見出し画像

たった1点のゴール

雨の日はちっとも気分が乗らないし、上司には怒られるし、唯一のたのしみである仕事終わりの缶ビールは今日に限って売り切れだし、それなら、と、ふと懐かしくなって買った、子どもの頃好きだったブドウ味のゼリーは全然おいしくないし。

嫌なことってどうしてこうもつづくのかしら


道端のちいさな石ころに八つ当たりという蹴りを入れながら、もうすっかり夜に包まれた道を歩いて帰る。

さすが終電後。
辺りに歩く人はいない。

ならば、と道路の真ん中を歩いてやった。
ふとこみ上げる、優越感。

…なんて。
ちいさいな。自分。

夢も目標も、はじめから無かったわけじゃない。

でも、それらを失くしたのはいつだ?と問うと答えられない。

毎日を「死なないように」生きていたら、いつのまにか手ぶらになってしまった。そんなカンジ。

できることなら逃げてしまいたかった。
自分のことなど誰も知らないどこか遠い場所に、隠れてしまいたかった。
逃げて、
隠れて、
そのまま、

忘れられてほしかった。

忘れたかった。

だけれど弱虫だから、その一歩を踏み出すことさえできなかった。
(「弱さと強さに大差はない」なんてウソみたいな言葉を遺したエライ人は誰だ?)

ははっ。
逃げることもできないのか自分は。

見慣れすぎた街の暗闇に、特大のダサダサ八つ当たりシュートを放ってやる。

いつのまにか雨が上がっていた。

外から覗くとおや、このコンビニにはあのビールがある。


自分の単純さに苦笑し自動ドアをぬける。


もうすこしだけ、生きてみるか。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?