見出し画像

酒に望むもの、スポーツに望むもの。~寳劔秋あがりを飲みながら(後編)~

どうもこんばんは、りょーさけです。
眠りの重さが尋常じゃなくなってきました。休みの日になると食べてる時以外眠気がとんでもない激烈な形で襲ってきます。

質もまた深し。一回の眠りで3つくらいの短編夢を見るようになってきた…。

夢があまりに多いと一部が現実と混じって何が本当の情報なのかが分かりづらくなってきます。
何年もあってない知人に夢で会うと、それでちょっと満足する自分がいます。
こうやって寂しさを紛らすすべを無意識レベルで獲得していくのが人生なのか。

いや、違うか。

ということでスポーツマンガ&寳劔の後半ですね。

この後編で僕が総じていいいたいことは一つです。
「酒もスポーツも、一つのこだわりや倫理観を貫こうとすると破綻する」。これです。

(問題点をもっとはっきりさせるためならこういいます「ある一定の思想的な立場から全く違う立場のモノを否定する態度は生産的ではない」と)

どういうことなのかを主にスポーツマンガ側を例を出して話していきます。

それにしても何度でもいいますが、寳劔は素晴らしいです。
この間は感じたまろみのあるアルコール感が少しばかり引いてまた開けたての頃のみずみずしい葡萄香が戻ってきました。ま、多少は私の体調の影響もあるかとは思いますが笑
全体的にとてもフレッシュ&落ち着きの一杯です。

例えばもともとゴツめの風味のお酒が好きな方がこのお酒に「へぇ、パンチがなくてつまらないね」ということにどれだけの意味があるのでしょう。考えてしまいますね。

さて、マンガの話でした。
前回もいろいろ断片的に紹介しました。今回は主に『スラムダンク』と『ダイヤのA』、『ハイキュー!!』でお話をしたいと思います。

では早速。「ある一定の立場から全く違う立場のものを否定する態度は生産的でない」を説明しましょう。

『スラムダンク』は言わずとしれたバスケットボールマンガの金字塔デス。赤髪の主人公桜木花道が全く初心者の状態から高校バスケットを始め、個性豊かなチームメイトと共にインターハイの全国制覇を目指す物語。

主人公以外にも特徴的なチームメイトがたくさん出てくるのですが、今回取り上げるのは桜木所属する湘北高校のキャプテン赤木剛憲です。通称「ゴリ」。

圧倒的な努力量と熱意でバスケットボールを極めんとするキャラクターです。ゴリが実に真面目で規則正しい人間なので、元不良の桜木の教育係的な立ち位置も占めています。

彼は桜木が入部してチームメイトが充実するその年まで「チームメイトに恵まれていません」でした。頑張るも頑張るもチームメイトがついてこなくて空回り。自分が自主練を重ねる中同級生とのおしゃべり(しかも自分への陰口)に興ずるチームメートを投げ飛ばすシーンなんかもあります。をその熱情故に副主将の小暮くん(通称「メガネくん」)以外はやめてしまったようです。後に一人戻ってきますが。

自分一人頑張るほどに周りとの温度差は感じるものです。

で、ここでもうひとり主将を紹介しましょう。『ハイキュー!!』に登場する烏野高校男子バレーボール部主将の澤村大地です。湘北高校と引けを取らず個性的なチームメートたちを統べる彼に「大地」という名をつけた作者のシンプルかつナイスセンスなネーミングにいつもすごいなと思います。

彼は強豪と言われていた烏野高校に憧れを持って入部しました。烏野高校は彼が入部する少し前一人の小さなエースの活躍で全国大会にまで出場し日本中に名を轟かせた高校だったのです。ところが日が経つごとに感じる理想と現実の差。実は烏野高校にはその後幾多の逆風が吹き「全国制覇」を真正面から目標に掲げられるような状態ではなかったのです。

しかし彼はめげなかった。周りが自分たちを「落ちた強豪、飛べないカラス」と呼ぼうが密かに闘志をたぎらせてチャンスを待った。そうして自身がキャプテンになった三年生の時に運命のチームメートとでも呼ぶべき2人(プラス2人)が入部してきた…。

そんな感じです。
二人ともに地区予選を勝ち上がり全国大会に出ています。
一人は今も因縁のライバル相手に奮闘中です。

さて、そんな二人ですが。境遇がどこかかぶりどこかかぶらない二人ですが…。

(でもね、僕はこういう微妙な類似の中にスポーツマンガの中に潜む隠れた精神史があると思うのです。後のマンガ家たちはその前のマンガ家たちが書くものを本当によく見ている。それをパクリだと避難されない程度にオマージュ的に自身のマンガの本編へ紛れ込ませて静かに先輩たちに敬意を示している。そう思うのです。実際『ダイヤのA』や『ハイキュー!!』の中には『スラムダンク』へのオマージュだろうと言いたくなる場面が散見されます。重要な試合を前にしてライバル校と向き合って啖呵を切り合うシーンなんかは本当によくできていて、きっとふたりともスラダン読んでるなあという感じがします。無駄話。)

あえてゴリの立場にたてば澤村の思慮深いところは少しばかり物足りないかもしれない。
あえて澤村の立場にたてばゴリの苛烈さは目的達成のため毒となるとみるかもしれない。
いくらでも言葉は出てくるでしょう。

しかし、それは無益です。
それが僕が取り上げたいこと。

一つのスポーツマンガは数個の中心的なテーマをバックボーンに成り立っていて、それを抜きにしては成り立ちません。また、そのバックボーンをひたすらに問いただすような描写はあまり繰り返すとマンガ全体の熱量が下がる、コントロールしにくくなるために行われません。
あえて3つでまとめるなら、『スラムダンク』は「憧れ」と「努力」と「犠牲」の物語で『ハイキュー!!』は「劣等感」と「改革」と「日陰に陽を当てる」物語です。(無理やりか?笑)

それらが一致する物語同士で登場人物の行動の是非を問うのは有益かもしれませんが、ほかは無益です。

根底に据えている信念が異なる物語同士を無理くり並べて断罪したところで出てくるのは断罪した(と思っている浅はかな人物)の満足感だけでしょう。故に無益です。

彼らは彼らの信じるところを精一杯ひねり出して行動を選択し、全国大会に至ったのです。
部外者はまずその結果をたたえるところから始めたい。

ゴリの行動はハラスメントかと問うても、澤村は慎重すぎて下手したらただ引退して終わってたのではないかと問うても、出てくるのは感情的な意見ばかりです。

ああ魅力的な主人公が起こす珍事や活躍が魅力的だったなあ『スラムダンク』は。桜木は今も元気で天才やってるのかなあ。
ああ今まで目立たなかった控えの選手の個性と思いもすくい上げて試合全体への影響をも描いたり、マネージャーの思いまで前面に真面目に取り上げたりした『ハイキュー!!』はめちゃくちゃ丁寧だなあ…。

そんなくらいでいいんじゃないかな。

これは虚構同士の話ですが、現実との関わりで言うと今『ダイヤのA』が苦しい。
というのも、そのマンガは高校野球を描いたもので特に「エースピッチャー」に焦点を当てたものなのですが、今高校野球の「エース」概念は揺れ動いているからです。

連投多投、その他の昭和的スポ根を引き継いだ無茶で自らの将来を棒に振ってもチームの勝利を支える、という旧来的なエース像は時折批判にさらされています。アメリカからは「正気の沙汰じゃない」と言われるし、それに煽られて甲子園の開催時期の過酷なグラウンド周りの事情が時折槍玉に挙げられる。

そのせいなのかなんなのかは不明ですが、『ダイヤのA』は第一部が終わって第二部『ダイヤのA act2』に入ってから以前より描写がライトになりました。いっときにかける球児の迫力を描いたシーンは少なくなった。エースの力投を、一球にかける思いを届けようとする描写も少ない。世間一般的な「エース」概念の揺れ動きに巻き込まれるのをちょっとさけてあくまでもチーム内でのエース争い、レギュラー争いにこだわるかのような描写が増えてきた。

思慮深い作者さんなのだろうか、それともまた違う思いがあるのだろうかと勘ぐってしまいますが、僕はフィクションはあくまで作者が思い描くものを書いてほしいと思っているので以前のように大々的に「エース」というものを問うてほしいです。
(正直物語の流れを追ってキャラクターたちが山あり谷ありを繰り広げる様を継続的に見られるならば、単純なスポ根や魔球魔打法のほうが見応えがあります。その思想にかけていたマンガから思想がかけたらそれはただのきれいな絵の羅列です。)

ふう。で、このスポーツマンガよもやまに寄せて僕が酒に対して何を言いたいか。

半端なこだわりからくるやっかみをやめましょう。
これに付きます。
百害あって一利なしです。今現在「そうなってるもの」には「そうなってる」理由と経緯と否定し難い思想的バックボーンがあります。
そこを無視して「そんなんだめだ飲むな」ということには1ミクロンの価値もありません。ただ自らの浅薄な日本酒への愛情と無知と軽薄さを晒すだけです。
だったら「おれはこれが好きなんだな~」といって下さい。
それだけで次世代や同文化内の異文化の芽が摘まれずに済みます。

以上です。

ひと夏を、場合によってはそれ以上を越えた酒がまさに自らのうちに抱えた熟成の味を発揮する時、その時には受けての感性が何よりも問われることになる。

そう思います。

ちょっと違う言い方をすれば、ものが成熟していくその時にまさに我々もその読み取り方に成熟を求められる。

自身のくだらないこだわりに惑わされてそれが目指すところのものがそもそもわからない、なんてそんなことはさけたいものです。

寳劔に、静かに乾杯。

酒と2人のこども達に関心があります。酒文化に貢献するため、もしくはよりよい子育てのために使わせて頂きます。