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すべて忘れてしまうから。

年初めに、
「今年は毎月1冊以上は本を読む!」といって早くも4ヶ月経った。

1月に1冊読み終えてから2冊目を読み終えるのに2ヶ月半ほどかかった。早速目標を達成できていない(笑)なんなら今回紹介するのは去年から読み始めていたものだからすごい時間がかかっている。でも時間をかけてでもしっかり読みたいものだったからそれはそれでいいのかも。

そんな今回紹介したい本が、燃え殻さんの『すべて忘れてしまうから』(新潮文庫)。

Xで紹介されているのを見て気になっていた本。読んですぐ「紙で買ってよかった。何度も読み返したいな」と思った本だ。

そう思わせてくれたのは、文章の内容が”生々しい”からなんだろう。
「こうでなきゃいけない」と強制されるものではない、かといって過度に悲観的だったり斜めに見ているばかりでもない。

人生の中で葛藤とか苦悩を感じさせながらも、それでも生きていくことを選んでいる、そんな表現がたくさん詰まっている本だった。

印象的なフレーズを少し紹介したい。

「逃げて逃げて今がある。他人に誇れる今かは、よくわからない。ただ自分自身には何もなかったよちはよかったじゃないか、と言い切れる今がたしかにある。」

「ネットで拡散されやすいものは分かりやすい。わかりやすいものは、どこか極端だ。本当は、日々のほとんどはグラデーションの中にある気がする。(中略)まだ名前のついていない感情と出来事に囲まれて、僕たちは生きている。」

「ここではないどこか、僕じゃない誰かに時々思いを馳せることがある。」

心の中ではなんとなく思っていても、それを言葉には出来ていなかったことを的確に表現してくれている。言葉にならない思いの代弁者といっても過言ではない。

やっぱり言葉にできない思いは不安だ。でもこうやって言葉に、かたちにしてくれることで存在が認められ、落ち着きが与えられる。

何よりタイトルがいい。

「すべて忘れてしまうから」


こういった悶々と抱えている思いとか悩みとか、人からの見られ方とか綺麗ごととか立場とか。日々いろんなものを抱えて私たちは生きている。

だけど死んだとき、それを持っていけるわけじゃない。
すべて忘れてしまう。何も持っていけない。
なんかちょっと寂しさもあるが、その分今をやり切るしかないんじゃん、という意味では何だか救われる。


そんな気持ちにさせてくれる、おすすめの本です。


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