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肥薩線復旧の行方~持続可能なローカル線の試金石

球磨川流域豪雨で甚大な被害を受けてからやがて2年。JR肥薩線復旧を左右する最大の懸案事項でもあった事業費の負担割合について、ようやく国から案が示されたようです。昨日の地元紙では「肥薩線の復旧費235億円、国が半分以上『肩代わり』 鉄道での再建促し調整 JR負担、実質50億円未満に」との見出しが躍っていました。

https://kumanichi.com/articles/660644

従来のスキームからすれば、事業者負担のかなりの部分を国や地元自治体がみることになるので、復旧に向けた協議もいよいよ本格化するものと思われます。ただ、これまでのJR九州側の慎重な言い回しから推測すれば、これですんなり前進というわけにもいかないのでしょう。『実質50億円未満』という負担も重く、同線は元々管内屈指の赤字路線でもあることから、復旧後も行政側からどこまでの支援が得られるのか、シビアな交渉が展開されるものと思われます。

そんな中、平成23(2011)年7月新潟・福島豪雨で被災したJR只見線は、今年10月1日運転再開が公表されました。再開後、鉄道施設は福島県が保有し、運行はJR東日本が行う『上下分離方式』となり、経営責任は県が負うことになります。note記事「地方路線を守るのは誰なのか」でも取り上げていますので、ぜひご一読ください。

https://note.com/s_kohyama/n/n71ea0ac3c44d

被災路線に対する国の支援は、以前に比べれば格段に充実しています。そのおかげで只見線は再開の日を迎える目途がつきました。一方、JR四国管内全路線は赤字(2020年度)と報じられたことも記憶に新しく、JR四国に限らず、現在の民間企業主体の運営では、残る路線はごく僅かであることは明らかです。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20220517/k10013630061000.html

災害復旧にかかる費用は、税金であれ、国債発行であれ、結果的には私たちが負担するということです。であれば、沿線住民にとっては欠かすことのできない移動手段であり、只見線や肥薩線がそうであるように、貴重な観光資源でもあるローカル線の維持については、被災してから考えるのではなく、『上下分離方式』などの新たなスキームについてそろそろ本格的な議論を始めないと、一旦赤字路線として廃止されてしまえば、復活させるのは至難の業です。冒頭の地元紙の見出しにいちゃもんをつけるつもりはありませんが、「JRの『肩代わり』」という発想では限界があるということです。

肥薩線復旧の行方は、持続可能なローカルの試金石としても注目しておきたいと思います。

https://news.yahoo.co.jp/articles/863aa9080fb1ed9bd7453ab2c8f79907315a549f

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