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【短編】モスコミュールとロングアイランド (下)

いい美女(おんな)

「何になさいますか?」
「そうねぇ、、、それ何?マスターが飲んでるの。」
「ロングアイランドです。」
「紅茶を使わない紅茶のカクテルだっけ?」
「そうです。紅茶リキュールを使う別の物もございますが。」
「それにする。」
「畏まりました。」

「行っちゃったね。あの娘」
「そうですね。今日、向かわれたそうです。」
「ん?、、、娘、知ってるの?」
「え、娘?、、、あの娘のお父さん?」
「はい、褐色の娘の父です。」
「ど、どうも。私、良く一緒に遊んで、、、いえ飲んでました。」
「それはそれはありがとう。、、、そのロングアイランド、私に奢らさせてください。」
「結構です。見知らぬ方に奢られるの好きじゃないので。」
「お礼です。今までの娘に対する友情への。」
「好意だけじゃないかもしれないですよ。」
「それも含めて、友情でしょう。」

「少し、お話しませんか?、、、あなたの事、聞かせて貰えません?」
「……何も話す事ありません。」
「あなたの様な美しい女性には、ほとんど縁の無かったこの老いぼれに、妄想のネタを分けて頂けませんか?」
「やっぱり、、、イヤらしい想像のネタなんか話す事はありません。」
「妄想です。想像ではなく。」
「どこが違うの?」
「想像にストーリーは有りません、写真みたいなもので。妄想は物語を綴ります。……個人的な解釈ですが。ハハハ。」
「聞いてどうするの?」
「実は私、10年前から SNSで小説とかを投稿してまして、、、もうすぐ 50作品、1000記事くらいになります。」
「どこで?、、、なろう?、カクヨム?」
「秘密です。」
「良いじゃない、教えてよ。実は私、小説とか好きだからさぁ」
「私の物は、面白くないですよ。登場人物が不幸になりませんから。それに、些細な事に屁理屈つけて、捏ね繰り回せるほど、語彙が豊富ではないから。」
「それって、誰かへの当てつけ?」
「違います。そこまで褒められるような物書けてません。それに全て無料公開ですし。」
「勿体無いな~。100円とか200円とかの有料にすれば、今頃、お金持だったかもしれないのに~、、、あっ、noteだ。そうでしょ!」
「ノーコメントです。」
「誰?誰?、、、何て名前で上げてんの?」
「内緒です。」
「良いじゃない。だったら私の事も教えてあげな~い。」
「……ヒントは、妄想エロ爺いで自分の事を紹介してました。最初の頃。」
「ん?、、、どっかで見た様な、、、、、、、これでしょっ。」
「知らんぷりしておきます。」
「へえ~、、、貴方だったんだ。これって。」

「で、私の何を聞きたいの?」
「男の事、仕事の事、夢の事。でしょうかな?」
「男ねぇ、、、実はねぇ、、、別れて来たところなんだ、、、今日。」
「はい。、、、もう一杯、奢りましょうか、、、マスター、おかわり。」
「畏まりました。」
「その男とはね、もう2年くらい付き合ってたんだけどね。結婚とか、子供とか、家の事とか、夢に見てたんだよね、、、いっちょ前にさ。
 でもね、仕事が忙しくって、リーダーとかやる様になって、新人の子も教育係とかする様になって、余裕なくなったんだよね。時間も気持ちも、何もかも、、、
 でね、同時進行でさ、上司とも不倫してたのね。それも、良い仕事廻して貰えるようにって打算付きでさ。まっ、それでリーダーにもなれたんだけどね。
 たまに時間が出来て、連絡したらさ、会ってくれるの、彼って、ホント優しいから、、、食事とか映画とか時間かかって面倒くさいじゃない。・・・で、すぐ、ホテルへ行ったり、公園で立ったまましちゃったり
 そんなのが続いちゃってね、、、彼もさ、向うからあまり連絡してこなくなったり、会話も減って、さすがに私も不安になってきて、聞いたのさ、、、、、、
 いつかは、一緒になりたいねって。そしたらさ、、、、彼ったらさ、、、
 『セフレだと思った。だから、結婚はしない。将来の事とか話してないし、休みの日はどうするって聞いたら、仕事とか、人に会うっていつも言ってたから、、、
 セフレがちょうど良いのかと思ってた。』……って、、、
 私ったらさっ、『そうだよね、そういう関係だよね。』って、誤魔化したの、、、自分と相手、両方に、、、」

「貴女が会いたいと言って連絡すれば、会って貰えたんですか?」
「うん、、、会えてた。あまり忙しく無かったみたい。」
「ふ~ん、、、そうですか。優しい方だったんですね。」
「うん、その優しさに甘えてた。私、好き勝手にしてた。自業自得よ。」
「もしかして、叱って欲しかったんですか?」
「そうかもしれない。しがらみとか繋がりと全部、捨てちゃえ。って言って欲しかった。……今思えばだけどね。」
「その男の人、拗ねて、正直になれないのかもしれませんよ。連絡してあげて下さい。」
「そんな事無いよ、、、こんな女、要らないよ、、、もう良いの、引き摺るの辛いから。」

「今夜はありがとう。ネタ、少し膨らんできました。もう少し、膨らませます、、、もう十年、私が若ければ、下半身も膨らんだのですが。」
「やっぱ、エロ爺いだわ。……着いてっちゃおうかな?」
「ハハ、貴女は本当に良い女だと思いますよ。でも、私は、小心者の早漏ぎみの臆病者なので、、、」
「フフっ、要らないワードがあるわね。……じゃ、マスターに慰めて貰おうかな?」
「私も同類の男です。」
「あっ、そう、、、でもいいや。話し聞いてくれたから。ちょっと楽になっちゃった。……ありがとさん。臆病者の妄想エロ爺いさん達。」
「どういたしまして、お嬢さん、、、、おやすみなさい。
  マスター、、、、長い間、お疲れさまでした。じゃ、、、さよなら。」
「ありがとうございました。お元気で。」

カラン、コロン。


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