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嫌いなもの

SNSで共感を集めるコツは、自分の好きなものを発信することだと聞いたことがある。なるほど納得だ。好きなものを語っている人は魅力的に思えるものだし、好きなものを好きだと言うポジティブな発信は見ていて気持ちのいいものだ。例えばジャンルを絞って好きなものを発信し続けていれば自ずと同じものを好きな人たちの目にも留まるようになってコミュニティが形成されたりもする。

逆に言うならば、嫌いなものを発信することはあまり面白いものではないしとても難しい。人間関係の基本として、「他人の悪口を言う人には近づくな」とか「何かを上げる時に何かを下げる言い方をする人はダメだ」なんてことを言われたりするが、それも真理だと思う。シンプルにトークや文章のスキルという観点でも、何かが嫌いであるという論説を見ていて面白いものに昇華するのはとても難しいスキルだ。言葉を選び、共感を得る言い回しを考え、時にユーモアを挟みながら嫌いを発信する。非常に高度な技術が必要とされる。「嫌い」も発信し続けていれば「嫌い」同士でコミュニティが形成されることだってあるが、例えば「アンチ巨人」や「反アベ」や「反ワクチン」や「嫌韓」や「アンチフェミニスト」みたいな言葉を見て思い浮かべるのは、攻撃的なヤバい人たちの集団なのではないだろうか。

とは言え、何かが嫌いであると公言することが過剰に煙たがられるのも窮屈な世の中だなと思う。僕自身、こうやって毎日何かを書く中で、「嫌いなもの」をテーマに書こうとしたこともある。実際に書いたものもある。しかし書いている途中で、これは誰かを傷付けるかもしれない、誰かを不愉快にさせてしまうかもしれないと見えない誰かに配慮して筆を止めたものの方が多い。公明正大清廉潔白大いに結構、しかし誰だって嫌いな物事のひとつやふたつはあるものだ。そんな思いだって発信してるやつの方が人間的にも魅力的なんじゃないのか!?なんてことを強気に言うことは出来ても、言うは易し行うは難しである。

今朝、「うつヌケ系のエッセイ漫画に唐突に出てくる、『自分を支えてくれる理解のあるパートナー』が嫌いだ」というネタを書こうとして断念して、思ったつれづれを書いてみました。誰かを傷付けるかもとか以前にあまりにも題材がピンポイント過ぎて伝わらないだろうってのが一番大きな要因ですけどね。

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