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ルーティンのように流れる日曜日

お昼前に起きて朝食兼昼食を食べる。トースターで食パンを焼く。ジャムを冷蔵庫から取り出す。食パンに塗る小さなパテのようなものの名前が「スプレッド」と知ったのはつい最近だ。和訳すると広げる。食器の用途そのままじゃないかと思ってなんだか笑えた。ジャムの容器の蓋を開ける。あと少しで容器の中のジャムがなくなりそうだ。容器の淵にジャムを集めて掬い取ろうとしたが、何度も失敗した。こんなこともうまくできないのかと狼狽えた。

Netflixで『怪獣8号』が配信されていたので、それを観ながらジャムが塗られた食パンを食べた。ちなみに朝は毎日同じものを食べている。飽きないの?と聞かれたこともあるけれど、朝ごはんは作業のようなものだ。毎日違うメニューを考える方がよほどめんどくさい。機械のように同じものを食べている。飽きが生じるなど考えたことがないし、それがめんどくさいを超える日はやってこないのだろうとも思った。

『怪獣8号』は、世界中の皆がリアルタイムで視聴できるように世界同時配信を実施したようだ。そのお祭りに乗るときっと楽しかったに違いない。SNSを眺めながら作品についての声を探す。人を楽しませるためのエンタメ要素が含まれていると思った。観終えた後はくだらぬテレビをつけっぱなしにして、気がついたら日が沈んでいた。現在原稿を書く前の文字起こしをしている。取材が楽しかったのはもちろんのこと、そのときは同じぐらい文字起こしも楽しくなる。その分、いいものに仕上げたいというプレッシャーが高まるのだけれど、いい緊張感の中で書く原稿はいいものになりやすい。

書いても書いても終わらない原稿にどんどんプログラムが消化されていくテレビ番組。休憩中にテレビの映像に目を移すと、ニュース番組が放送されていた。最近は大谷さん関連のニュースばかりが流れている。もう野球に集中させてあげてほしい。悲しみの中で野球で結果を残す彼は本当に素晴らしい人間だと思う。僕はどう足掻いても大谷さんにはなれないのだけれど、任された仕事ぐらいはきちんとやり遂げたい。

大谷さんのニュースが終わってしばらくすると、バラエティ番組が始まった。原稿が進まないから、気分転換でもしようと見ていたのだけれど、バラエティ番組に出演する人たちの笑い声とうまくいかない原稿を勝手に比較して、居た堪れない気持ちになった。すぐさまテレビを無音に切り替え、テレビ画面からPCの画面へと切り替えた。

家では集中できないと思って外に出ることにした。夜に荻窪で予定があるため、電車に乗って現地に向かう。街の桜はほとんど散り、葉桜へと姿を変えている。きっとその変化は最後までやり切った証拠なのだろう。家の中で流れていた楽しそうなバラエティ番組とは裏腹に、僕は日曜日に原稿に追われている。何をしているのだろうと思いはしたが、大谷さんが置かれている状況よりもよっぽどましだとも思った。カフェに着いて、原稿に向き合う。悩めど悩めど、何も言葉が出てこないまま、時間だけが過ぎていく。頭の中にあるはずの言葉を取り出すだけの行為に、たくさんの時間を費やしてしまった。その後悔に胸が酷く痛みを感じている。

Instagramを眺めていると、天気の良さと休日が相まって、楽しそうに過ごしている人ばかりで埋め尽くされている。「いいな」なんて口ずさんでみては、目の前の原稿が一向に進まない現実を見ては、目の前が真っ暗になった。

時刻は23時。原稿はまだまだ終わりが見えない。束の間の休日は気付かぬうちに呆気なく終わる。明日からまた平常運転が始まり、社会の歯車と化す。書いた原稿に願いを込める。

どんなときも、いつだって言わせたい言葉は決まっている。それなのに、僕の頭から出てくる言葉は、世間のそれらと何ら変わりがない。恋や人生、言いたいことは決まって、Mr.Childrenが歌詞にしてくれている。

今回も僕が言いたいことはMr.Childrenの『言わせてみてぇもんだ』がすべて代弁してくれていた。自分の言葉で伝えたいと思いはするものの、桜井和寿の描く世界には到底敵わない。なんて、絶望するぐらいなら前を向いていたい。僕が僕であるために、僕だからこそ、伝えられる言葉があると盲目的に信じている。

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