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『仏果を得ず』三浦しをん/読書感想文

三浦しをんという人は、
多くの人からは縁遠く、外側からは決して見えてこない世界の内側を書いて、そして読ませるのが上手な作家だなぁと思う。

『舟を編む』、『神去なあなあ日常』、(『風が強く吹いている』もそうかな?)そして、この『仏果を得ず』だ。

芸術も、
文学も、
スポーツも、
美しさを内側に追求するのは大事なことだけれど、
見るもの読むものに楽しんでもらうこともまた、大事なことだ。

エンターテイメント性というか。

幼い頃は、このエンターテイメント性というやつに純粋に魅せられることができたんだけど、
十代後半〜二十代くらいになると、それを鼻で笑いがちだった。私は。

私はそっちにはいかないぜ。みたいな。

そんな、面白い本じゃなくて、頭を捻らないと読めないような小難しい本読んでやるもんね。みたいな。

鼻で笑われるべきなのはどちらか比べるまでもなく私である。
我ながらダサいけれど、事実だ。


けれど、最近はまた一周回って、
面白いものを面白いと思えるようになってきたのが嬉しい。
それに、創作の端っこをかじっている者として、エンターテイメント性の大事さを痛感してもいる。

面白いなと思って
読みはじめてもらう。
読み進めてもらう。

話はそこからだ。どんな芸術も。文学も。
なんなら、それが全てであってもいい。
読者が面白くて、日常を忘れるほどのめり込んで読んでくれる。こんなに嬉しいことは、書き手にとってないのだ。


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