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今月読んで面白かった本【2022年4月】

今月からカジノでポーカーテーブルのオーガナイズを始めたので、一日の大半をポーカーで過ごす生活に舞い戻ってしまったため、前月よりも読了はグンと減った。けれど、コツコツと読んでいる。

THINK AGAIN 発想を変える、思い込みを手放す(アダム・グラント)

アダム・グラントの新刊。テーマは「考え直すこと(再考)」について。メッセージングとして、シンプルにアンラーニングを促すことのみならず、人間の内に潜む「牧師」「検察官」「政治家」のモードを峻別・解説しながら、より善く生きるための”柔軟な思考”の手に入れ方を詳述していく。

私たちが学ぶのは、自分の信念を肯定するためではない。学びの目的は、信念を進化させることなのだ。

心理学者によると、情熱はたいてい、「発見するもの」ではなく「発達させていくもの」だという。起業家を研究したところ、新事業の立ち上げにいっそう奮励した人は、事業に対する熱意の度合いが毎週高まっていった。躍進を遂げ、精通度が高まるにつれ、情熱も増していった。

情熱は「発見」するものではなく「発達」させるもの。これ超真理だと思う。ぼくが常々言ってる「知ってから動くではなく、動くから知れる」に通じる考え方で深く共鳴した。

同志少女よ、敵を撃て(逢坂冬馬)

本屋大賞受賞作。独ソ戦争で実際に従軍したという女性狙撃手が主人公の小説。読み応えが物凄い。

倫理を反転させてしまう戦争の理不尽さ、生きることの意味が脆く移ろっていくことの恐ろしさ。命の奪い合いの最中、両陣営で暮らす無垢な人びとのリアル。タイトルの“敵”に込められた意味は、きっと読者自身で探さなくてはならない。

「悲しいけれど、どれほど普遍的と見える倫理も、結局は絶対者から与えられたものではなく、そのときにある種の『社会』を形成する人間が合意により作り上げたものだよ。だから絶対的にしてはならないことがあるわけじゃない。戦争はその現れだ」

ぼくは読書をする意味を知識を得ることではなく想像力を拡張することに置いているので、こうした作品に巡り合えることは大きい。まずはソ連の厳冬の貧困であったり田舎の村の暮らし、戦争という理不尽に運命を翻弄されること、人種間の殺し合い。歴史上、実際にあったこと、そして大なり小なり形を変えて今も現存しているかもしれない事柄に想像が及び、自分の狭隘なイメージに揺さぶりがかけられる。ありがたい。

世界2.0 メタバースの歩き方と創り方(佐藤航陽)

幻冬舎・箕輪さんが編集段階から積極的に宣伝されていたため、発刊を心待ちにしていた。期待していただけあって、やはり面白かった!

とくに第三章「世界の創り方 II【生態系】」が出色で、カルピスの原液的な、研究者/求道者としての佐藤航陽さんの切れ味鋭い解析と言語化が炸裂してる。終章に書いてあった「知ることは、創ること」に佐藤さんの人生哲学が凝縮されてた。

「知る」と「理解」の間には距離があるが、その先に「理解」と「創造」が地続きになっている生き方は素敵だと思った。

フリーエージェント社会の到来 ---組織に雇われない新しい働き方(ダニエル・ピンク)

20年前の預言書を再読。今の時代を生きる自分が読むからこそ、ロジックの精緻さ、時代の最先端を言語化するライティング技術の高さに脱帽するしかない。自らの生活実感の変化から、社会に起こる地殻変動を喝破し、取材とリサーチをベースにこの一冊を書き切ったことに敬服する。

フリーランスという働き方自体は、最近になって生まれたものではない。作家や芸術家、写真家といった人たちは、昔からフリーランスを名乗ってきた。そもそも、フリーランスという言葉と発想は中世のイタリアやフランスの傭兵部隊にさかのぼる。傭兵たちは、報酬が納得できて、戦いに意義を認めることができれば、どの君主の旗の下でも戦った。このシステムがイングランドに伝わると、傭兵は「フリー・ランス(自由な槍)」と呼ばれるようになった。忠誠心や主従関係から自由な騎士という意味である。お呼びがかかれば、槍を持ってどこへでも飛んでいくというわけだ。

語源を知らなかったので、面白い。

『フリーエージェント社会の到来』があまりに面白かったものだから、勢いに乗じてそのまま『ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代』も読んだ。徹頭徹尾、未来を先取りして文脈づけること、自己成就的に世界をその方向に導くことがピンクの姿勢。自ら先端事例を体験しながら言葉に落とし込んでいく。キーワードはデザイン、物語、調和、共感、遊び心、生きがい。

知覚力を磨く――絵画を観察するように世界を見る技法(神田房枝)

実際の絵画をトレーニング教材を用いながら、思考の前段階にある“知覚”力を鍛える構成のめちゃ実践的な読書。知的生産においては“思考力”に比重が置かれがちだけれど、まずは知覚の質を上げることで、結果として思考ひいては実行力のクオリティも上がる。

人間の知的生産には、「知覚→思考→実行」という3つのステージがあります。 眼の前の情報を受容しながら解釈を施し(①知覚)、それに対して問題解決や意思決定をしたうえで(②思考)、実際のコミュニケーションやパフォーマンスに落とし込んでいく(③実行)。

知覚とは、自分を取り巻く世界の情報を、既存の知識と統合しながら解釈すること。

ジェフ・ベゾス 発明と急成長をくりかえすアマゾンをいかに生み育てたのか(ブラッド・ストーン)

『果てなき野望』の続編。Amazon自体の事業進化はもちろんこと、ブルーオリジンやワシントンポストまで、ベゾスを取り巻く全容に詳細に分け入っていく。不倫騒動からマッケンジーとの離婚以降、ベゾスの人となりが明らかに変質し、時間の使い方が変わった点が興味深かった。

「フェンス越えを狙ってスイングすれば三振も増えますが、ホームランを打つこともできます。そして、野球と事業には違いがあります。野球は、得られる成果に限界があります。すばらしいスイングができても、多くて4点しか得られません。対して事業の世界では、1打で1000点を得ることも可能です。成果が長く伸びるロングテールでは、大胆な施策が重要となるのです」

25年あまりをかけ、ベゾスは、新しく登場したウェブなる仕組みで本を売るというアイデアを追求した。そして発明に発明をくり返し、技術をとめどなく取り入れ、情け容赦がないと言えるほどレバレッジを追求し、世界に君臨する帝国をつくり上げた。その時価総額は1兆5000億ドルを超えている。

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今回は6冊だけ紹介しましたが、今月読んだ本のリストは以下です。すべての本は読み終わったあとに、ツイッターブクログで一言の感想をつけてログを残しています。

ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代(ダニエル・ピンク)
アマゾンの倉庫で絶望し、ウーバーの車で発狂した~潜入・最低賃金労働の現場~(ジェームズ・ブラッドワース)
ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか(酒井隆史)
いつもの言葉を哲学する(古田徹也)
ボックス!(百田尚樹)
起業家の思考法――「別解力」で圧倒的成果を生む問題発見・解決・実践の技法
ブチ抜く力(与沢翼)

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