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週末読書メモ126. 『ピダハン 「言語本能」を超える文化と世界観』

(北海道十勝の農家6代目による週次の読書メモ)

「世界を見る目」を見つめ直す1冊。


ブラジルのアマゾン奥地に住む少数民族、ピダハン。

数も、色も、そして神もいない彼らの認知世界。

そこに飛び込んだ認知科学者の筆者による、ユーモアと示唆に富む作品となっています。


ピダハンに儀式が見受けられないのは、経験の直接性を重んじる原則で説明できるのではないだろうか。
(中略)直接経験の原則のもとには、何らかの価値を一定の記号に置き換えるのを嫌い、その代わりに価値や情報を、実際に経験した人物から直接聞いた人物が、行動や言葉を通して生の形で伝えようとするピダハンの思考が見られる。

ピダハンは、自分たちの生存にとって有用なものを選び取り、文化を築いてきた。自分たちが知らないことは心配しないし、心配できるとも考えず、あるいは未知のことをすべて知り得るとも思わない。

ピダハンは、確固たる現実主義者であり、その言葉も認知世界も、徹底的に直接経験に準じています。その際たる特徴が、直接経験を返さない観念的な言葉(神等)を持たず、信じないこと。

その言葉を持たないからこそ、ただ現実のみの世界を見るようになったのか。はたまた、死に至る脅威に溢れる厳しい現実を生き抜くために、それ以外の言葉(概念)を持たないことが、生存戦略として正となったのか。

言語は、人類という種がたどり着いた最も素晴らしい到達点だと言えるだろう。サールが指摘しているとおり、言語を獲得してはじめて人間は、自分たちの周囲の世界をどのように名づけ、色分けし、分類するか、共通項をもてるようになった。この共通項が、社会におけるそのほかのさまざまな合意形成の基礎となる。

いずれにしよ、キリスト教を布教しようとした筆者の奮闘が、全て水の泡になっていった様を見ると、「世界を見る目」が規定し得る言葉の強さを感じざるを得ません。


偉人たちが、明らかに正気で誠実なる人物の度重なる観察の結果を信じようとしないとき、ぺてんだの低能だのと非難するときは、偉人たちの言を鵜呑みにするなということだ。ーーアルフレッド・ウォレス

人間を人間たらしめている最も大切な要素は、人類のあらゆる文化に普遍的にみられる特徴に最も顕著に示されるのであって、個々の文化の特質のなかにではないと考えるのは偏見であり、そのような考え方に加担する必要はない。ーークリフォード・ギアツ

本書の1つのテーマは、前段に取り上げたように、言葉によって、認知する世界が規定されるということ。その上で、もう1つのテーマは、常識・偏見に囚われてはならないということです。

筆者が体験してきたピダハンでのエピソードは、先進国では決して合間見えないことに溢れています。

しかし、それも、アマゾンという過酷な世界では、そう生きざるを得ない環境があったからこそであり…

ピダハンにはじつに多くを教えられてきた。そしてわたしがとりわけ気に入っているのがこの教えーーそう、人生は厳しく危険に満ち溢れてるものだ、時にはそのせいで、眠りを削られることもあるかもしれない。でも楽しむがいい。人生は続くのだ。

限られた・閉ざされた世界から出て、世界を見る目を持つこと。

そして、その目自体も、捉え直し続けること。

そんな重要性が、改めて心に残る1冊でした。


【本の抜粋】
偉人たちが、明らかに正気で誠実なる人物の度重なる観察の結果を信じようとしないとき、ぺてんだの低能だのと非難するときは、偉人たちの言を鵜呑みにするなということだ。ーーアルフレッド・ウォレス

人間を人間たらしめている最も大切な要素は、人類のあらゆる文化に普遍的にみられる特徴に最も顕著に示されるのであって、個々の文化の特質のなかにではないと考えるのは偏見であり、そのような考え方に加担する必要はない。ーークリフォード・ギアツ

ピダハンにはじつに多くを教えられてきた。そしてわたしがとりわけ気に入っているのがこの教えーーそう、人生は厳しく危険に満ち溢れてるものだ、時にはそのせいで、眠りを削られることもあるかもしれない。でも楽しむがいい。人生は続くのだ。

ブラジル人は人生の難局に直面して慌てふためいたりしない。たとえそれがどんなに厳しい困難であっても。あるがままの事態を受け入れ、たったひとりで立ち向かう。

ピダハンに儀式が見受けられないのは、経験の直接性を重んじる原則で説明できるのではないだろうか。
(中略)直接経験の原則のもとには、何らかの価値を一定の記号に置き換えるのを嫌い、その代わりに価値や情報を、実際に経験した人物から直接聞いた人物が、行動や言葉を通して生の形で伝えようとするピダハンの思考が見られる。

言語は、人類という種がたどり着いた最も素晴らしい到達点だと言えるだろう。サールが指摘しているとおり、言語を獲得してはじめて人間は、自分たちの周囲の世界をどのように名づけ、色分けし、分類するか、共通項をもてるようになった。この共通項が、社会におけるそのほかのさまざまな合意形成の基礎となる。

ピダハンは、自分たちの生存にとって有用なものを選び取り、文化を築いてきた。自分たちが知らないことは心配しないし、心配できるとも考えず、あるいは未知のことをすべて知り得るとも思わない。

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