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裁量労働制の見直し(規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」)

総理諮問機関・規制改革推進会議の文書に裁量労働制などの労働時間制度に関する厚生労働省有識者会議(正式名称「これからの労働時間制度に関する検討会」)での裁量労働制の見直し議論を加速するようにある。厚生労働省有識者会議で確かに濫用対策等も論点となっているが、すべて裁量労働制適用(対象)拡大のための議論。感染症対策としてのテレワークのため裁量労働で働く方々の健康被害が増加する中、「加速」でなく慎重な議論を。

労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し

内閣府サイトに公表された資料「当面の規制改革の実施事項(令和3年<2021年>12月22日)」3.「人」への投資 労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し(30頁)に今後の裁量労働制見直しの方針とスケジュールが記載されている。

当面の規制改革の実施事項
3.「人」への投資.
 労働時間制度(特に裁量労働制)の見直し
a:令和4年度(2022年度)中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置、b:令和4年度(2022年度)検討開始】
a 厚生労働省は、働き手がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる環境整備を促進するため、「これからの労働時間制度に関する検討会」における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる。
b 厚生労働省は、労働基準法(昭和 22 年法律第 49 号)上の労使協定等に関わる届出等の手続について、労使慣行の変化や社会保険手続を含めた政府全体の電子申請の状況も注視しつつ、より企業の利便性を高める方策を検討し、必要な措置を講ずる。

当面の規制改革の実施事項 令和3年 12 月 22 日 規制改革推進会議(PDF)

規制改革実施計画 (6月18日閣議決定)と比較

今年(2021年)6月18日、菅政権は「経済財政運営と改革の基本方針2021」「規制改革実施計画」を閣議決定したが、「規制改革実施計画」「Ⅱ 分野別実施事項」「5.雇用・教育等」「(4)多様で主体的なキャリア形成等に向けた環境整備」には次のように記載されている。

(4)多様で主体的なキャリア形成等に向けた環境整備
No.5 
事項名:社会経済環境や雇用慣行などの変化を踏まえた雇用関係制度の見直し
規制改革の内容:a  厚生労働省は裁量労働制について、現在実施中の実態調査に関して、適切に集計の上、公表を行う。その上で、当該調査結果を踏まえ、労働時間の上限規制や高度プロフェッショナル制度等、働き方改革関連法の施行状況も勘案しつつ、労使双方にとって有益な制度となるよう検討を開始する。
実施時期:a 令和3年調査結果公表、調査結果が得られ次第検討開始
所管府省:厚生労働省

「当面の規制改革の実施事項」(12月22日)と「規制改革実施計画」(6月18日閣議決定)において記載された裁量労働制に関する記述を比較すると、次のようになる。

つまり、6月18日閣議決定・規制改革実施計画では「労使双方にとって有益な制度となるよう検討を開始する」(ここに「労使双方にとって」と記載されていることを忘れてはいけない。)としか書かれていなかったが、12月22日・当面の規制改革の実施事項には労働時間制度(特に裁量労働制)の見直しについては「『これからの労働時間制度に関する検討会』における議論を加速し、令和4年度中に一定の結論を得る。その際、裁量労働制については、健康・福祉確保措置や労使コミュニケーションの在り方等を含めた検討を行うとともに、労働者の柔軟な働き方や健康確保の観点を含め、裁量労働制を含む労働時間制度全体が制度の趣旨に沿って労使双方にとって有益な制度となるよう十分留意して検討を進める。同検討会における結論を踏まえ、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しに関し、必要な措置を講ずる」と詳細な記述がされた。

なお、当面の規制改革の実施事項(12月22日)と規制改革実施計画(6月18日)とで共通する表現は「労使双方にとって有益な制度となるよう」検討になる。

規制改革推進会議WG厚労省審議官発言

規制改革推進会議「当面の規制改革の実施事項」には、裁量労働制を含む労働時間制度の見直しは「令和4年度(2022年度)中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置」となっている。

そして「『これからの労働時間制度に関する検討会』(厚生労働省の裁量労働制など労働時間制度に関する有識者会議)における議論を加速し、令和4年度(2022年)中に一定の結論を得る」と記載された。

規制改革推進会議(内閣総理大臣の諮問機関)第7回「子育て・教育・働き方ワーキング・グループ(WG)」(2021年12月1日にオンライン開催)の議論の中で、大槻WG座長の「大体年度(2021年度)内に、これは検討会(これからの労働時間制度に関する検討会)の議論をまとめるという形の理解でいいのでしょうか。今後のスケジュールについて教えてください」との質問に対し、厚生労働省の青山審議官は「今(12月1日時点)、ヒアリングを重ねておりまして、現状の分析という状況でございまして、確かに在り方の議論というのは、裁量労働制、その他の制度も視野に入れたものを含めてやっていきますけれども、まだ、スケジュールは見通せていないというのが正直なところです」と回答。

この12月1日のワーキンググループでの議論を経て、「当面の規制改革の実施事項(令和3年<2021年>12月22日)」への「令和4年度(2022年度)中に検討・結論、結論を得次第速やかに措置」との記載に。

○大槻座長
当面のところで、検討会(これからの労働時間制に関する検討会)について教えていただきたいのですけれども、2つありまして、先ほど検討会のこれまでのところの議論ということで、例として出た意見として、働き過ぎ防止、濫用、それから健康等についてということで、どちらかというと保守的だなという感じで聞いていたのですけれども、これについて、裁量労働制を入れたために、先ほどの論点でもありますけれども、効率が上がったですとか、そういったポジティブな意見もあったのではと推測するのですが、そこら辺について教えていただきたいというのが1点です。
もう一つは、今後のスケジュールなのですけれども、先ほどもお示しいただいたように、ヒアリング、もともとの予定を見ましたら3から4回ぐらいヒアリングということで、もう4回やられているので、ここから先は、裁量労働制に対応に関する個別の論点と、その後に、柔軟で自立的な働き方を可能とする労働時間制度についてということで議論されると理解しています。
月1ぐらいでやっているということが、大体年度内に、これは検討会の議論をまとめるという形の理解でいいのでしょうか。今後のスケジュールについて教えてください。

○厚生労働省(青山審議官)
1点目のこれまでの構成員の御意見でございます。まだ、調査を確認していることと、ヒアリングをした段階なので、まだ、構成員の中で十分に議論はされていないと思いますけれども、ポジティブな意見がなかったということではないと認識しております。先ほどの調査にもありましたとおり、満足度は、そんなに高い人が少ないわけではなかったということもあって、基本的には、趣旨に沿って活用すれば、効果的なものであるという、それなりの認識は、構成員にあるのかなと、私も議論を聞いていて思います。
先ほど、構成員の議論を紹介する最後に、自由度の高い働き方というのは、適切な制度のもとで行えば可能という御意見を紹介しましたが、そういう御意見は、構成員の皆様の中で、そんなに異論はないように感じております。
その上で、課題があったところを中心に紹介してしまったところですが、それにしても不満とかの部分を見ると、健康被害とか、濫用といったところは対応していかないと、制度の本質が達成されないと、まだ、今の段階ですけれども、聞いております。
スケジュールでございますけれども、恐縮でございます、今、ヒアリングを重ねておりまして、現状の分析という状況でございまして、確かに在り方の議論というのは、裁量労働制、その他の制度も視野に入れたものを含めてやっていきますけれども、まだ、スケジュールは見通せていないというのが正直なところです。

第7回「子育て・教育・働き方ワーキング・グループ」議事概要(PDF)

なお、規制改革推進会議(内閣総理大臣の諮問機関)第12回会議が先週の水曜日(2021年12月22日)にオンラインで開催されたが、この第12回会議において「子育て・教育・働き方ワーキング・グループ」が廃止され、新WG「人への投資ワーキング・グループ」が設置された。

新WG「人への投資ワーキング・グループ」

12月22日にオンライン開催された規制改革推進会議で決定された新WG「人への投資ワーキング・グループ」の委員・専門委員は次のとおり。

人への投資ワーキング・グループ(新WG)
(委員)大槻奈那、菅原晶子、中室牧子、本城慎之介
(専門委員)宇佐川邦子、工藤勇一、鈴木俊晴、水町勇一郎、森朋子

旧WG(子育て・教育・働き方)と新WG(人への投資)を比較すると、大槻奈那、菅原晶子各委員が再任、中室牧子委員、本城慎之介各委員が新任。また、宇佐川邦子、工藤勇一、鈴木俊晴、水町勇一郎、森朋子各専門委員全員が再任。

新たに選ばれた中室牧子委員は経済学者・慶應義塾大学総合政策学部教授、本城慎之介委員は学校法人軽井沢風越学園理事長・楽天グループ創業者の1人で元楽天グループ株式会社取締役副社長。

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*ここまで読んでくださり感謝(佐伯博正)