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具体と抽象|細谷功

対象

・意識的に具体と抽象を往復して考えることができない人
・往復できない人とのコミュニケーションで課題感がある人

要約

可逆的に増殖する「わかりやすさ」
社会や組織が「成熟期」になると「わかりやすさ」が求められます。このようなフェーズでは連続な変化は起こせても破壊的にそれまでの弊害をリセットすることが極めて難しくなります。ところがそんな「成熟期」だからこそくるべき「衰退期」に備えて「抽象概念」を扱うという能力が不連続な変化を起こすために今後必要になるでしょう。

具体・抽象 とは

▽ 具体
特徴:実態と直結・個別対応・自由度が低い・応用が利かない
実務:実務家・短期的・結果の判断が用意
必要となるシーン:安定期(改善していくフェーズ)
価値観:部分分割・組織・多人数・効率性・多数決による意思決定
学問:工学

▽ 抽象
特徴:実態とは一見乖離・まとめて対応・自由度が高い・応用が利く
実務:学者・長期的・結果の判断が困難
必要となるシーン:変革期(コアの創生フェーズ)
価値観:全体把握・個人・少人数・創造性・個人での意思決定
学問:理学・数学・哲学

議論がかみ合わないのはなぜか
「どのレベルの話をしているのか」という視点が抜けたまま話が進んでいないでしょうか。「変えるべきこと/変えないこと」の線引を抽象度に応じて切り分けることで論点が明確になります。話がコロコロ変わると感じる人は具体と抽象で本質を捉えられていない場合が多いです。

抽象化の弊害

1.  概念が固定化されることで偏見や思い込みから、判断を狂われる
2.  表面事象でしか捉えられない人に苛立ちを感じる
3.  野生の行動力を失い、考えこんでしまい行動に起こせなくなる
4.  客観視の姿勢が主観的な感情と衝突して自分中心の行動を阻害する

哲学・理念・コンセプト
具体の世界だけで生きているとひとつひとつの事象に振り回されます。「哲学」があればそれらの事象すべてを抽象度の高い判断基準に合わせて処理できるので「ぶれ」が少なくなります。大きな目標があって個別のアクションが有機的につながり「個別の無機質」な行動が意義と繋がりを持った生きた行動になっていきます。
抽象度が上がるほど客観性が増すため感情への訴えが少なくなります。しかし、人間が個人レベルで行動するのは感情によるため、集団で目的を達成する場合でも感情への訴求が不可欠です。そのような場合に具体例や体験談がひつようになります。コミュニケーションにおいては具体と抽象をうまく往復しましょう。

抽象化を妨げるものはなにか
高い抽象レベルを持っている人ほど異なる事象が「同じに見え」、低い視点の抽象レベルの人ほど「違って」見えます。このような思考回路の弊害になるのは「自分だけが特別」という考えです。このような人は他人に自分の話を一般化されることを嫌う傾向があり、具体の世界しか見れていない人ほどその傾向が強くなります。これらは多様多種な経験を積むことはもちろん、読書や映画鑑賞などによる疑似体験で視野を広げることができます。

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