが女の子に提案をして、2人でそれを見に行く。でも、やっぱり女の子は絵葉書かな、とまた元に戻って選び始めた。今度は「お母さんはどれが好き?どれが可愛いと思う?」と聞いて、決められない様子で「このイラストのここが可愛いと私は思うんだけど。こっちも可愛いの。」とお母さんに数枚を見せていた。それを聞いてお母さんは「そうね。可愛いね。2枚でも好きなの買って良いよ。」と一言そっと言った。

2人の側で私はそれを見ていて、なんて可愛いんだろうっと思った。その女の子の話し方や仕草がぶりっ子している訳ではなく、自然でふんわりしていて、この子はいつでもこんな風に穏やかに話すんだろうな、お母さんのことが大好きなんだろうな、と。そして、お母さんの「こうしなさい。こっちの方が良いよ。」とも言わず、もちろん興味がない訳ではなく優しく微笑んで話を聞いているあのそばで優しく立っている姿がずっと忘れられない。きっと女の子は、自分が好きなものは決まっているのだろうけど、お母さんはどれが好きなのかただ知りたかったのかもしれない。一緒にどう思うかを言い合って、一緒に選びたい、と思っていたのかもしれない。

私は普段は、一人で映画にも行くし、カフェでも行くし、もちろん美術館も行くし、なんならイベントなんかも参加したりすることもある。
でもその親子を見て以来、あの親子を思い出すたびに、誰かと一緒に何かをしたくなっている。全てを人と一緒にする必要はないけれど、誰かと一緒に何かを共有することは素敵なことなんだと改めて思った。

「どう思う?どれが好きでどれが嫌い?」なんて素直にその人のことの考えていることを知りたいし、知って欲しいって思える誰かと一緒に。

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