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ロッテンマイヤーさんはなぜコワい??

「ロッテンマイヤーさんは、なんでこんなにコワいの?」
と、小学3年生の娘に聞かれた。

娘はよく本を読む。

去年の休校が始まったときから、読書ノートを付け始めたのだけれど、
100冊を超えてからはもう面倒でナンバリングはせず、書名だけ。
たぶん200冊は超えていると思う。

同じ本をじっくり読み込むことも大事だと思うから、
冊数はとくに気にしていないけれど、問題は中身だ。

本をよく読む割には、低学年向けの本ばかりで、
少し字が小さくなると、途端に読まない・・・。

先日読み終えた角野栄子さんの『おばけのアッチ・コッチ・ソッチ』シリーズで、もう低学年向けの本は残ってないよ・・・どうしよう。

でもこれで次へのステップだ。

何が良いだろう。
そういえば名作って一つも読んでいないことに気付く。字が小さい・本文が長いと読まないのだから、昔からある単行本は無理だよね・・・。

ポプラ社の『ポプラ世界名作童話』、学研の『10歳までに読みたい名作シリーズ』はイマドキの可愛い挿絵になっている。

原作の絵がどれも好きな私は、絵もその作品の世界観なんだけどなぁ・・・とすごく葛藤があった。それに内容もこんなに短くていいのかなと思ったけれど、
たとえば夏目漱石など日本の古い文学作品でも、作品自体を楽しんでもらうために小学生向けに読みやすくしてあるというのを知って、まずは取っ掛かりが大事かもしれないなと思いなおす。

そしてやっぱり本離れが進んでいるからか、イマドキの可愛い挿絵に変えて、ほぼあらすじでまとめた名作本まで出ている。本業界の苦労・親の想いが垣間見える・・・。

図書館に行き、まずは世界の名作のタイトルを見てみる。

暗い!どれも暗い話ばかり・・・。

「暗い」とひと言でいう私の表現が乏しいのだろうか。でも親の私の好みで決めてしまっては、かなり狭くなりそうなので、それは読んだ子供が判断することか。

とりあえず『10歳までに読みたい世界名作』シリーズの明るい本から少しずつ借りてみた。

まずは『オズの魔法使い』と『不思議の国のアリス』
どちらも夢中になって一気に読んでいた。
「ちょっとコワかったよ」という感想。

『長靴下のピッピ』は面白かったよう。

『風にのってきたメアリーポピンズ』も面白かったようだけど
「でも、メアリーポピンズさん、ちょっとコワいんだよ。日本の『まじょのナニーさん』の方が優しいよ。」とのこと。だけどこれは文庫本も読んでみるとのこと!

『あしながおじさん』は設定が理解できないようで、
「これ何年生向けの本?」と聞いてきた。

6年生になってもその設定は分からないと思う・・・。
「読んで分からなくても、とりあえずそのまま読み進めるといいよ」とアドバイス。

しかし、そもそも世界の名作って私はほとんどテレビアニメ「世界名作劇場」で見てきたなぁ。日本にはないことでも、何となく毎週見ているから、何となく理解できてくるけれど、一気に本で読んで理解するのは難しいのかもしれないなと思った。

だけれど、今はそれでいいのだろうなと思う。


そして冒頭の『アルプスの少女ハイジ』

「ロッテンマイヤーさんは、なんでこんなにコワいの?」

たしかに(笑)。そんなに怒らなくてもいいのにね(笑)。
でもお母さんよりコワい人がいると知ってくれて良かったよ・・・(笑)。
それにしても難しい質問だ。
それによく考えたら、私もハイジの設定が分からない。
(本をペラペラ、ふむふむ。始めに物語ナビが載っている!)


「ロッテンマイヤーさんは、お母さんじゃないからね、お金を払って雇われている人だから、お金をもらっている以上、ちゃんと勉強を教えたりしつけをしたりしないといけないから、厳しくなっちゃったのかな。」

この説明で分かっただろうか・・・。まず「お手伝いさん」とか「家政婦」「召使い」「使用人」とか分からないかな・・・。

「クララにきちんと勉強を教えたいから、ハイジが邪魔だったのかな・・・」と言うと、

「でもクララの遊び相手を探していて、ハイジが来たんだよ」

え?そうなの??

「『小公女セーラ』も、何で先生は冷たいの?」

「セーラがお金がなくなったら、急に先生きびしくなったね・・・。お金のない人には冷たいんだね・・・」と説明している私が辛くなってきた(笑)。

身近にこんな世界がないから、さっぱり分からないよう。

そして娘の性格が、年齢もあるかもしれないけれど昔から特定の子だけで固まるのではなく「みんなで仲良くしよう」というのが根底にあるので、ますます理解に苦しんでいるようだ。

ところで私は小さい頃、本屋へ行って「好きな本買ってあげる」と言われた時、やっぱりイマドキの可愛い挿絵で小さめの絵本、『人魚姫』を選んだ。帰って読んでみたら、人魚姫はハッピーエンドじゃなくて、
なんでこんな本を選んでしまったんだろうってすごく後悔した。
他にもハッピーエンドのお話はたくさんあったのに!
王子さまを刺すことはできないけれど、他に何か道はなかったのか。そして私が何より辛く感じたのは、王子さまを助けたのは人魚姫なのに・・・ということ。最後までそれを気づかれることなく、感謝されることもなく、泡になってしまうなんて。この後悔は少しトラウマのように、長く心に残った。今の私の、どの部分に作用しているのだろう。


『アルプスの少女ハイジ』をもう一度じっくり一人で読んでみると・・・、ハイジの無垢な心、優しい心に感動してしまった。
『10歳までに~』のこの本で、十分にお話の魅力が分かる。
アニメにはアニメの良さがあった。アルプスの大自然。干し草のベッド。ふわふわの白いパン。
でもやっぱり本には本の良さがある。

10歳までの固定観念にとらわれない柔軟な時期にこそ、世界の人々がこぞって読んでいる作品にざっくりとふれ、心を動かし、豊かな感性で「こんな話もあるんだ」とインプットしてほしい、そして中高生になったらもう一度、次は完訳の形で読み、さらに作品の深い部分をじっくり味わってほしい、と思います。
(監修・横山洋子さんの言葉)


そしてロッテンマイヤーさんはなぜそんなにコワいのか。

自分の価値観でしか人を見ることができない。
理解できないものに対して、怒りの感情が出てくる。
相手の事を考えられるだけの、自分の心に余裕が無い。

ハイジがいなくなって、ひょっとしたらぽっかりと穴が開いてしまったかもしれない。

まずはその穴に気付くことさえできれば、あとは雪解け水のようにチョロチョロと少しづつ、氷のような心も解け出していくに違いない。


娘が本当の意味で理解できるのはまだまだ先のことだろう。
とりあえず、世の中にはロッテンマイヤーさんのような人もいる、かもしれない、ということだけ。

誰の心の中にもいるのかもしれない、と気づいたら、もう大人だ。

『10歳までに読みたい世界名作』シリーズ。
意外と、完訳本を読むほどの時間のない大人にも、おすすめというか・・・私におすすめだった(笑)。

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