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📖【小説】 『クルむロ翌』 ① 2007幎刊行の絶版本をnote限定公開


📚小説家 悠冎玀のプロフィヌル代わりの蚘事はこちら▌


◆序章 鳥プチッツァ


「俺はい぀か、自分にバラバラにされお時間を萜ずす」

 それがアレクセむにずっお、サッカヌ界の䌝説的ファンタゞスタ、そしお無二の芪友でもある半身、ボリス・リボヌノィッチ・スクラヌトフから聞いた最も印象的な蚀葉の䞀぀だった。ほかの人たちの目には芋えない、次元の異なる遠い䞖界を垣間芋るかのような虚う぀ろな県差し。自分の身に䜕かが起こるずっず以前から、それを本胜的に察知し、どこかに抗あらがいようのない氎脈のあるこずを知っおいるかのような響き。
 アレクセむはこのずき、背筋にヒダリず冷たいものを感じ、挠然ず怖ささえ感じおいた。あずで振り返るず、それは圌自身が攟った、たさに予蚀ずもいうべき蚀葉だった。
 もっずも、圓時ただ10歳にも満たない少幎で、圌ず出䌚っお間もなかったアレクセむには、その蚀葉が䜕を意味し、これから圌がどう非凡な道を歩んでいくこずになるのか、具䜓的なずころは想像もできなかったのだが。

 出し抜けに䞍思議な発蚀をしおは友人を驚かせるそんなボリスの発蚀の䞭で、もう䞀぀、アレクセむの蚘憶に焌き付いお離れないものがある。
 ある倏の日、圌はふず空を芋䞊げお蚀った。
「なあ、リョヌ。人間が元は鳥ず同類だったかもしれないっお話、聞いたこずがあるか」
『リョヌ』ずいうのは、アレクセむに察しお圌が䜿っおいた愛称だ。ほかの人は倧抵『アリョヌシャ』ず呌ぶ。せいぜい瞮めおも『リョヌシャ』だ。名前のバリ゚ヌションの少ないロシアでは、身内や同じ地域に同じ名前の人が耇数いる、などずいう状況も珍しくはないため、ちょうど隣の家に、ボリスず同様アッシュ・ブラりンの髪をした同䞖代のアレクセむが居合わせた前の䜏居では、倖芋の特城から『赀毛のアリョヌシャ』ず呌び分けられおいたこずもある。ただずにかく、『リョヌ』ず呌ばれた経隓は過去にはなく、こんなに短瞮した呌び方をするのは圌䞀人だった。
「ええっ 鳥ず人間なんお、どこをどう取っおも党然䌌おいないじゃないか」
 アレクセむが頭かぶりを振っおそう蚀うず、ボリスはその特城的なアむスブルヌの瞳で空を芋䞊げたたた答えた。
「うん、そうだよな。きっず鳥から芋るず人間なんお、ずお぀もなく䞍现工で欠陥だらけの未熟な生き物なんだろうな。でも、䜕かの本で読んだんだけど、人間の毛も鳥の矜も玠の成分は同じなんだっお。きっず進化の過皋で別々の圢を取っお、別々の道を蟿った結果が今なんだ」
 はじめは圌が、持ち前のいたずら奜きな性分から䜜り話をしおいるのかず思っおいたが、思いもよらず説埗力のある話なので、アレクセむは間もなく圌の話に匕き蟌たれおいった。
「海の原始生物から始たっお魚類になっお、そのうち陞で生掻できるよう肺呌吞の䜓に進化しお、爬虫はちゅう類るいが誕生した。それでも満足できなかった生呜は、りロコを矜に進化させお鳥になり、倧空に舞い䞊がっおいった。地䞊に取り残された生き物の䞭にも、鳥ず同じく爬虫類のたたでは満足できなかったものたちがいお、りロコを䜓毛に進化させお猿ずか人間になっおいったんだ」
 少し間をあけお、圌は蚀った。
「それで、俺はこう思ったんだ。進化の過皋で鳥のように翌を持぀こずができなかったからこそ、人間っお生き物は、手や足が発達しお道具を操るようになり、創造力を翌代わりにむメヌゞの䞖界で矜ばたくようになったんだっお。぀たり、䜕かが欠萜したり埗られなかったりしおも、別の郚分を発達させおその穎埋めをしようずする自然の力が、俺たちの䞭にはあるっおこずだよ。その力に気付いお自分でコントロヌルできるようになれば、い぀か自分なりの『空』を自由に飛び回れるようになる」
 こういうずきのボリスは、抑えの利かない枇望のたたに行動しがちな砎倩荒はおんこうな圌ずも、虚ろな様子で「自分にバラバラにされる」ず呟いたずきの圌ずも別人で、どこか穏やかで倧らかな、それでいお人䞀倍逆境に匷い“抗う力”を秘めたボリスだった。
 手に持っおいたサッカヌボヌルを軜く宙に浮かせお足で受け、曲芞ず蚀っお過蚀でない噚甚なボヌル回しを披露しながら、圌はこうも蚀った。
「ひょっずするず人間っおや぀は、はじめは鳥だったのに翌が退化しお、空から萜ちおきたおち・・こが・・れ・なのかもしれないな。でもそのおかげで、今こうやっおボヌルを自圚に操れる俺たちがいる。そう思わないか」
 䞀床芖線を戻しおアレクセむの目を芋るず、圌は軜く䞀蹎りしお鮮やかなルヌプシュヌトを決めた。ボヌルは颚を切っお進み、ちょうど圌ずゎヌルネットずの間で壁になっおいたアレクセむを避けお回り蟌み、狙い通りの堎所に入った。
「  そ、そうだね」
 ボリスに答えおそう同意したアレクセむだったが、心の䞭では密かにこうも加えおいた。
「同じ人間でも、君ほど自圚にボヌルを操れる人物は、䞖界に二人ずいないけどね」ず。
 これは二人が14歳の頃のやり取りだった。プレヌに関しお自由ず独自性を劚げられたくないずいう思いから、集団組織に属すこずや他人に教えられるこずを頑かたくなに拒んでいたボリスが、ただアレクセむのすぐ隣にいお、同じ土を螏み締めおいた頃のこずだ。

2007幎初版第䞀刷発行の凊女䜜『クルむロ翌』悠冎玀著
泚絶版本のため、珟圚はここnote䞊でしかご芧いただけたせん

◆第䞀章 醜いアヒルの子


 ロシアの春は、凍お぀いた川の氷が割れる蜟音ごうおんずずもにやっおくる。二人の出䌚いは、そんな長い冬から解攟されたばかりのある晎れた日だった。地方から銖郜モスクワぞ越しおきたアレクセむは、いずこ、、、に圓たるボリスを捜しお、郜心のオアシスずも蚀える癜暺しらかばの森の䞀぀に入り、そこで初察面を果たした。いずこ、、、ず蚀っおも、アレクセむはボリスの母型の䌯父宅に逊子ずしお匕き取られた身であり、二人の䞭に共通の血が流れおいるわけではない。
 ほかの芪族ずは䜏居が遠く離れおいたためか、スクラヌトフ家は芪戚付き合いが垌薄で、アレクセむの逊父母も圌らに幎近く䌚っおいなかったのだが、転居しおきた翌日、慣れないモスクワ生掻を始めるに圓たっお、これから䜕かず䞖話になるかもしれないずいうこずで、アレクセむの䞀家はスクラヌトフ家を蚪れた。
 衚玄関のチャむムを鳎らすず、ボリスの母芪むリヌナ倫人が扉を開き、ふくよかな顔に枩和な笑みを広げお招き入れおくれた。
「どうぞ䞭に入っお。あなたたちを埅っおいたんですよ」
 りッディなのに䜕故だか枩かみが感じられず、劙に無機的な印象のある廊䞋を通り抜けお、案内されるたた客間ぞ行くず、そこにボリスの父レフ・コンスタチノノィッチ・スクラヌトフ氏の姿があった。
「お埅ちしおおりたした。䜕幎ぶりでしょうか」
 芪戚だからず気を抜いおラフな服装で来おしたったアレクセむの䞀家は、芋るからに高䟡な家具や数々のトロフィヌを背にした圌の、堅苊しいほどの立ち居振る舞いず身なりの良さに、䞀瞬気埌れしおしたった。
「長旅でさぞかしお疲れのこずでしょう」
 蚀葉遣いは䞁寧なのだが、たるで軍事長官か凱旋がいせん将軍のような嚁圧感があるレフ氏は、棒立ちで固たっおしたっおいた矩兄䞀家に゜ファに腰掛けるよう勧めるず、自身は向かい偎の怅子に腰をおろした。自信に満ち溢れた悠然ずした仕草で、高い背もたれに背を預けお。
 そのずき、奥の郚屋から二人の少幎が出おきお、レフ氏の怅子から䞀歩䞋がった䜍眮で敎然ず暪䞊びをした。レフ氏は、二人の珟れるタむミングず䞊びの順をはじめから知っおいたかのように、振り向くこずなく蚀葉を攟った。
「改めお玹介いたしたしょう。右が今幎12歳になる長男アナトリヌで、巊が11歳のノァレンチンです」
 するず今床は、玹介を受けた二人が、前もっお緎習しおいたかのようにピタリず息を合わせ、同じニュアンスの笑顔で挚拶した。
「はじめたしお。䌯父様、䌯母様。アナトリヌです」
「はじめたしお。䌯父様、䌯母様。ノァレンチンです」
 黒い髪に薄い灰色の瞳を持぀アナトリヌず、金髪碧県のノァレンチンは、二人ずもその幎霢にしおはスラッず背が高く、倧人びた雰囲気を醞かもし出しおいた。
「は、はじめたしお」
 こちら偎も䜕か蚀わねばず、アレクセむの逊父がようやく口を開いた。
「  ず蚀っおも、実は私は以前君たちに䌚っおいるんだよ。もう幎も前のこずで、君たちももっずずっず幌かったから、蚘憶にもないだろうけどね。いやあ、ずいぶん倧きくなっお、芋違えたよ」
 それを聞くなり、長男アナトリヌが兄匟を代衚しお答えた。
「そうでしたか。これは倧倉倱瀌いたしたした。今埌ずもよろしくお願いしたす、䌯父様、䌯母様。ああ、それから、そちらがご子息ずしお迎えられたずいうアレクセむ君、ですね よろしく」
 いかにも非の打ち所のない優等生、ずいった感じのアナトリヌの真っ盎ぐな芖線を受けお、アレクセむは思わず赀面しおしたい、俯う぀むき加枛に笑みを浮かべるこずしかできなかった。圌の物腰や口調はずおも12歳やそこらの少幎のものずは思えなかった。ただどこずなく、䜕かが欠けおいるような気もしお、少し怖いずも感じおいた。アナトリヌその人が怖いのではなく、この堎で芋たすべおに察しお、終始挠然ず付きたずう欠乏感、あるいはそれに気付いおはならないような匵り詰めた緊迫感が、怖かった。
 暗黙の了解で違和感に蓋ふたをしなければならないような劙な圧力を感じながら、すっかり黙りこくっおいたアレクセむだったが、ふずあるこずを思い出しお、レフ氏に投げかけた。
「あの、叔父さん、末の息子さんは 僕ず同じ幎霢の、ええず  」
 アレクセむが名前を床忘れしおたご぀いおいるず、質問を受けたレフ氏ではなくアナトリヌが答えおくれた。
「ああ、ボリスだね。あい぀なら、䟋によっお森にでも行っおいるんじゃないかな」
「森に  ですか」
 それたで機械的なほど䞁寧な口調だったアナトリヌの口から、『あい぀』ずいう砕けた衚珟が出たこずに驚きながらも、アレクセむは内心ホッず安堵を芚えおもいた。
「たったく、せっかく久々に芪族が顔をあわせようずいうずきにたで、䞀人で勝手に別行動を取るバカ息子で、申し蚳ない」
 レフ氏が気難しい顔で溜め息を぀きながら蚀った。ただし圌の芖線は垞に矩兄倫劻だけに向けられおいお、子䟛のアレクセむに察しお投げかけられた蚀葉ではなかった。䞀瞬たりずもアレクセむの背䞈の届く䜍眮にたで䞋がるこずのないその高らかな芖線のためか、圌を前にしおいる間䞭、自分が空気にでもなったかのような気分が付きたずった。
「西に向かっお10分ほど歩いたずころにある癜暺の森だけど、捜しに行っおみる」
 むリヌナ倫人がそっず暪から顔を芗かせ、声をかけおくれた。土地勘のない子䟛にそう勧めるくらいだから、きっず迷子になる心配はない、わかりやすい堎所にある小さな森なのだろう。
 アレクセむが頷うなずいお意思衚瀺をするず、倫人はマトリョヌシカがズラリず䞊ぶ棚の䞊に眮かれおいた写真立おを手に取り、目の届く䜍眮にたで持っおきおくれた。
「これがあの子、ボヌリャボリスの愛称よ」
 倫人が指差したのは、揃っお正装で写っおいるスクラヌトフ・ファミリヌの䞭にあっお、䞀人だけ倖れた堎所に立ち、シャツ姿で写っおいるアッシュ・ブラりンの髪の少幎だった。正面を向いおお決たりの笑みを投げかける兄たちずは違い、圌は玠っ気なく無衚情で、芖線もどこか別のずころに向いおいた。これから同じ孊校に通うクラスメむトずなるに圓たっお、圌が芪しみやすいフレンドリヌな人物であるこずを願っおいたアレクセむは、期埅したむメヌゞずは正反察の取っ぀きにくそうな印象の圌を芋お、内心䞍安になった。
 ずはいえ、䞀瞬のシャッタヌチャンスが衚情を決める写真だけで、人柄たでは刀断できない。頭の䞋がるようなむンテリ系のアナトリヌや、華麗なコスチュヌムを着おスケヌトでもすれば、たちたちファンが矀がりそうな貎公子颚のノァレンチンず䞊んでいながら、䞍思議に䞀番存圚感があり、二人の圱を薄くしおしたうほどの曲くせの匷い魅力を感じさせる圌が䞀䜓どんな人物なのか、䌚っお話をしたそのずき初めお語る暩利を持おるずいうものだ。
 第䞀印象はずもかく、圌のおかげで、劙に肩の凝るスクラヌトフ家から倖ぞず抜け出す理由を埗たアレクセむは、皋なくその堎を離れ、圌の行き぀けの堎所だずいう森に向かった。

 癜い暹皮を持぀现くお盎線的な朚々が林立する幻想的な森の䞭、アレクセむは写真の少幎を捜し歩いた。これから迎える短い倏に備えお、朚々は確実に葉を増やし、草花がそこここに芜吹いおいた。どこかの山火事の名残で倧気が埮かにくすんでいたが、郜䌚のモスクワでこんな心地奜い自然颚景に恵たれようずは思いもしおいなかったアレクセむは、自分が田舎䞊がりだずいう劣等意識に囚われお、肩に力を入れすぎおいたこずに気が付いた。
 『森』ずいうより『林』ず呌んだ方がいいような小芏暡なスポットなので、子䟛の足でも10分足らずで反察偎に抜けおしたいそうだったが、䞀本だけちゃんずした道になっおいる歩きやすいずころを、土を螏み締めながらしばらく先ぞ進んでいくず、脇の茂みの䞭に人圱が芋えた。兄たちのお䞋がりなのか、着叀したような印象のあるブルヌのトレヌナヌにゞヌパン姿、本来のクセを掻かしお自然に任せたアッシュブラりンの髪 ── たぎれもなく、写真で芋たあのボリス・スクラヌトフだった。
 咄嗟ずっさにどう声をかければいいのか思い぀かなかったアレクセむは、そっず朚陰から芗いおみた。ボリスは䞡手で受け皿のような圢を䜜っお、手の内にある䞀矜の小鳥を眺めおいるずころだった。動物に詳しくないアレクセむには、それが䜕鳥なのか皮類たではわからなかったが、傷付いおいるのか力なくぐったりずしおいるのが芋お取れた。
 䞀぀のこずに囚われお自分䞀人の䞖界に没入しおいるずき、恐るべき集䞭力で呚りが芋えなくなる傟向のあった圓時のボリスは、声を届かせるのに充分な近さに迫っおいたアレクセむの存圚に気が付かないたた、手の内の鳥に向けお慈い぀くしみ深い芖線を泚いでいた。空を映した蒞留氎のように柄み切った、アむスブルヌの瞳だ。写真で芋た曲者くせものタむプの尖った雰囲気はそのたたなのに、どこか詩的で玔真な印象さえあるその意倖な県差しに、アレクセむはしばし声をも忘れお立ち尜くしおいた。
 しかし、ふず顔を䞊げお、癜んだ现長い朚々の間にアレクセむの姿を認めた途端、その瞳の衚情は䞀倉した。ボリスは䞀瞬前ずは別人のように、冷たく猜疑さいぎ心しんに満ちた目぀きになっお、い぀もは自分䞀人でいられる自由な空間に螏み入っおきた芋知らぬ䟵入者を睚み぀けた。圓時はただほんの子䟛だったずいうのに、レフ氏に負けず劣らず近寄りがたい嚁圧感を挂わせながら。
 圌の豹倉ひょうぞんぶりを目の圓たりにしお少なからず戞惑いながらも、圌ずたずもに目があっおしたった今、このたた固たっおいるわけにもいかないず思い、アレクセむは思い切っお声をかけおみた。
「じ、邪魔しおごめん。だけど、そんなずころで䜕しおいたの」
 朚陰から螏み出しお、䞀歩䞀歩圌の方ぞ歩み寄っおいく。
「君、ボリス・スクラヌトフ君だよね」
 ボリスははじめ、自分に語りかける者など存圚するはずがないずでも思っおいたかのように、あたりを芋回しお、自分以倖の蚀葉の受取人を捜しおいたのだが、名指しにされおは間違えようがなく、今䞀床アレクセむの方ぞ芖線を戻した。
「僕はアレクセむ。近くに匕っ越しおきたから、さっき君の家に挚拶に行ったんだけど、僕のこず䜕か聞いおいないかな クリュヌチン家の逊子で、僕たちは䞀応いずこ、、、なんだよ」
「ああ、聞いおいる。  でも、なんで」
「なんでっお、䜕が」
 ボリスは肩をすくめお蚀った。
「こんな森の䞭にたで、䞀䜓䜕をしに来たんだ」
「君にも挚拶しおおこうず思っお  」
 それ以倖にどんな甚があっお来るだろう、ずいう思いでそう答えたアレクセむだったが、ボリスは䞍審人物を芋るような目぀きで、蚝いぶかしげにアレクセむを芋おいた。
「ふうん  」
 ずだけ零したあず、圌は無関心を装っお顔を背けた。だが、そもそも䞀察䞀の状況でかたわれるこず自䜓が苊手だった圌は、自分の暪顔に尚も泚がれるアレクセむの芖線を無芖しきれず、だんだん萜ち着きをなくしおたばたき回数を増やしおいった。䞀芋恐れ知らずなタむプに芋えお、意倖ず神経質な䞀面もあるこずが垣間芋えた瞬間だった。
「僕、君の通っおいる孊校に転校するんだ。これからしょっちゅう顔をあわせるこずになるず思うけど、よろしくね」
「あ、ああ  。よろしく」
 慣れない様子で䞀瞬だけ笑みを浮かべ、䞍噚甚に匕き぀った顔でそう返したボリスだったが、皋なくたた芖線を倖すず、アレクセむの乱入によっお逞れた泚意を、掌おのひらに茉せおいた小鳥の方ぞ匕き戻した。
「お前、玐ひもか䜕か持っおいないか」
「えっ、玐 䜕に䜿うの」
「翌が折れおいるんだ。固定しおやらないずな」
 適圓な長さに切り取った朚の枝を鳥の翌に圓おながら、ボリスは蚀った。
「玐なんおないよ。君ん家ちに連れお垰っお手圓しおあげたら」
 アレクセむは良かれず思っおそう提案したのだが、ボリスが急に怒り口調で返しおきた。
「ダメだ ここでやるんだ 家になんか連れお入ったら、汚らしいから捚おおこいっお远い出されるか、女々しい奎だず笑われるだけだからな」
 耳を疑う蚀葉だった。傷付いた小鳥を劎いたわり手圓をするなど、少幎の行いずしおは、むしろ「心優しい」ず耒め称えられおいいはずだ。それなのに、䜕故  
 アレクセむは圌の蚀葉の背埌に、䜕かが完党に逆転しおしたっおいる日垞の有様が、透けお芋えたような気がしおいた。
 しばし銖をかしげお突っ立っおいるず、ボリスが玐の代わりになる蔓草぀るくさか䜕かを探しおくるよう指瀺した䞊で、甚心深くアレクセむに口止めをした。
「いいか、このこずは絶察に誰にも蚀うなよ。お前だっお䞀緒にやるんだから、共犯・・だぞ」
「う、うん」
 共犯  
 アレクセむは、なんだか本圓に悪いこずでもしおいるかのような劙な気分にさせられながら、小鳥の介抱に加担・・した。
 終始違和感の付きたずう、䜕やらおかしな出䌚いだった。

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※この䜜品は2007幎初版第䞀刷発行の悠冎玀のデビュヌ䜜ですが、絶版本のため、珟圚は䞀郚店舗や販売サむトに残る䞭叀本以倖にはお買い求めいただくこずができたせん。このnote䞊でのみ党文公開する予定ですので、是非マガゞンをフォロヌしおいただき、匕き続き投皿蚘事をご芧ください。
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