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しょうもない雑記と短編小説を投稿しています。『タメにならないけど時間を潰せるnote』がコンセプトです。

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    2023年05月の体験談

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【短編小説】均一かつ日替わりのジャム

 ーーメモ1 テーブルの上の青いノートを見ろ。  アラームが鳴り響いた寝室の部屋の天井に張り付けられた画用紙に記された文章は、今しがたその音で目覚めたばかりの男の視界に入ることでその役割を終えた。それは、部屋の住人である男に小さな溜息をつかせたことを確認しては、昨日も、また明日もただそこに在り続ける。  ーーメモ2 お前は朝起きたらまずトーストを焼く。  男は特別だった。ベッドから起き上がりパジャマのままキッチンへ向かってトースターに食パンを入れた後、テーブルの上の青い

    • 思い出深い、出張の話

       どんな仕事に就くかやどんな会社に勤めるかによってまちまちではあるのだが、おおよそ出張というものは楽しい。  出社してオフィスで長い時間を過ごして終わる日常に対して、遠方に出て宿泊をするというタスクがついてくる出張という非日常の魅力はデカい。  特に20代~30代前半くらいであればまだ体力もあるので、移動疲れさえも楽しめる。 「出張って神」「出張しかしたくない」「俺の名前は出張」と思い、働く日はなるべく出張になるようにスケジュールを組むまである。それほどまでに楽しい。

      • あ〜、こんなとき俺が2人いたらな〜。

         めちゃくちゃ多忙なときや時間が足りないときに「あ~こんなとき俺が2人いたらな~」と思うことはないだろうか。多分、全員あると思う。  俺は思いすぎて「あ~こんなとき俺が1ダースいたらな~」と思うまでになり、さすがに全く共感されなくなった。そのせいで今は村で迫害されている。  冗談はさておき、実際に俺が2人になったら本当に便利なのか、それを良いことだと思うのか、それがあまりにも気になったので思い切って先月から2人になってみた。  今回は実際に2人になった俺が、今思っている様

        • あのインドカレー屋のナンのデカさに俺たちはまだ慣れない

           君たちはインドカレー屋に行ったことがあると思う。ない奴は今すぐここから出て行け人は、これからインドカレー屋に行くにあたってのある種の心構えとしてこの記事を読んでほしい。  インドカレー屋のナンはめちゃくちゃデカい。インドカレー屋に行くと、100%の人が「ナン、デカすぎだろ」と思う。そしてそのうち100%の人が「いやデカすぎだろ」とすぐにもう一度思う。インドカレー屋のナンというものは、それほどまでにデカい。  もちろん、ナンの大きさは店ごとに違う。しかし「デカくない」とい

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        【短編小説】均一かつ日替わりのジャム

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          ピザカッターって貯金だ

           ピザカッターって「ほぼ要らないけど要るもの」のランキングでかなり上位に入るよな。俺も一応持ってるけど、キッチンの引き出しの中で見るたびに「こいつ要らないだろ」と思うんだよ。 でも、持ってなかったとき(長い間持ってなかった)に何度も何度も「ピザカッターさえ持っていれば」と思いながら包丁を使ったことがあって、あのときの複雑な気持ちって俺なかなか忘れられないんだよな。 結局のところ「なくてもなんとかなる」は事実だから、絶対に家にないといけないような道具ではない。で

          ピザカッターって貯金だ

          水面を歩ける能力は青いカレーだ

           もしも俺が水面を歩ける能力を手に入れたらっていう話なんだけど、これって全然意味なくてさ。いや、話が意味ないんじゃなくて、能力に意味がないのよ。なんだよ「水面を歩ける」って。  まぁ、水面を歩ける能力を持っていたら、とりあえず水面を歩いてはみるよね一旦。一応ね。川とか海とかでさ、うおーすげー!歩けるー!って、めちゃくちゃ感動すると思う。何故なら人は基本水面って歩けないから。最低でも3日くらいは水面歩きっぱなしだろうし、1か月くらいは各所で「俺、水面歩けます」みたいな顔もすると

          水面を歩ける能力は青いカレーだ

          何曜日を倒したら勝ちかという話

           土日休みの人間にとって「金曜日を倒したら勝ち」なのは言うまでもなく事実なんだけど、個人的に「金曜日を倒したら勝ち」と思っている状態で過ごす金曜日ってもはやもう勝ってるでしょ、と思っている。つまり俺の中では木曜日を倒したら勝ちで、金曜日は消化試合のような扱いなんだ。俺が何を言ってるのかよくわからないという人には大変申し訳ないけど、本記事ではこのクソみたいな話を少し広げる。  その理屈で言ったら木曜日も「木曜日を倒したら勝ち」と思って過ごしてるんだから消化試合になって、実質水

          何曜日を倒したら勝ちかという話

          【日記】9/23

           雲一つない快晴を100とするならば76くらいの晴れ模様。自宅のドアを開けて外に出てみると、そこにもう夏はいなかった。匂いがしなかったのだ。この週末に誰かと、たとえば大切な人と、共に過ごす予定を立てなかったことを後悔した。今日がとても涼しく、今年初めて秋を感じる日であったことにSNSで一言だけ触れて車に乗り込むと、そこに少しだけ夏の残り香があった。時刻はまだ昼前だった。  自宅から5キロほど離れたガソリンスタンドで洗車をしている間、高騰しているガソリン価格が高々と掲げられて

          【日記】9/23

          【日記】8/25 余裕と。

           自分がもっとも人生で好調だったときに『大体のことはどうでもいい』と思っていたのは、持っている余裕から来るただのポジティブさだった。勿論投げやりな思考停止などではなくて、様々なことを考えるには考えるが、その結論が自分の何かを左右することがないとわかっているからこそ使える『どうでもいい』だった。俺は最近、ようやくというか、ふと、この感覚を思い出した。  身の周りの人間が善人だろうが悪人だろうが、誰に何をされようが、どうでもいいのである。自分にはそれを完全な心のコントロール下で

          【日記】8/25 余裕と。

          【短編小説】水辺の猫

           圧縮していただけだった。その広さに限りのある『心』という空間に、喜びや幸福感という動き回ったり膨れ上がったりする感情が居座れるようにと、水を全て抜いてカラカラに圧縮して隅の隅に退けていただけだったのだ。それがかつて私の心の全てを占拠していた悲しみであり、苦しみだった。私は長年、頑なに水辺を通ることを避けてきたというのに。  エアコンの風量はラジオの音をかき消すほど強く、熱の籠る黒のレザーシートは背中に不快感をもたらす。ここまでは私にとってなんてことのない、例年通りの夏であ

          【短編小説】水辺の猫

          【短編小説】柄のシミ

           薄暗く冷たい倉庫の中で積み上げられた段ボールのプリントが、にやりとして、私のことを嘲笑っていた。視覚だけではなく聴覚でもそう感じたとき、私は常軌から狂気に足を踏み入れたことを自覚した。 それの底が入口からやけに近いところにあると思えたのは、おそらく傾斜が極端に急、もしくは断崖絶壁で、あとは抗う術もなしにただ落下していくだけであったことが近因であろう。 懸命にみっともなく常軌に縋りながら、じりじりと足場を失っていく恐怖を刹那の暇もなしに浴びながら、気付けば、突然、

          【短編小説】柄のシミ

          【短編小説】バス停の行列

          ※以前に書いた以下の物語と同じ世界の話です  市営の美術館で行われている名も知らぬアーティストの個展を出版社勤務の編集者はゆったりと眺めていた。毎度待ち合わせの時刻に大幅に遅刻してくる作家との約束の時間はまだ過ぎたばかりだったので、編集者の頭の中にある『実質の』予定では、待ち合わせの完遂はまだ少し先の時間になるはずだった。  編集者はその広い館内に展示されている幾多の理解不能な作品の中に唯一自身の感性に触れる謎のオブジェを見つけると、そこで足を止めて何を考えるでもなくそれ

          【短編小説】バス停の行列

          noteの読みたい記事・読みたくない記事の話

           もしかしたらこれは僕自身がSNSではTwitterを頻繁に使うタイプの人間だからそう思うことなのかもしれないけど、このnoteという媒体の中に存在する無数のクリエイターによる無数の記事は『読みたい記事』と『読みたくない記事』とで明確に分かれていて、なおかつ『読みたい記事』を書く人はずっと『読みたくなる記事』しか投稿しないし、『読みたくない記事』を書く人はずっと『読みたくならない記事』しか投稿しないという見解を持っている。ただこれは僕自身の嗜好がすべてなので、この記事そのもの

          noteの読みたい記事・読みたくない記事の話

          noteの更新頻度が落ちている話

           noteが更新できていない。これは労働がバタついていることが原因ではあると思うのだが、もう少し紐解いていくと『自分という人間が一日にアウトプットできる文字(情報)量』というものが存在していて、それと相関が深いのではないかという仮説が立った。  もしもそれに上限めいたものがあるとしたら、仕事上の会話やメールで消費してしまうと創作に注ぎ込める文字数が各段に減ってしまう。僕は中長期的な視点では筆が早いわけではないが、書き始めたら目標地点までは一気に書き終えられるという特性がある

          noteの更新頻度が落ちている話

          なめこ入ってるなら『なめこ汁』って書けよって話

           俺はなめこの味噌汁が苦手だ。あと、しじみとあさりの味噌汁も苦手。それについて『良い歳こいた男が好き嫌い多くて恥ずかしい』などという要らない意見を述べてくる奴も苦手。一生加速し続ける一生止まらないトロッコに乗せてやりたい。  この『よく味噌汁に入っている具で苦手なものがある』っていう人、わりと日常生活において不便だと思っている。不便というか不利。世の中に対して不利。負けやすい。勝ちにくい。ナメられてる。弱みを握られてる。  定食屋でもなんでも大体は『味噌汁』としか書いてな

          なめこ入ってるなら『なめこ汁』って書けよって話

          【短編小説】起きたイベント、起こすイベント

          「68円のお返しです」  真夏の昼下がり。都内某所のコーヒーチェーン店内で小銭とレジスターの音を鳴らしたアルバイトの大輝には、単位のことや今夜の飲み会のことや就活のことよりも、大層に関心のある物事があった。  綺麗な水色の財布にお釣りとレシートをしまうピンクブラウンの長い髪の女の視線が手元にあるうちだけ、大輝はその透き通るような白い肌にくっきりと映える長い睫毛を見つめては、ほんの一時の小さな幸福を感じていた。  視線が戻ってくれば目を逸らし、マニュアル通りの『ありがとう

          【短編小説】起きたイベント、起こすイベント