自分で自分を傷つける話。

この時期はとてもセンシティブなのです。

中3のときの主治医の先生に教えてもらったことから始めたい。
ストレスというのは身体化ストレスと行動化ストレスに分けられるという。身体化ストレスとは、身体症状として体に現れるものを指す。例えば、頭痛、腹痛、発熱など。

行動化ストレスは文字通り行動に現れる。そして、それは2つに分けることができる。
ひとつは他進タイプ。怒りが他者に向かうタイプ。暴れるとか、物を壊すとか。いわゆるヤンキーみたいに、攻撃性が自分以外に向く。
もうひとつは自進タイプ。ストレスが自分に向かうタイプ。リストカットやODなど、自分を傷つけるものが該当する。

さて、私の話。
私は身体化ストレス(自律神経失調症)と行動化ストレス両方が現れているわけだけれども、行動化ストレスについては完全な自進タイプである。

ボディカット、OD、抜毛、身体を引っ掻く、壁に頭を打ちつけるetc
わりと色々やってきたけれど、いちばん長く続いているのはボディカットだ。

「リストカットは伝染る」という言葉を聞いたことがあるけれど、まさしくその通りだと思う。
リストカットを始めた当時、私のまわりには既に数人はリストカッターがいた。
そういう人たちの痛みを理解したくて、という偽善的な理由が私の自傷の建前の動機だった。
本音は、当時家庭にもクラスにも部活にも課外活動にも自分の居場所が見いだせず、日に日に悪くなっていく体調が恐ろしくて救いを求めていたのだと思う。

最初はさすがに怖くて、ためらい傷のように、細くて赤い線がうっすらと手首に走るだけだった。次第に痛みを欲して、たしか5~7箇所、できるだけ深く切ろうとしていた。その頃は1日に5回は切っていた気がする。
切りすぎると、かえって血が出なくなる。痛みは得られても血が出ないことに不満を感じた私は、狭い範囲に深い傷をつけるやり方から、広範囲に浅い傷を無数につけるやり方に変えた。もはやリスカとあうよりアムカ(アームカット)だった。
手首からはどろりとした赤黒い血液が溢れて、ぼたりと落ちた。手首一面、真っ赤な海だった。
左手首だけでは飽き足らず、右手首にも傷をつけることがあった。カッターじゃなくてハサミで切ることもあった。

広範囲に傷があるから、上からテーピングで隠していた。それでも当然目立つ。
担任に呼び出されて怒られたこともあった。
それでも私は自傷がやめられなかった。

手首という目立つ場所に傷をつけるのは、お守りであり、罰の証だった。
自分が不手際をしないように、先に罰することで自分を牽制していた。自分に傷をつけたから、罰を与えたからきっと失敗しない、大丈夫だという精神安定剤のような役割も担っていた。
見える場所に傷があることが大事だった。

中学を卒業して高校に上がっても、私の自傷はおさまらなかった。まわりで自傷していた人達はみんな病気が治ったみたいにさっぱり自傷から足を洗ったのに、私は取り残されたみたいに切り続けていた。
高校という新しい環境に身を置いて、ストレスフルな状態が当たり前ではなくなったことで、中学時代を思い出すことがかえって苦痛に感じられた。
中学時代に比べると頻度は落ちたものの、傷の範囲と程度はますます広くなった。
リストカットは入学早々にクラス中に露呈し、女子からは煙たがられ、男子からはあからさまに気持ち悪がられ、キモい、メンヘラ、さっさと死ねと言われた。まぁ自業自得なんだけど。

それでも切ることで正気を保っていた。
都合の良さから担任に行事の実行委員にまつり上げられても、家の中で父とうまくいかなくても、上位大学合格という半不登校には重たすぎる期待を押し付けられても、切ることで乗り越えた。

痛みというのは、私の輪郭をつくってくれる気がする。
人に迎合しやすい私の、形というものが自傷の痛みによってくっきりわかるのだ。
そうすると安心する。

話は逸れるが、私は性行為は本当に苦手なのだけれど、唯一ある性的な(?)願望が、痛めつけられることである。
痛いのが気持ちいいドM、ということではなく(ひょっとしたらそういう側面もあるのかもしれないけれど)、自分が傷つけられて、酷く扱われることで、「あぁ、自分は所詮このこの程度の扱いしかしてもらえない人間なんだな」とうぬぼれないように、自分の立ち位置を確認して、そうして安心したい。自分の輪郭を確認していたい。

傷の位置が左手首から左肩~二の腕に移動したのは、高2の秋頃だった。諸事情で、学校外のコミュニティで半袖のワンピースを着なくてはならなかったので、私のことをあまり知らない人にドン引きされるわけにはいかない!と思って手首を傷つけるのをやめた。私にも世間体なるものが残っていたのだなあと思った。
けれど、切らないとどうにかなってしまいそうだったから、見えないところに傷をつくった。
服を脱がないと切れない位置なので、切るのが億劫になって切る頻度が下がった。

左肩(腕)は今でも時々切っている。
数週間~数ヶ月置き。
大学に入って、良くも悪くも私の体調や精神面のことを知っている人がほとんどいなくなったので、弱音を特定の相手に軽々しく吐けない。だから、自分に不安をぶつけるしかない。
それでも、薬を飲んだり気をまぎらわせたりして、だいぶうまく自傷衝動をコントロールできるようになった。成長。

私、いつまで自傷し続けるんだろう。
一度、半年くらい間が空いたことがあって、その時は自傷やめられた!やった!!って思ったのに。
きっと、「今日は切らなかった」「1週目切らなかつた」「1ヶ月切らなかった」って毎日はらはらしながら積み重ねていって、そうしてようやく「切らなかった」が「切るのをやめた」になるんだろうな。

気が遠くなりそう。

大学の部活(文芸部)の学祭本で、リストカットのシーンを書いたので、自分の内面を言語化してみました。
全部じゃないけれど、こうやって時系列でまとめたのは初めてかもしれない。頑張った。

明日は大学行けるといいな。

↑主治医の先生に教わったことをまとめた、中3の私のメモ。

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