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RZP Book Talk Vol.10 『ストーリーとしての競争戦略』楠木 建 著 | 東洋経済新報社 刊

スタートアップのための戦略作り

「Forebes TOP100 List」「前年比20%増加」、または「激動の一年」「冬の時代」―経済紙には景気の良い成功者の話か、不安を煽る文句のいずれかが踊ります。しかし、激動でない年はありませんし、伸びる会社があれば潰れる会社がある、それが現実です。技術革新が日々産業構造を変え、中長期的な成長を予測するのはますます難しくなっています。結局、上がっては下がる波の谷間をもがき続けるのがビジネスなのかもしれません。ですが、着実に利益を上げ、関わる人に充実感を感じさせる、長期的な事業戦略を作るのは本当に難しくなっているのでしょうか?

株式会社株式会社Unsungs&Webの代表でD2Cブランド運営者の有井誠さんは、RZP Book Talkで本書を推薦し、戦略作りについて、次のように話してくれました。

コンサルタントで感じた違和感の正体

私はコンサルタントとして、大企業の戦略作りに長く関わって、違和感を持つようになりました。大手企業との取引では、コンサルもクライアントも、各社内で担当者が上司にプレゼンをする、いわゆる説明責任があります。少なくともグローバル企業の誰かが成功している戦略を紙の上で証明する、コンサルは賢い人が集まっているので、どの角度から見ても正しい内容になり、次の人は賢い人のやり方に倣うのがコンサル的な正解です。でもその仕事は2、3年で飽きちゃいます。その会社しかできないことを提案できないのです。本書の中に出てくるスターバックスみたいなことを提案したらすごく怒られると思います(笑)。その違和感をこの本が整理してくれました。

いざ自分が起業してみると、本書に出てくる企業のように戦略を作るのはさらに難しいと実感する一方、本書の言う「賢者の盲点」が我々のようなスタートアップにこそ必要な活路であり、あの時の違和感の核心だと、今は合理的に理解できます。私は今でも本書を参考に戦略を考えていますが、コンセプトは見つけられても、それ以上に大変なのがクリティカルコアです。外から見れば意味不明の努力をコツコツと続けていくこと。これはやりながら見つけていくしかないと思います。それによって、部分的に非合理だけど、全体として合理的、という整合性ができる。クリティカルコアは初めから見つかっていたら合理的になって失敗してしまうでしょう。

物語の作り方が変わった

「あらゆる人間は未来に向けて社会を彫刻しうる、自らの創造性によって社会の幸福に寄与しうる」。ドイツの美術家ヨーゼフ・ボイスの提唱した「社会彫刻」という概念です。人口減少し、経済成長も鈍化、ヒットが読めず、投資は難しくなっています。社会彫刻的な事業には楽な時代ではありません。また、本書が示したとおり、「人がやらない良いことを見つけ(コンセプト)」、「人が不思議がることに圧倒的に努力する(クリティカルコア)」ことが優れた事業戦略の条件ならば、良いビジネスはForebes100のような華々しいものでも、「激動の波」を次々乗りこなすものでもなく、泥臭く地を這うようなものです。楽な道はありません。

ですが、楽して儲ける道は無くても、楽しく儲ける道はあるのではないでしょうか?誰もが発信できるようになった現代、気が付けば私たちは映画や音楽のような文化的な娯楽ではなく、事業や企業に対しても面白い、かっこいい、そんな評価をすることが当たり前になりました。今や消費者はただ物を買いサービスを受ける一方的な存在から、商品やサービスを評価し、広める存在として事業戦略に組み込まれています。市民が資本主義に取り込まれた、と批判する人もいますが、私は肯定的にとらえています。なぜなら、消費者は事業者の理念やこだわりを含めて商品を選ぶという選択肢を得たことであり、事業者は事業を育てる苦しみ、楽しみを消費者と分かち合うことができるようになったからです。

人間は古来から物語=ストーリーを紡いできました。物語を作ること、聞くこと、広めること、それ自体に意味、楽しみ、喜びを見出し、その結果、人と人が繋がり、社会は大きくなっていきました。コツコツと彫刻を掘り進め、出来ていく過程を共有し、出来ていく作業自体を一緒に楽しむ。物語の読み方・作り方は、今新しい段階に入り、私たちは面白く、かっこよく、美学と利益を両立する、それができる社会に少し近づいたのかもしれません。是非本書を読んで、自分だけにしかできない戦略について考えてみてください。

↓↓↓Book Talkに関心のある方はこちらからグループ参加できます。聞き専も歓迎↓↓↓

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【↓↓↓今回のスピーカー有井 誠さんの活動↓↓↓】

https://unsungs-web.com/


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