見出し画像

運命を決める1枚の紙、14000km 94日間の旅を経てようやく届く

僕はその紙がどうしても必要でした。途中、もう届かない、失くされたかもしれない、と何度も諦めかけました。でもその紙は14000km、94日間の旅を経てようやく届きました。

そう、その紙は僕の戸籍謄本です

僕は、現在フランスに住んでいてフランス人と籍を入れる手続きを進めてます。そして、昨日ようやく僕の手元にその1枚の紙が届いたのです。この紙がないと、結婚の手続きを進めることが全くできなかったのです。フランスでのVisaが切れる前に手続きを終わらせなければならないし、とても焦っていました。朝晩、郵便ポストをチェックして「まだか、、、」と呟いていました。


なぜ14000km、94日の、距離と時間が必要だったか


フランスでフランス人と籍を入れる際は、日本人側が本籍を置いている市役所発行のオリジナルの戸籍謄本が必要になります。でも、それだと日本語のままだし他国で使えるように有効化する必要があります。そのために、霞ヶ関にある外務省で公印(アポスティーユ)を取得しなければいけません。僕は、沖縄出身なのでまず両親にお願いして、まず沖縄の僕の本籍がある市役所で戸籍謄本を取得し、東京まで公印をもらいに行ってもらいました。そして、両親は沖縄に戻ってそこから僕が住んでいるフランスの北の街ルーベの住所宛にその書類を送ってくれました。その時期が二月の半ばで、世界的にコロナウイルスが流行し始めた時でした。普段は1、2週間で届く手紙も、この予想外の状況で大幅に遅れることになり、その手紙は2月後半、3月になっても届くことはありませんでした。どこに問い合わせていいかもわからず、どこかで紛失されたかもしれないとも思い始めていました。ほぼ諦めかけていた四月の1週目にふらっと郵便ポストを開けると、届いているではありませんか!!

この時点ですでに約2ヶ月以上経っていました。届いたのはいいものも、まだ安心するには程遠いです。なぜなら、この戸籍謄本をパリにある在仏日本大使館でフランス語に翻訳してもらわないといけないからです。その時点(4月)でフランスは、コロナウイルスの大流行で厳格な外出禁止が敷かれていました。もちろん、僕は遠方に住んでてパリまでいけないしどうしようかと、とりあえず大使館に電話すると、今回は特別に郵送で書類を送ってもいいとの許可をもらいました。しかし、受領は来館のみということでした。つまりフランスでコロナウイルスの状況が落ち着いて、外出禁止が解けたら自分で取りに来い、ということです。

僕は一度郵便物を無くされたことがあるので、フランスの郵便システムを全く信用していませんでした。ましてやこの情勢だから、なおさらです。仕方ないや、と思いながらその書類を大使館宛に送りました。案の定、フランス国内での郵送にもかかわらず10日ほどかかって大使館に僕の書類が届きました。無事にフランス語に翻訳もしてもらったので、あとは受領のためにパリにある大使館を訪れるだけでした。

そして、5月11日にフランス本土での外出禁止が解かれたので、その日の早朝に、4時間のバス(往復8時間)に揺られてパリに行ってきました。無事に手紙を受け取った時には、嬉しさと謎の感動で手が震えていました。

やっと、結婚の手続きが始められる!!!

そして翌日、ようやく僕の住んでいる街ルーベの市役所に行って籍を入れるための手続きを始めてきました。


画像1

(観光客のいないパリの凱旋門、大使館行くついでに寄って行きました)




この1枚の紙の大冒険をもう一度具体的な距離、数字で振り返る。

沖縄→東京 1584km

東京→沖縄 1584km

沖縄→ルーベ 10424km

ルーベ→パリ 242km

パリ→ルーベ 242km

なんと距離にして14076km、94日にもなる。僕の今後の人生を左右するこの一枚の紙切れが、この大冒険を経て僕の手元にようやく届いたのである!旅の途中で誰かに紛失されたり、迷子になったりする可能性もあったかもしれない。ましてやいくつもの国境を超えているから、その可能性は必然とたかまる。いやー本当によかった、無事に僕の元に届いて。

いや、待てよ。

もしこの全ての過程が電子化されてたら5分で済む作業じゃね?


そしたら、ここまでハラハラしなくてよかったんじゃないか。もっと迅速に手続きを進められたのではないか。この紙切れ一枚のために両親は東京に行っているし、僕も田舎からリスクを犯してパリまで行かなければならなかった。

でももし、日本フランス両国がインターネットで本人確認、個人情報を管理できるようなシステムを取り入れていたら、その必要もなかったはずである。

つまり、僕が主張したいのは 

脱紙文化   

である。

特に僕のような沖縄出身で地方に住んでいるものは、この紙媒体至上主義なるものに何度も振り回されている。全ての機能が首都に集中しているので、国際的な手続きがある場合には、地方のものは必然的にそこに行かなければならない。僕は、イギリス、フランスのワーホリの手続きの時にも東京に行かなければならなかった。ここフランスでも同じことである。僕は地方のルーベという街に住んでいるので、パリに行かなければならなかった。

いくつかの書類、言い方はよくないがただの紙切れのために、である。


紙をデジタル化する

紙をデジタル化する、ペーパーレス化するというのは今の時代にあった、論理的な戦略だと思う。コロナウイルス対策として、全世界でテレワークを導入する企業が増えている。その導入の障壁となるのが、業務で使用する紙の帳票や文書の存在だと思う。社内に保管しなければならない紙文書の閲覧や、紙文書への押印のためだけに出社するといった事態が起きている、ともニュースの報道で見た。また紙媒体は検索性が悪くて、必要な文書を探し出すのにも莫大な時間がかかると思う。情報を管理する、保護するために重宝されてきた紙媒体が逆に、人の足を引っ張り始めているのである。もしこれが全てデジタル化されていたら、自宅でもどこでも簡単にアクセスすることができる。もちろんそれは、セキュリティ、プライバシー面の確保が伴ってようやく成り立つものだとも思う。ワーホリや、国際結婚に関する書類も是非ともデジタル化してもらいたいと心から思う。

まとめ

僕の手元に届くまでの1枚の紙切れが費やした14000km、94日という距離と時間は、コロナウイルスの状況下、アフターコロナにおける紙媒体至上主義のリスクや問題を浮き彫りにしたと思う。特にテレワークなどが主流になりつつある現在は、紙文化から脱却していく必要があると思う。このような状況だからこそ、人・モノの移動をできるだけ最小化して、インターネットからアクセスできるようにするべきだと思う。


追伸

フランスでようやく結婚式の手続きに着手できたが、これからもっと長い道のりになりそうだ。ここで無事に籍を入れれても、日本に戻ってまた他の書類の手続きがあるし、まだまだ安心するには程遠い。紙に振り回される日々はまだまだ続きそうである。

この記事が参加している募集

読書感想文

あなたのサポートで新しいことに挑戦して、またnoteでシェアしたいと思います!ありがとうございます!