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週末読書メモ103. 『「日本の経営」を創る 社員を熱くする戦略と組織』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

一流の経営学者と一流の経営者による本気の会談集。


一橋大学、スタンフォード大学で教鞭を取った日本を代表する経営学者の一人、伊丹敬之さん。

ミスミグループの会長であり、企業再生人としても経営者としても、揺るがない実績を持つ、三枝匡さん。

(『戦略プロフェッショナル』、『経営パワーの危機』、『V字回復の経営』という三枝三部作、そして、ミスミの第二創業を元にした『ザ・会社改造』は、経営領域の本における名作です)

本書『「日本の経営」を創る』の内容は、そんなお二人が、持ちうる知識・経験を総動員して、「経営」をテーマに本気で語り合ったものとなります。


一流同士の世界だと、こうも豊かで、深い議論になるのか…と感嘆すら覚えます。

主テーマは「日本の経営」。しかし、それを語るために、日米における経営の歴史から、三枝さんの企業再生・改革の感想戦、これからの日本経営に求められること、と多岐に渡る内容に至り。それらを、1流同士だからこそ、巷では触れられない深度や温度感で語られています。


伊丹 結局、われわれも最初はアメリカの経営が進んでいて、日本は遅れているという「後進国」メンタリティーがあったと思う。だけどいったん向こうの懐の中へ入ってみることで、初めて相対化ができたんです。その後で初めて、どっちで行くかという判断ができるんですよ。ところが、相対化できる経験をしないとか、あるいは相対化の思考プロセスがない人たちは、居丈高なナショナリストになるか、「後進国」メンタリティーをずっと引きずるか、それしかなくなると思うんです。

三枝 今、日本の経営者人材が新しい「日本の経営」を編み出すためには、理論と現場の行ったり来たりの中で、「抽象化、理論化、敷衍化」を行い、アメリカからの輸入コンセプトばかり追いかけるのではなく、日本企業自身で創造的に新しい経営のやり方を編み出すことが求められていると思います。

今から約40~50年前、海外に出る人が僅かであった時代にも関わらず、奇遇にもアメリカで仕事を行うという経験があった伊丹さんと三枝さん。その2人だからこそ、日本とアメリカを相対化し、両国の強みと弱みを語ります。

そのエッセンスはもちろんのこと、現代のパスク・アメリカーナ以前、フォードを代表するアメリカの覇権時代から、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代があり、そして、アメリカが返り咲く手前までの時代の歴史譚としても、一読の価値があります。


伊丹 経営者人材というのは、経営的な打ち手としてどのボタンを押したら、どんなことが起きるかっていう経営の「因果律」みたいなものを、頭の中にたくさん貯めることが大切だと。経験の蓄積というのはそのデータベースが豊かになっていくということであり、それによって経営者はだんだん賢くなっていき、失敗の予知能力が高まって、的を得た行動ができるようになると。

三枝 経営者人材が育つプロセスというのは、理屈で考えた、そこから導いた仮説を現場で実際にやってみた、ダメだった、また理屈で考えた、それでもダメだった、もう一度理屈で考えた、今度はうまくいった、そんな行ったり来たりの中で、因果律データベースを豊かにしていくのだと思います。要するに、経営力を上げていくというのは、試行錯誤の回数だと思います。

そして、本書の肝である日本の経営・経営者に求められることの議論。

経営者人材に求められること、それは、経営の「因果律」を頭の中にたくさん貯めることだと言います。そのためには、試行錯誤の回数が必要だと。

三枝さん自身が、初期に企業再生をする中で磨いてきた「因果律」、後期にミスミで経営者人材を創り出すため(つまり、人材が「因果律」を手にいれるため)の施策。それらを、自らの言葉で、後日談とともに語られます。


三枝 初めの頃は、会社を直すってどういうことか、自分でもいろいろわかっていませんでしたが、最後の方はいろんなことがわかってきました。わかったのは、事業再生の入り口はでは戦略八割、終わってみれば人間関係八割(笑)、そういう感じ。

「事業再生の入り口はでは戦略八割、終わってみれば人間関係八割」という言葉も、三枝さんが持つ経営の「因果律」の一つであり、心に残ります。


節々に示唆に富む内容があるの本書ですが、その中でも、最も印象深かったのは、伊丹さんの「歴史は跳ばない、しかし加速できる」と言う言葉。

伊丹 これは事業改革であろうと組織改革であろうと同じだと思うんですが、歴史の重みと言いますか、歴史が動くメカニズムというものは変えられないんだなと。歴史は絶対に跳ばないんだと。だけど、加速はできるんです。だから、すべてのステップが踏まれないと。改革というのは進まないんです。

いやー…そうだよな…

これは、企業経営に問わず、古今東西の中で、歴史における盛衰のパターンがある例は、枚挙に遑がありません。

歴史が動くメカニズムというものは変えられないと。

であるならば、そのメカニズムを理解ことは必ずプラスになるはず。そして、その上で、そのステップを踏み続けられるようにすること。

「歴史は跳ばない、しかし加速できる」。そのためにも、一歩一歩を確実に歩み踏みしめていこう!


【本の抜粋】
伊丹 結局、われわれも最初はアメリカの経営が進んでいて、日本は遅れているという「後進国」メンタリティーがあったと思う。だけどいったん向こうの懐の中へ入ってみることで、初めて相対化ができたんです。その後で初めて、どっちで行くかという判断ができるんですよ。ところが、相対化できる経験をしないとか、あるいは相対化の思考プロセスがない人たちは、居丈高なナショナリストになるか、「後進国」メンタリティーをずっと引きずるか、それしかなくなると思うんです。

伊丹 経営者人材というのは、経営的な打ち手としてどのボタンを押したら、どんなことが起きるかっていう経営の「因果律」みたいなものを、頭の中にたくさん貯めることが大切だと。経験の蓄積というのはそのデータベースが豊かになっていくということであり、それによって経営者はだんだん賢くなっていき、失敗の予知能力が高まって、的を得た行動ができるようになると。

三枝 経営者人材が育つプロセスというのは、理屈で考えた、そこから導いた仮説を現場で実際にやってみた、ダメだった、また理屈で考えた、それでもダメだった、もう一度理屈で考えた、今度はうまくいった、そんな行ったり来たりの中で、因果律データベースを豊かにしていくのだと思います。要するに、経営力を上げていくというのは、試行錯誤の回数だと思います。

三枝 今、日本の経営者人材が新しい「日本の経営」を編み出すためには、理論と現場の行ったり来たりの中で、「抽象化、理論化、敷衍化」を行い、アメリカからの輸入コンセプトばかり追いかけるのではなく、日本企業自身で創造的に新しい経営のやり方を編み出すことが求められていると思います。

三枝 そのあと何年も経ってからそのときの経験を「抽象化」してみると、要するに鮮明な戦略ストーリーで組織内の『戦略連鎖』をつないでみたら、その影響で機能組織をまたぐ『情報連鎖』や『時間連鎖』までが強烈にスピードアップし、その結果皆が熱くなっていき、目が輝き、『マインド連鎖』ができあがって、それが大変な事業成果として表れ、その成功体験によって「組織カルチャーのキンク(屈曲、突然変異的変化)」が生み出されたという解釈です。

伊丹 これは事業改革であろうと組織改革であろうと同じだと思うんですが、歴史の重みと言いますか、歴史が動くメカニズムというものは変えられないんだなと。歴史は絶対に跳ばないんだと。だけど、加速はできるんです。だから、すべてのステップが踏まれないと。改革というのは進まないんです。

三枝 初めの頃は、会社を直すってどういうことか、自分でもいろいろわかっていませんでしたが、最後の方はいろんなことがわかってきました。わかったのは、事業再生の入り口はでは戦略八割、終わってみれば人間関係八割(笑)、そういう感じ。

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