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まだ渋谷という街に馴染めない

東京に来て、もう2ヶ月が経つ。上京する前も2ヶ月に1回は東京に足を運んでいたのだけれど、渋谷の交差点は何度見ても感動を隠せない。渋谷の平日の多さは梅田の土日並みで、渋谷の土日の人の多さをうまく表す地域が思い浮かばないのが残念である。

渋谷駅前から見えるTSUTAYA、109などいつもテレビで見ている風景が確かにそこにあった。気を抜けばすぐにでも人並みに攫われてしまいそうになるからしがみつくことに精一杯だ。ずっと東京に住んでいる人の話によると、コロナ前の人並みに少しずつ戻ってきているらしい。

よくテレビで見かけていた渋谷という街が今目の前にあることがいまだに信じられない。実際に目にしても実感がわかないのだから、僕はまだ渋谷という街に馴染めていないのだろう。ちなみに上京した理由は、仕事をもっと頑張りたいと思ったためだ。上京すれば何かが変わると思って上京するなんて、なんだか滑稽に思えるかもしれない。まだ2ヶ月しか経っていないのだけれど、渋谷には何度も降り立っているため、少しはその風景に慣れるだろうと思っていた。

地元の大阪ではゆるりと過ごしていた。人が多い地域もあるけれど、下町に住んでいたため、それとは無縁の生活だった。東京はとにかく情報が早い。以前東京でヤクルト1000が流行ったときに、どこの店も売り切れていたという情報をTwitterで知ったため、大阪でも売り切れていると思っていたのだけれど、スーパーはおろかどこのコンビニにも売っていた。あらゆる情報は東京を起点に全国へと広がっていく。最新の情報を手に入れるために、上京したと言っても過言ではないかもしれない。

渋谷のとある喫茶店で友人とコーヒーを飲んだ。上京して2ヶ月いろんなイベントに顔を出してみたり、新しい街を開拓したりと自分なりに行動をしているつもりだったのだけれど、それがまだ功を奏した経験はない。「東京に来て2ヶ月経ったんですけど、友達が増えないし、仕事も増えないと相談した。友人は「たくさん行動しているし、そのままのペースでいいんじゃない?」とアドバイスをくれた。焦ってもだめ。でも、焦らなければ行動に移せない。その狭間を行ったり来たりしては、自分のペースで頑張ろうと決意している。だから、自分の行動が正しいと知って安心した。

僕はいつも何か行動を起こすときに親には事後報告をしている。自分の人生なんだから自分で決めたい。たとえその報告が事前であったとしても行動は変わらないし、後でいいと思っているためだ。でも、父は僕が東京でやっていけるか心配しているだろう。その証拠に2週間に1回電話を掛けてくる。電話に出るたびに、いつもと変わらないテンションで近況報告をさせられる。煩わしさは感じないけれど、1、2週間で状況が大きく変わることはないよとは思っている。

友人と別れ、渋谷の交差点を一人で歩く。どこを見渡しても大きな建物に覆われれている。信号が変わった途端に雪崩のように人がこちらに向かってきた。ぶつからないように慎重に信号を渡り切る。今自身が渋谷にいるという事実がまだ信じられない。渋谷はおろか東京とは一生無縁で生きると思っていた。でも、何を思い立ったのか、今こうして上京して、渋谷の街を歩いている。まだ何かを成し得たわけではない。でも、こうして東京の地に降り立っていることに胸が高揚しているのは事実だ。

まだそれほど数は多くないけれど、東京で出会った人がいる。大阪にいては出会えなかった人である。そして、東京で出会った友人たちと仕事をさせてもらえるようになった。わからないことばかりだけれど、少しずつ仕事にも慣れてきたような気がする。それは友人たちが支えてくれているために他ならない。立場上褒めることは多いけれど、褒められる機会がないという話をすると、些細なことでも褒めてくれるようになった。褒められ慣れていないため、反応が少し薄めなのだけれど、それは精一杯の照れ隠しである。東京の人は冷たいと思っていた。でも、それはテレビやネットの情報に踊らされているだけだった。実際に自分で感じたものが現実で、それは揺るぎようのないものだ。

上京したから会えた人とこれからもたくさん出会っていくのだろう。会いたくなかったと思う人もきっといる。嬉しい思いをしたり、悲しい思いをしたり、たくさんの感情がきっとここ東京で生まれるに違いない。そんなことを思いながら、僕は渋谷という街で一人笑みを浮かべていた。

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