Ｅテレの５分番組「びじゅチューン！」は、衝撃的な歌とアニメで古今東西のアート作品を紹介する番組だ。

その中で、画面の右下で縁の下の力持ちとして頑張る歌詞係を私は愛でポイントの一つとしている。
その正体の多くは元のアートの作者だが、作者不明その他の理由で、パッと見よくわからない者たちが歌詞カードを掲げていることも多い。

DVD BOOKには歌詞係が何者かもきちんと掲載されているので、

すでに1～５巻に収録されている作品については問題ない。

問題はまだDVD BOOKになっていない作品群の歌詞係だ。

来る８月４日、「びじゅチューン！DVD BOOK ６」が発売される。

私は当然とっくに予約をしたのだが（鼻高々）、今日はちょうど発売２か月前、DVD BOOK未収録の歌詞係の中で、かねてより正体不明の人々について調べたり推測したりしていたものをまとめてみた。

６巻に入る予定の作品（詳しくは下の表参照、「エスパーカフェ」～「プリマヴェーラに家庭訪問」の１７曲）については２カ月後に答え合わせができる。それに入りきらない今年２月の「鶴下ウェイ」以降のものは、たぶん２年ぐらい後の７巻発売を待っての答え合わせだ。

「びじゅチューン！」の放送を見てパッと歌詞係が何者を考えると、だいたい次の通りになる。
①アート作品の作者だろう
②作者ではないけれど関係者だね
③誰これ、もしくはナニコレ？？

である。

①と②は調べればすぐわかる。
特に①の中で↓このような人はとてもとても分かりやすい

「松林ズ」の長谷川等伯ｗ

②の例としては「書記に必要なギャルの精神」のこのヒト。

見ればすぐわかる。エジプトのアヌビス神だ。
エジプト繋がり。関係者。

画像はWikipediaからお借りした。
ちなみに私はギリで「アヌビス」という名を思い出した。

問題は、そう、③だ。

困惑するしかない歌詞係が登場することがある。オマエ誰やねん。

私が作品発表の2020年2月から１年３か月間その正体を悩み続け、今回この記事を書くにあたって本腰を入れた結果「やっと正体を突き止めた！」と思っているのがこの人だ。

「ひそひそと秘儀の間で」の歌詞係の女性。

絵柄からして、元になった美術品、ポンペイの秘儀荘の壁画の人物かと思って、秘儀の間の色々な画像を検索したけれどドンピシャなのはなく、なんだか壁画の女の人ならみんな係のヒトに見えてくる・・・と、決め手がなくてモヤモヤしていたのだが、

秘儀荘以外の壁画？

と、唐突に思いついて（もっと早く思いつこうぜ）「ポンペイ　壁画」で検索をかけた瞬間ビンゴが出た。

（画像はWikipediaより）
ポンペイの「貝殻のヴィーナスの家」と呼ばれる遺跡の壁画だそうだ。

貝殻のヴィーナスの壁画（そのまんまだ）

上記Wikipedia「ヴィーナスの誕生」の〈古典からの着想〉という項目だと、直接ではないけれどこの壁画は有名なボッティチェリの「ヴィーナスの誕生」のルーツの一つらしい。
「びじゅチューン！」だと「ヴィーナスの誕生」は「委員長はヴィーナス」という作品になり、これは記念すべき番組第１号の作品でまだ番組のパターンが固まっておらず、ゼピュロスの風に乗って画面に舞い散るバラの花びらが歌詞係を務めている。

「ひそひそと秘儀の間で」の歌詞係は一応解決を見て８月の答え合わせを待つだけだが、他に未だに決め手に欠けて単なる憶測でしかないものはまだある。

詳しくは後述するが、ひとまず2019年9月以降に放送された新作、DVD BOOKに未収録の作品と歌詞係及びその正体を見てみよう。

ほとんどが元となった美術品の作者だが、古代ギリシャの彫刻などは作者が分からない。
表がピンクに塗りつぶされ『正体』欄が？と表記されているものだ。

その場合、作品と何の関係もない歌詞係は決して登場しないのだけれど、じゃあ逆に一体何なの君は？　である。

２番の「アルルの訳あり物件」

歌詞係は〈アルルのジヌー夫人〉
これは元の絵の作者ゴッホが、もめて物件を訳ありにした因縁の相手ゴーギャンの素描を元に、何点か描いた肖像画の女性。
ゴッホが何点か描いているのでご丁寧に歌詞係も２パターンある

一緒に暮らすには無理があった二人だけれどアーティストとしては互いをリスペクトしていたことがよくわかる歌詞係のチョイスだ。

３番「電気さえあれば」の歌詞係はこれだが、

これは動画を見、曲を聴いてもらえば分かる。
電気だｗ
ちなみに元のアート作品「電気服」はもちろん現代の作品で作者も分かっているしその写真もあるのだが、係は電気だｗ（作者は田中敦子氏）

６番「ひそひそと秘儀の間で」についてはもう書いた。
やっとわかったこの喜び！

７番「お互い擬態」の歌詞係は鬼

これはモデルとなった熊野磨崖仏に至る１００段もの階段を、一晩で築いたという鬼ではないだろうか？（下のリンクの観光サイト参照）

掲げる歌詞カードも石の板で、階段の建材のようだし。

あまりにかわいらしいから、ずっと不動明王に踏まれている邪鬼か何かだと思っていたけれど、今回調べてみたらこのような推測ができた。

　↑　伝説の階段！
画像は豊後高田市公式観光サイトからお借りした。

１６番「続いては、信貴山の石橋さ～ん」の歌詞係、老婆。

今回の調査でこの人が一番分からない。
穏やかで上品そうなお婆さんだ。

多分絵巻の中の登場人物か、主人公命漣上人の関係者。しかし色々なサイトで「信貴山縁起絵巻」の〈飛倉の巻〉の画像をアップにしてみたけれど、こんな上品なお婆さんはどこにもいない。
女性は不思議な法力に驚き騒ぐ、あんまり好意的に描かれていない感じの若いお姉ちゃん？ばっかりだ。

で、〈尼公：あまぎみ：の巻〉まで見て、辛うじてこの人かな？と思う、命漣上人の生き別れになっていたお姉さん（尼公）にたどり着いたのだけれど・・・

微妙に歌詞係とは違うよねぇ・・・（画像はWikipediaより）

（2021.6.7追記
下の画像の尼公の絵だと似ているかも。

画像は平群町ホームページからお借りした）

私の知識ではこれ以上は無理である。
答えは２年ほど後、DVD BOOK７巻が出れば分かるだろうw

１９番「書記に必要なギャルの精神」のアヌビス神については上で書いた。

２０番「玉虫の家庭教師が玉虫厨子」のこの方たち

分からなすぎる風体の割に勘を頼りに厨子の絵柄を調べたらすぐわかった。けれど正体の説明がちょっとめんどくさい。

大雑把に言うと玉虫厨子に描かれている図柄だ。面倒な方は以下の細かいことはスルーして下さい。

以下詳細
まずこの人

玉虫厨子の最上部、宮殿（くうでん）部の左右の扉の絵として描かれた二菩薩の立像図だろう。（画像はWikipediaより）

最上階である宮殿部は、正面だけでなく左右の壁も、壁でなく扉となっていて開くのだそう。
その左右の扉にそれぞれ二菩薩立像が描かれている。きっと観音開き。

じゃあさらに分からないキミは誰だ？

これは宮殿部の下、台座とのあいだにある大きな箱型の建造部分、須弥座部の背面に描かれたナニモノか。
この生き物の名前は分からないし、Wikipediaの本物を映した画像だと傷みがひどくてよく分からないのだけれど、奈良国立博物館収蔵の玉虫厨子の模造の画像だとよく分かる。

ここの画像は勝手にお借りすることはできないのだけれど、上のリンクから飛んで、ページの２番目のH022570という番号の画像：須弥座部背面須弥山世界図：をクリックして表示させ、さらにずずいとアップにしてもらうとよく分かる。

中央に建物のような松の木のような須弥山があり、その根元に巻き付いている２体の竜のようなシャチホコのような生き物、顔を左側に向けているアイツがきっと歌詞係の彼だ。

デフォルメされていても特徴が一致して一発で分かるので、ぜひ見てみてほしいｗ。

ちなみに菩薩立像も同じページの下の方、白黒のA270513、A270514　という番号の画像を同じように表示させると、はっきり分かる。

ああ、説明が大変。
でも勘で正解が早く出て嬉しかった作品w

（2021.6.6追記　謎の生物はやはり龍らしい。長谷川智治さんという方の論文の図22のところ、ページだと25/35にその記述があった）

そして現時点の最新作、２１番「スパイゴッデス」の歌詞係はこの人だ。

最初ナポレオンみたいだと思ったのだけれどいやいやあの人はエジプト方面、「ミロのヴィーナス」で検索したらすぐ出てきた。

そっくりｗ　（Wikipediaより）

ジュール・セバスティアン・セザール・デュモン・デュルヴィルという名のフランスの軍人兼探検家だそうだ。
この人は、ヴィーナスの発見されたミロス島で交渉をし、ミロのヴィーナスをフランスにもたらした人だとか。
現在ミロのヴィーナスはルーヴル美術館におわす。

余談だがこの「スパイゴッデス」、映画「００７」のテーマを下敷きにした曲調で脳内ヘビロテ度が高い。
脳を中毒にする怪しい波長がこっそり仕込まれているのではないか。スパイものだけに。

それにしてもヴィーナス委員長、高校時代は特待生にまでなる優等生ぶりだがこのスパイ稼業のゴッデスはあなたの将来の姿であろうか？
別人？

これも２年後DVD BOOKで秘密が明かされることを期待したいｗ

いずれにせよ、２か月後の６巻、そしてはるか先の７巻の発売が待ち遠しい。
楽しみなことよ、ふふふ・・・

それにしても今回は割と学術的であったｗｗｗ

このような記事を最後までお読みいただいたのなら、本当にありがとうございます。

以上、「びじゅチューン！」の未発表歌詞係の正体をを大まじめに探ってみました。

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