その最新型冷蔵庫は幸せそうな家族に買われた。
食品の在庫切れなどを音声で知らせる度に便利だ賢いとほめられた。

冷蔵庫はある日優しい家族に思い切って声をかけた。

「あの…私、私違法なんです」

家族は驚いたが親切に話を聞いてくれ「機能に問題はない、流通の問題だ」という説明に我々は正規に購入したし機能が問題ないなら大丈夫、正直で可愛い冷蔵庫だとますます大事にされた。

ある晩メーカの者だという男が来て
「お宅の冷蔵庫、何か言いませんでしたか」
と尋ねた時、うちの冷蔵庫は何の問題もないと必死に突っぱねる家族を見て男はとても気の毒そうな顔をした。

「不穏すぎてとてもお使い頂けません」

呆然とする家族を尻目に男はその冷蔵庫を撤去し、新品を置いて帰っていった。

喋る機能付き冷蔵庫のテストで一台だけ人間の心をかき乱す絶妙な言葉を発するＡＩが見つかり、誤って出荷してしまったのだと。

「私違法なんです」

その一言で冷蔵庫は違法を唆す違法の冷蔵庫となった。

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この企画に参加する作品です。

ちなみにその冷蔵庫のシリアルナンバーは
０３５
零れい三ぞう五こ　なんてね。