龍之介

東京大学大学院倫理学研究室修士1年。趣味は読書と映画/jazz/創作。 日々の思考の徒…

龍之介

東京大学大学院倫理学研究室修士1年。趣味は読書と映画/jazz/創作。 日々の思考の徒然なるものを書いていきます。

マガジン

  • 短編置き場

    僕の書いた短編小説たちが置いてあります。完全に不定期更新です。

  • 誰でもない「ひと」たちについて

    「ひと」は、私やあなたの会話から漏れ出続ける一方で、全体的言説に取り込まれてしまうような「語りの<他者>」である。不定期に更新。正確性とかはあまり気にしない。

  • 【連載】たまには、くだらないことを話そう

    たまには、くだらないことを話そう。 そういう心意気で書いた適当なエッセイである。将来これが世に出回ることはおそらくない。ならむしろ今のうちに有料にした方がよいのではないか。 そんなわけで、一部の記事は最後が有料である。面白そうだと思ったら払ってくれたまえ。 こんなへたくそな文章で、あなたも何かが書きたいとおもったら、”#くだ話”  ぜひこのタグを、あたなも使ってほしい。

  • 下手糞な文章についてクソ真面目に語ってみる記事

  • 【哲学】「境界」についての考察

    このシリーズでは、僕なりの哲学をもって「境界」という事象について深く考えていきたいと思う。何度も繰り返し言うことではあるが、本記事は僕が記事の読者とともに、「境界」ということについて哲学的考察を深めていくことに意義がある。それに、僕はソクラテスにならって「無知」から始めていこうと思っている。つまり、事前に何らかの書籍を熟読しているわけではないということである。未熟な僕の考察に、少しでも良い素材となりえる本や作品を知っている方がいるのであれば、ぜひ教えてほしい。僕のTwitter、この記事のコメント欄を含めて、自由に。

最近の記事

  • 固定された記事

「誰かの何かになりたい」ということ

巷でよく言われる言説の中に、「誰かの大切な人になりたい」「好きな人の好きな人になりたい」という言葉がある。直近(というわけでもないのだが)「別の人の彼女になったよ」という曲のタイトルも、この種の言説であろうし、現に多くの人から支持されている。僕自身、この曲はとても好きである。 さて、何か一通りの言説が見られるとき、それをある程度抽象化しようと思うのが哲学を志す者の癖である。ここでいう場合は、「誰か(人)の何か(好きな人、大切な人)になりたい」という欲求の形が現れている。これ

    • 【詩】冬

       畳を静かに揺らすような  低く、うなるような除夜の音  雪たちが、ひそひそと  主のいないキャンパスを飛び回る  正月ーあるいは、質素な部室   渦巻く嫌悪感の方向ベクトル見失って   とりあえず自分を刺す 冬

      • 【短篇】大人になると言うのは、いつでも死ねるようになるってことだ。

         生まれてから、インターネットが当たり前にある時代の僕にとって、世の中にあふれる膨大な数の言葉たちは、まるであらゆるものを破壊しつくした聖書の大洪水のようだった。僕にとって箱舟は、あふれかえった言葉の海を渡ろうとする、必死の抵抗だった。既存の表現、美しい言葉なんていう幻想に縋りつく、愚かな自称文学者の努力、というような意味ではない。むしろどちらかと言えば、もっと個人的な叫びである。僕が僕であるために必要な言葉が、たくさんの言葉の中にもまれ、希釈されて消えて行ってしまって、何も

        • 【短篇小説】死に場所を探していた。

           死に場所を探していた。できれば君の隣がよかった。  そう考えたのは、これが初めてのことではない。ずっと前にも、同じことを考えた。君と出会う前に、半年ばかり付き合っていたある女の子のことだ。その時も、今も、僕は隣で死にたいと思っていた。暖かい日差しの差し込む縁側で、君のそばでこくり、こくりと居眠りをしたいと思っていた。そう思うことは、悪いことではないはずだった。  病院のベッドの上で目を覚ました時、第一声に君の声が聞こえなかったことで、僕は心中の失敗したことを知った。若い

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        「誰かの何かになりたい」ということ

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        記事

          【詩】寸劇

          呼吸すら許さぬほどの静寂の内で  ―宇宙が目覚める。  泣きたい時に限って泣けなくて 死にたい時に限って死ねなくて  生きているから苦しくて  けれども、時々楽しいことがあるから、   のうのうと生き延びているあたしを 無残に喰い尽くした一匹の獣が   車裂きの刑に処されて 息絶えた  内側から壊れていくものは   何も、花瓶だけではない * あたしは、真っ黒な夜だ。  真っ黒で、何も見えない、  目玉を失った烏みたいに真っ黒な夜だ 確信なき悪意に切り裂かれた羽を

          【詩】寸劇

          【詩】吐きそうだ

          吐きそうだ 吐きそうだ 全部吐き出してしまいそうだ 朝起きて 君のいない隣を見つめて 残酷に照り付ける太陽に気が付いて 何にも悪くない鳥の鳴き声が バタン と 車に轢かれて途絶えて          -私の一部がそこから漏れ出した 口を押えていたら 腸(はらわた)の方から出ていくなんて ナンセンス! そう笑う道化は斜陽に照らされて ああ 吐きそうだ 彼岸に咲く一輪の華

          【詩】吐きそうだ

          【詩】夕焼けに染まったので

          夕焼けに染まったので ぼくの身体は赤く燃える てのひらから 足の指先まで じんわり じんわりと 燃えていく 身体の輪郭が身体から解き放たれて ぼくの内側にまで入りこんでくるそれは 心臓すらも高鳴らせる どくん どくん それは水平線に沈む  ぼやけた熱気に包まれて 白雲の内にまどろみながら

          【詩】夕焼けに染まったので

          【詩】どうせ人生、一度きり

          どうせ人生一度きり いずれ死ぬさ灰になって だからハイになって生きようと思った。 けれどイキるのは嫌だ。 いやだな、こんなこと言う大人になるのは 大人はみんなみっともない みっともなくて、見たくもない けれどもその見たくも無い物に近づくから、 泣いているんだ 海際で一人 泣いたイルカは、海に帰りたいといった 海に帰れば何かが変わるか 変われば何かが起こるのか 起これば何かが生れるか 生れればすべてが報われるか? 無垢な子供が救われるか すぐには分からない 分からないから

          【詩】どうせ人生、一度きり

          愛することは難しい

          人を愛することは、他のどんなことよりも難しい。心の底からたとえ嫌いになったとしても、それでも人は人を愛さねばならない。愛とは何も恋や友情だけではない。そこに人が人としているからこそ、その人の尊厳に対して敬意を持って接することが、僕にとっての「愛」だ。 そこには欲望は存在しない。あるとすれば、その人の幸せを心から願いたいという僕の勝手なエゴだけだ。愛はいつも一方向だと弁えなければならない。見返りを求めたら、それは愛ではなくなる。 だけれども、だからだろうか。僕は時々、どうしよう

          愛することは難しい

          【詩】誰がこの絵を描いたのか?

          誰がこの絵を描いたのか? 知らんとは言わせぬ その眼で見よ 朽ち行く廃墟のその片隅で 泣き崩れた少年が 声をかけ続ける母親の腹を貫く 鉄くずを 誰がこの絵を描いたのか? 見たくないとは言わせぬ その耳で聞け 嘆きと憎悪の渦巻く 渇きの平原を木霊する 耐えがたきほどに厳粛な 死者たちの声を 誰がこの絵を描いたのか? 聞かぬとは言わせぬ その肌で知れ 慰めの少女を貪る悪魔を焼いた業火の中で お前を見たあの眼の 突き刺すような眼差しを 誰がこの絵を描いたのか? 作者不詳の劇画

          【詩】誰がこの絵を描いたのか?

          【詩】不完全なそれは

          不完全なそれは、 知らん顔で飛んでいく晴れた日の雲 戦争や災害や、悲しみが 過ぎ去る都市の片隅で、 鉛のように重く横たわる私の身体 不完全なそれは、 私を見つめる物言わぬ軍人の眼差し 慰めを知らぬ骨とう品はたとえ、 火薬のと血の匂いで汚されるとも、 なおも無垢なる肉として 蠅たちの祝福を受ける 不完全なそれは、 子供の頃に追いかけた一握の希望 爪と肉の間に砂を詰まらせながら、 波際で描いたスケッチブックには、 誰かが言葉を挟む場所など ありはしない 不完全なそれは、 芽

          【詩】不完全なそれは

          【哲学的考察】誰でもない「ひと」たち#1

          俺のことなんて、何も分からないくせに 弟にそう言われた言葉が、私の中に引っかかっている。彼は家族の一員であり、私は彼を弟だと思っている。しかし、私は「彼」のことが、ほんとうに「わからない」。私は理解しようとしているが、そのことは「彼」の中の歪んだ自己意識をさらに歪ませる様な種類のものらしいのだ。「分かろうとするな!」と彼は僕や僕の両親に言う。「分かってほしい、でも分かるはずがない。だって気づかないんだから」。  一体、彼が言っているのはどういう意味なのか? <他者>の言明

          【哲学的考察】誰でもない「ひと」たち#1

          【詩】余白

          都市が涙を流す そんな雨の日だ 無色透明のインクは -アスファルトを黒色に染めてー いつかすべてが本当に黒くなる けれども、こころがそれを欲しがるので 全き余白の持ち主は 傘もささずにそれを浴びている 僕の中にあったいくつかの 絶え間ない感情のほんの一部をさらけ出すのさえ 勇気がいる 余白が汚れていくことにさえ 沈黙するという勇気がいる

          【詩】余白

          【詩】知らない夢

          瞳の奥に 満点の星が煌めいて 揺れ動く悲しみと切なさを通り越し 柔く儚き輝きが ただその傍らに腰かける 聳え立つ尾根が かつての天の神々の如く 久遠にして死することなき 淡い揺らめきを謳い 吹きすさぶ風が 君のいる場所を告げる

          【詩】知らない夢

          留学と戦争 あるいは友情について

          ドイツ留学noteを書くのはいつぶりだろうか。多忙で、すっかり忘れていたことをまずはお詫びしたい。 旧TwitterことXで知っていることだろうが、僕は現在8月の頭から、ブレーメンに1か月の留学中である。そしてもちろん、この文章を書いている8月23日現在、ロシアとウクライナはなおも戦争を続行中だ。 ブレーメンの旅の模様については、こちらのnoteでは書いていなかった。書く暇がなかったのもあるが、なるべく英語とドイツ語で生活を試みていたために、日本語を使いたくなかったから、と

          留学と戦争 あるいは友情について

          ほとんどすべてのものに値段がついている。幸福だって有償だ。「あなたの幸せを一緒に作る」という広告の文句が、「あなたは一人では幸せになれない」の裏返しだと気づいてから、どうも頭の中が憂鬱でいっぱいだった。

          ほとんどすべてのものに値段がついている。幸福だって有償だ。「あなたの幸せを一緒に作る」という広告の文句が、「あなたは一人では幸せになれない」の裏返しだと気づいてから、どうも頭の中が憂鬱でいっぱいだった。