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読書記録:「審議官-隠蔽捜査9.5(今野敏著)」

北海道在住のコンサポ登山社労士のkakbockです。

先日、警察小説が非常に面白い今野敏氏の著作の中でも、私の大好物である隠蔽捜査シリーズ最新作の「審議官-隠蔽捜査9.5-」を読みました。

今作のように、「○.5」となっているものがいくつかありますが、これらはスピンオフ作品で、短編集となっています。

これまでに、3.5、5.5、それから今作9.5の3作品がスピンオフです。

本流のシリーズは、9まで発表されています。


あらすじ・感想(ネタバレあり)

米軍から特別捜査官を迎えた件で、警察庁に呼び出された竜崎伸也。審議官からの追及に、竜崎が取った行動とは――(表題作)。竜崎の周囲で日々まき起こる、本編では描かれなかった9つの物語。家族や大森署、神奈川県警の面々など名脇役も活躍する、大人気シリーズ待望のスピンオフ。本書のための特別書き下しも収録!

<収録作品>
空席
内助
荷物
選択
専門官
参事官
審議官
非違
信号

新潮社公式サイト

今作は、9つの短編が収録されており、それぞれ、本シリーズの主人公である竜崎伸也以外の登場人物が主人公となっています。

このシリーズで出てくるキャラクターは、竜崎と敵対する立場の人物でも、すごくキャラが立っており、魅力的なキャラクターばかりです。

無駄な人物が出てこないというか、どの人物が主人公でも面白い話になると思います。

というか、竜崎以外の登場人物が主人公としても、竜崎が何らかの形でからんでくるので、読まないわけにはいきません。

竜崎が直接登場しなくても、「竜崎だったらどう考えるか?」のように、ものすごく物語に影響があるので、もう完全に隠蔽捜査シリーズなんです。

今回の隠蔽捜査9.5の各作品の簡単なあらすじ(ネタバレあり)はこんな感じです。

1.「空席」

竜崎がいなくなった後、新署長が来るまでの大森署が舞台の話で、斎藤警務課長と貝沼副署長らが署内での問題に対応するという話です。警視庁に戻った竜崎にアドバイスを求めたことで、一気に問題解決に向かいます。

2.「内助」

竜崎の妻である冴子が主人公の話で、冴子が感じた既視感をきっかけに、ある事件について竜崎にアドバイスすることで、ある事件が解決してしまうというものです。冴子もさすが竜崎の妻という感じですが、素人である妻の推理を素直に聴く竜崎がすごいです。

3.「荷物」

竜崎の息子である邦彦が主人公の話で、薬物使用で捕まってしまった過去があり、そのせいで父の竜崎が大森署長に左遷されてしまった引け目がある邦彦が、意図せず薬物の運び屋にされてしまった!という状況になり、思い悩んだ結果、竜崎に素直に相談したところ、一気に問題解決に向かうという話です。竜崎が邦彦に言った言葉で印象的なのが、「お前の判断で一番良かったのは俺に相談したことだ」という趣旨の話をしたというものです。

4.「選択」

竜崎の娘である美紀が主人公の話で、通勤途中に逃げた痴漢が逃げるのを阻止して大事なプレゼンに遅刻しそうになったことを上司に説教され、その上司には飲み会に誘われ、 痴漢は冤罪の可能性があるとのトラブルになり、警察に疑われます。結局、竜崎の娘であることがわかり解放され、上司とも何とかうまくやれそう・・となる話です。

5.「専門官」

神奈川県警の板橋捜査一課長が主人公の話で、事件発生で捜査本部をつくるかどうかの検討の際、ノンキャリアの刑事が反発します。その刑事からの「現場を知らないキャリアに任せるのか」との疑問に、竜崎はあっさり自分もそう思うとその刑事の判断を尊重し、結果、犯人が確保され、捜査本部を作るまでもなかったことがはっきりするという話です。

6.「参事官」

本部長から、竜崎が仲の悪い二人の参事官のケアを依頼されます。
キャリアとノンキャリなので、お互いに色々な想いがあります。
竜崎は色々この二人に話を聴くと、二人は仲が悪いのではなく互いに自分の意見を忖度なしで話しているだけとわかります。

7.「審議官」

以前の横須賀の事件で米国人を捜査に使ったことについて、審議官から竜崎が処分されそうになります。
竜崎は審議官が想っていることと背景を理解して、謝ります。すると、突然、審議官の態度が変わって何事もなくおさまります。竜崎もそんなことができるのかと驚かれます。

8.「非違」

竜崎の後任の美人署長に会いに、管理官の訪問が増えます。
仕事中にボートレース場でサボっているという噂のある戸高刑事を署長に近づけないように、貝沼副署長が気を遣うのですが、美人署長が戸高に話を聴くと署長は怒らずに、戸高にボートレース場に連れてってといい、何事もなく収まります。

9.「信号」

竜崎が参加したキャリア飲み会で、本部長が「自分は安全を確認して、誰もいなかったら赤信号でも道を渡る」と飲み会で発言したとして、ノンキャリア交通部長がマスコミにばれたらどうするのかと難癖をつけにきたので竜崎も難癖で返します。
キャリア飲み会ではなくノンキャリアも参加する部長飲み会でもしましょう、竜崎を誘った同期の八島刑務部長が本部長に進言します。竜崎は、どうでもいいと答えます。

感想
この隠蔽捜査シリーズは、本編はもちろん、スピンオフ作品も安定した面白さで、私にとってははずれはありません。
どんなマイナーなキャラクターの話であっても、少しでも竜崎の影があれば、間違いなく面白く読むことができます。
次は本編(隠蔽捜査10かな。)が発売されると思うので、早く読みたいです。


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