悪いこと=かっこいいみたいな価値観があまり理解出来ない。「俺も昔は悪かったんだよねー」なんてことを自慢げに話すやつはただただダサいと思うし、そう言えばヤンキー漫画やヤクザ映画も面白いと思ったことがないような気がする。昔は悪かったけど今は更生してこんなに素晴らしい活動をしている…みたいな美談も、いや昔から悪くないやつの方が素晴らしいに決まってるだろと思って普通に引いてしまう。百歩譲ってそういうのがかっこいいとされた時代があったことは理解できないこともないが、もう『巨人・大鵬・卵焼き』ぐらいに古い価値観だと思う。

俺だって昔は悪かった。若い頃はすぐ頭に血がのぼってよく喧嘩をしたものだ。そう言えば喧嘩で負けたことは一度もないが、だから何だと言うんだ。そんなことはちっともかっこよくなんかない。酒やタバコに明け暮れ、悪い仲間たちとつるんで酷いこともたくさんやった。ゆすり、たかり、窃盗、強盗、追い剥ぎ、線路への置き石、脱法ハーブの密売、当たり屋、車上荒らし、エアマックス狩り、公然わいせつ、オレオレ詐欺の出し子、粉飾決算、パスポートの偽造、無許可での風俗店の経営、ウニの密漁、ガンプラの転売、高級化粧品のネズミ講、ポテトチップスを食べた手で他人の眼鏡を触る、自転車のサドルを盗んで代わりにブロッコリーを刺しておく……ざっと思いつく限りでもこんなところだ。今はすっかり更生して真っ当に生きているつもりだが、女癖の悪さだけは今でも抜けていない。いい歳して女を泣かせてばかりいるだなんてのはまったく恥ずかしいことだ。

アウトロー=かっこいいなんてのは本当にダサい価値観だと思う。「俺も昔は悪かったんだよねー」なんてことを自慢げに話すおじさんはただただクソだと思う。俺も昔は随分悪かったが、そんなことを自慢してドヤるつもりはさらさらない。俺も昔は悪かったけども、早くこんなつまらない価値観がなくなってくれることを願うばかりだ。俺も昔は悪かったけども。