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自由と幸せ。

オランダの魅力は、なんと言っても自由である。


大麻、キノコ、売春、同性婚、安楽死など、日本では考えられないようなことが許されている国、それがオランダなのだ。

アムステルダム駅で電車をおり、僕たちは街の隅々まで歩く。
途中、水が飲みたくなった僕はコンビニエンスストアに入った。
中に入った僕の目に最初に飛び込んできたのは、大麻食品ときのこだ。
日本でコンビニエンスストアに入り、少しお腹が空いたからレジ横に置いてある豚まんを買おうということと同じように、ここオランダでは大麻ときのこが買えてしまう。
小中学生の頃に受けた学校での教育は、大麻は絶対にダメ、それ以外の薬物も一度手を出すだけで人生が壊れてしまうというふうに教えられてきた。
でも本当にそうなのだろうか。
ここにはそこらじゅうで大麻を吸っている人がいる。サイケデリックなアートがたくさん売られている。飾り窓と呼ばれる売春場にもたくさんの人間が入り浸っている。
運河にかかる橋で水を飲みながらそんなアムステルダムを眺めていると、
僕はいったい世の中の何が正解で、何が不正解なのかが分からなくなってしまった。

アムステルダムのカフェから


僕がその人間たちを観察していて思うことは、皆楽しそうだということだ。
オランダにいる人間は、みんなとても幸せそうなのだ。
何が僕にそう思わせるのかは分からない。
でも本当にみんな、幸せそうなのである。

アムステルダムの運河を眺めたり、公園を散歩したりしていると、ここは本当に綺麗な街だなぁと思う。パリに訪れた時も、この街は綺麗だなぁと思ったが、それは建物が美しくて綺麗な街だなぁという意味であり、パリには治安が悪いと感じる場所が結構あってそれは街としてマイナスだった。
その点、アムステルダムは治安の心配をすることはほとんどない。それに加え建物も美しく、緑も多い。その緑たちは全て綺麗に整備されていて、
本当に心地が良い。
緑とは、アムステルダムの中心にたくさんある公園のことだが、どの公園も本当に綺麗で、いつでもどこでも寝転がれるようになっている。そんな綺麗な公園では、女子会をしている人や昼寝をしている人がたくさんいて、そういった光景を見るだけでも、何か人生の豊かさのようなものを、僕は感じるのだ。

アムステルダムのどこかの公園から。

こんなふうなオランダの、自由を認める空気感には、人間が幸せに生きるためのヒントが隠されているのではないかと、僕は街をぶらぶらと歩きながら思った。
2022年の国連の調査によれば、オランダ人は世界で5番目に幸せな国民であり、若者の80%が幸せであると答えている。そして高齢者はなんと91%もの国民が幸せであると答えている。一方で、同じ国連調査で日本は何位かというと、56位である。これは先進国の中ではトップクラスに低い順位だ。
日本の順位がなぜそこまで低いのかという要因は、主に「自由度が少ない」ということらしい。多様性が認められていなかったり、選択の自由が与えられていない。そういったことが、国民の幸福度を下げてしまっているそうだ。幸福度が高いオランダはその逆で、「自由度が高い」ということだ。
そしてもう一つは、「温かい人間関係」というものを持っているということだった。

「温かい人間関係」というのも、人間の幸福度を左右する大きな要因の一つだともこの調査では分かっており、この点に関しても、日本の順位は低い。
東京に一極集中し、そこではもっと働け、もっと勉強しろ、もっと稼げというような不安を、毎日のように煽られる。その結果そこで生きる人間はどうなったか。孤独感が強くなったのだ。
また、
綺麗な木と芝生と池がある公園で、家から持ってきた食べ物を囲んで女子会をする人と、両隣には自分よりお洒落で可愛い服を着た人が座っている丸の内のテラスカフェに2時間も並んで入り、そこで撮った写真をインスタグラムにアップし、いいねの数に一喜一憂する女子会。
満員電車に揺られ、チェーン店ばかりになってしまった人で溢れ返った街中を歩くデートと、どこへ行っても人との距離があって、自然のなかに個人店がたくさんある街中を歩くデートなど。
どちらが人間にとって幸福なのだろうか。
僕はこの場所で、自分になりの答えを見つけることができた。


自由度が感じられないというのは、同調圧力や村社会文化などの社会問題であり、幸福を感じられない現代の日本人個人の責任ではないと僕は思っている。
そんな日本に長くいると僕は圧迫感のようなものを感じることがあり、そうなったときはすぐに外へ出るようにしている。海を越え、全く違う文化と生活感を持った人間と関わることや、ただ日本とは違う国の雰囲気を感じることで、ふと、それまで持てなかった未来への希望のようなものが見えてくることがあるからだ。これが僕が海外へ旅に出る理由の一つであり、旅をすることの大切さを伝えたいと思う理由の大きな一つなのだ。

21時50分、ようやく太陽が沈んだ。
まだ少しオレンジ色が残る西の空と、すっかり暗闇になってしまった東の空の間には、アムステルダム国立美術館がある。これまで様々な建築物を見てきたが、僕はこのアムステルダム国立美術館が一番美しいと思った。美術館の前から伸びる真っ直ぐな道やその道を囲む木や建物、そういったものが作り出すこの場所の風景は、完璧だと思う。こんなにも去ることが寂しく感じた国はこれまであっただろうか。
アムステルダムを訪れ、インターネットにも観光雑誌にも載っていない本当の街の魅力は、その街に訪れた者にしか分からないなと、僕は思った。

アムステルダム国立美術館





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