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本から感じる共感ではないなにか ~『神も仏もありませぬ』/読書感想文

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cafe de 読書の9月の課題図書は、エッセイにしようと思って、
手に取ったのが佐野洋子の『神も仏もありませぬ』です。

絵本『100 万回生きたねこ』や『おじさんのかさ』で有名な佐野洋子さん。

調べてみると、没後10年以上たった今も「ふつうがえらい! エッセイスト 佐野洋子展」(9/19に終了)などが開催されているくらい、人気のエッセイストなのだそうです。

これまで小説家が書くエッセイ、芸能人が書くエッセイ、noterさんが書くエッセイは読んできましたが、絵本作家の書くエッセイとは一体どんなものだろう、と読み進めました。

1.共感が全てじゃないな、と思ったわけ。自作『綺麗な彫刻』の裏話

このエッセイの主題は、「自然」と「生と死」だと感じます。語り口はあくまで軽快・痛快ですが、テーマは深いです。

正直、30代で都市部で生きる私には、ピンとこない内容のものもありました。けれど、普段あまり考えていないテーマだからこそ、この本を通して、見つめる時間が持てて良かったなと思います。
共感だけが、本の良さではないなと最近は思うのです。

最近何があったのって、しばらく私のnoteのトップに固定している『綺麗な彫刻』という青春小説の話をさせて下さい。



私設の企画に応募し、noteの注目記事にも選んで頂いて、なかなかよく書けたなと自画自賛している作品です。

この『綺麗な彫刻』を書くちょっと前に、「なんか気持ちが悪いなぁ」と感じる小説を読んだのです。その頃は、共感できる、爽やかだけどエモいみたいな小説ばかり読んでいたのですが、その小説は真逆で、久しぶりに後味悪いものでした。イヤミスという分類になるのかな。私にとっては、読んだ直後はなんかハズレだったな。なんて思ったりしていました。
(正直な気持ちを書いているのですが、失礼なので本のタイトルを出すことは控えます)


それでも、強烈に自分の中に残りました。何もしていない時間にも、その本の描写が思い浮かんできたり。
『綺麗な彫刻』とは内容も主題も異なるのですが、影響を受けたなと強く思います。自分でもそこにあるなんて気づいてなかった扉を、開いてくれたような感じです。自分が今まで書けなかった世界が書けたような気がしました。

まだ知らない世界を見せてくれるのも、また本の良さです。そういう本を読むのはエネルギーがいります。けれど読み進めるスピードは遅くても、後まで心の中に残り続け、自分をグワッと広げてくれたりするものなのかなと、今は思っています。

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