ただそれだけのこと

窓の向こうに一筋の雲が伸びていた。

あれは希望の光か。それとも絶望へのカウントダウンか。

答えはわからない。でも僕らの関係が終わりに近づいていることだけは確かだ。

積み重ねた愛情に、分かり合えなかった2人。時間をかけて少しずつ積み重ねたものは、いともたやすく崩れ去ろうとしていた。

ずっと君のそばに居られるなんて思っていた。でも君の心はいつしかそっと僕から離れていった。

都合の悪いことから逃げ、いつも綺麗事で片付ける君。

僕もまた綺麗事を盾に、君から逃げていたから、きっと2人は共犯だ。

公園のベンチに立ち尽くす僕に、ブランコにゆらゆら揺られる君。

楽しかった日々の記憶が、走馬灯のように鮮明に蘇り、不思議と嫌なことは思い出せない。

ブランコは勢いを増し、今にも君はどこかに飛んでいきそうな勢いだった。

僕にはブランコで飛んでいきそうな君を止めることができなかった。2人を繫ぎ止めるものはもうなんにもない。繋ぎ止められていたのはいつだって僕だった。

君はいつだって自由で、僕が君に囚われていたのだ。

君が好きなものならいくらでも好きになる努力ができた。でも君が僕の好きなものを好きになる努力を見たことがなかった。

僕の思いが一方的だったんだろうな。いつだって愛の比重は僕の方が重かった。

だから、2人は分かり合えなかった。それだけが答えだった。

ふと空を見上げると、雲はどす黒い色をしていた。空は今にも雨が降り出しそうな空だった。

終わりは儚くて、思ったよりも一瞬だった。まさか終わるなんて思ってなかった。でも終わった。あっけない終わりだった。人生なんてそんなものなのかもしれない。

ぽっかり開いた大きな穴。一体なにでその穴を埋めたらいいんだろう?

自分で空けた大きな穴。空いたその穴で君を受け入れたかった。

雨に打たれ、悲しさにまみれ、行き場を失った君への想い。

前を見ようと目を開けてみたものの、靄がかかって前が見えない。

どす黒い感情。怒りに似た感情。誰かを傷つければ何かが解消すんのかな。

考えてみたものの誰かを傷つける勇気なんてない。

悲しみの雨に絶望の空。何もできずただ1人立ち尽くす。

帰りの道は僕1人で君はもうそばにいなかった。2人の関係が終わった。

ただそれだけのこと。

何事もなかったかのように、雲は流れ、雨が流れる。

本音言うと「さよなら」なんて君の口から聞きたくなかった。

ありがとう。お元気で。

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