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それはまるでパズルのように

最近息子の寝かしつけが手強い。

だいたい「寝かしつけ」という言葉からして傲慢というか、一方的な感がある。子どもからしたら迷惑千万かもしれない。とはいえ寝るのを待っていては生活リズムが崩れてしまうので必要ではあるのだが、相手は人間なのでそう簡単にはいかない。

息子の場合はとても眠そうなのに、ころころ、もぞもぞ、ベストポジションを探すように布団の上を動いては、時々「ばぁっ!」と言ってひょこんと起きる。

かわいい。
でも寝ろ。寝てくれ。たのみます。

家事の先に自由時間がある身としては、少しでも早く寝て欲しくて、だんだん必死になってくる。

で、昨夜は焦りかけてきた頃に、息子が急にたくさんしゃべり始めた。

「今日ね〜」

ころんと体を私の隣に横たえ、気だるげな体を投げ出し、まだふかふかの手で車のおもちゃをいじりながらそう切り出した。

「ぱっぱ!」

パパかぁ。パパは今お仕事終わったところだよ。

「きゅーしゅーしゃ!しゅーしゅーしゃ!」

救急車かな?

「ぱっぱ!ちゅーちゅーしゃ!」

救急車かぁ。
最近、電車はすべて「しんかんせん!!」で高架線を走る姿が目に入るたびに叫んでいる。時に何もないところでも「新幹線!」と連呼していたりするので、そういうやつかな。

勝手に納得してそっかそっか〜と相槌を打ちながらトントンして、息子には寝ていただいた。

時は少し経って、居間にて。

夫が帰宅すると、息子の天使の寝顔を肴に、今日の出来事を話す。

朝は私の方が家を出るのが早く、ごはん以外の息子の準備、登園は夫の担当だ。

だから夫は「今朝の息子」を、私は「保育園と帰宅後の息子」について報告する。

このところベビーカー乗車を拒否し、ふらふら歩き回る上に、疲れて座り込むがベビーカーは嫌だ、抱っこせよ、という時もあって朝はなかなか大変らしい。

「今日も抱っこでさ、腕がプルプルだったよ……」12キロを超えた息子はなかなか重い。自由な息子を、時間を気にしながら送るのはさぞかし大変だろう。

「でも途中でごみ収集車がいたんだよね。そしたら息子、『しゅーしゅーしゃ!しゅーしゅーしゃ!』って嬉しそうに叫んでさ。運転手さんが、なんだ?って顔してた」

乗り物好きな息子のご機嫌のために、日常を走る車、工事現場ではたらく車、数分置きにやってくる電車は救世主だ。

はぁ、息子かわいいなぁと思いながら聞いていて、急にピンときた。

さっき息子は、「今朝、パパとごみ収集車をみた」と話そうとしていたのではないか。

たぶん、おそらく、だが。

そう考えると、急に何もかもが愛おしくなった。

朝の準備をして、トコトコ歩いて、暑いし疲れちゃってお父さんに抱っこしてもらって。

双方なかなか大変なのだけれど、そんな中偶然ごみ収集車に会えたことが、とても嬉しかったのだろう。パパの腕の中で感じた興奮。

それを、私に伝えようとしてくれてたのだ。

愛おしい。

楽しいと感じる感性が育っていること、それを伝えようとしてくれたこと、すべてが嬉しい。

その発見を話したら夫もでれっと顔を崩し、「パパと収集車みたこと話そうとしてたの〜?」「パパとの出来事、覚えていてくれたんだねぇ」と甘い声で寝ている息子に話しかけていた。

よっぽど嬉しかったのだろう。翌朝もご飯の支度をしながら同じことを息子に尋ねていた。息子は「あにょね〜※☆*※※◯×〜」とまだ上手く聞き取れない息子語で何かをすらすら喋っていた。

夫はひたすらにこにこしていた。

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